ライターさかいもゆるがアラフォー以上で結婚したカップルへのインタビューを通じて、結婚とは、夫婦とは何かを考えます。前回に続き、麻子さんへ結婚後のお話を伺います。

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正和さん(45歳)と麻子さん(44歳)。麻子さんが36歳のときに出会って、38歳でご結婚。


「大阪人との異文化交流」と思えば夫にイライラしなくなる!?


お互い酸いも甘いも嚼み分けたアラフォーになってからの晩婚は離婚リスクが低いイメージがあるのですが、実際はどうなのか。出会い系サイトで知り合った正和さんと、38歳で入籍した麻子さんに聞いてみました。

麻子さん:そもそも私が全然穏やかじゃな性格じゃなくて、趣味が「怒りん坊」って言われるくらい短気な性格。今まで付き合った人たちは、私と同じように頑固なタイプでお互い譲らないから疲れちゃってたんですよね。結婚生活は穏やかに暮らしたいからスルー力が高い人がいいなと思って、彼を選んだんです。

さかい:そういうおとなしい旦那さんって、麻子さんのような性格だと、逆に物足りないと感じてしまうときはないんですか?

麻子さん:ある(即答!)(笑)。「なんで結婚したのかなあ」って家でもよく呟いて、彼に「そんなこと言うなよ〜」って苦笑されてます。―お互い40年近くひとりで生きてきたから、生活スタイルで合わないこともしょっちゅう。例えば買い物に行っても値段からまず見るとか……。だけどそういうときは「大阪人だからしょうがない」って思うようにすると、その違和感がチャラになるんですよ。大阪人である彼は、東京育ちの私にとって宇宙人みたいなもん。だから宇宙人との異文化交流だと思えば、文化の違いとかあっても当然かな〜って。

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大阪人だからしょうがない、って、なんだか新しい(笑)。そうやって考えると、結構いろんなことが許せそうですね。

「人として全く別のカテゴリーにいる」というふたりは、逆に共通点を数えた方が早いそうですが、その共通点とは、ゲーム好き、美術館好き、食べるのが好き。出会い系サイトのプロフィールでは相手と趣味が合うことを重視していた麻子さんだから、一緒に楽しめる共通の趣味があることが夫婦仲良くできている、いちばんのポイントのよう。

 


麻子さんの交通事故がきっかけで離婚危機を回避


麻子さん:実は2年前くらいに、すごく離婚したくて顔も見たくなかったときがあったんですよ。彼が仕事でウツっぽくなっちゃって、家でもずっと仕事の愚痴ばかりで、「また言ってるよ」ってイライラ。そのときは常に私が彼に対して怒ってるような状態でした。

その後麻子さんが交通事故に遭ったことをきっかけに、夫婦仲は改善されたそう。

麻子さん:横断歩道を渡ってたらいきなり突っ込んできた車に轢かれて、頭から車のバンパーにぶつかって。事故の後遺症で身体が思うように動かなくなって半年くらい自宅療養していたんです。そのときに、しみじみ「当たり前のことをありがたいと思わなきゃいけないんだな」と思って。その後遺症もあって前よりもやりたくてもできないことが増えたら、何事も「まあいっか」ってあきらめられるようになったんですよねえ。―これが加齢ってやつなんでしょうか(笑)。

ただ、夫婦仲が険悪になる少し前から夫婦生活はなくなり、もう5年くらいレスが続いている状態。最初は麻子さんが拒否していたのですが、そのうちに「仲良くなりすぎちゃってそういう雰囲気になるのが恥ずかしくなっちゃった」とのこと。

麻子さん:彼はそういう動画とかを観ているみたい。私も前ならいちいち発狂してたけど、今はもう気にならないです。家族、って感じなので。

だけど結婚記念日は必ずお祝いをしてくれて、誕生日にも手書きのカードをくれたりと、正和さんは愛情表現をちゃんとしてくれています。それに対し、麻子さん流の愛情表現はというと、「どんなに眠くて疲れているときにでも、彼のスーツにプレスをかけること」。これだけは結婚してから一度も欠かしたことがないんだとか。

麻子さん:私も働いていて忙しいけど、相手のために時間をかけることが結婚だと思っているので。朝も、彼のほうが出勤が早いけれど必ず一緒に起きて送り出します。母がそうしていたから……。


姉夫婦と母との3世帯同居での本音


2年前から自宅で姉夫婦と母親との3世帯同居をしている麻子さん夫婦。2世帯でも大変そうなのに、3世帯って!と思うけれど、トイレ4つにバスルームも2個ある3階建の豪邸のため、家の中で家族とすれ違うことは滅多になく、先日も1ヵ月ぶりに姉夫婦とリビングでばったり会ったくらい。って、一体どれだけ広いんだ……(笑)。

さかい:旦那さんは同居について不満はなさそうですか?

麻子さん:最初はちょっと抵抗があったみたいだけど、住んでみたら意外と誰にも会わないし。実家が狭くてテレビのチャンネル権もなかった彼にとって、今はのびのび暮らせる私の実家が天国みたい。うちの母と彼とは仲良しで、たまにインターフォンで私たちの部屋に連絡があってワーワー言われたら、遣唐使みたいな感じで彼を使いに出すと、老人の話を聞くのが得意な彼が「お母さんこう言ってはったで」ってクッション役になってくれる。それはすごくありがたいですね。

さかい:旦那さんが養子に入ったとき、向こうのご両親はどういう反応を?

麻子さん:彼は長男なので向こうのお母さんは泣いていたそうです。だけど私が結婚したら、うちの実家の苗字を継ぐ人が居なくなっちゃうから。自分の苗字を捨てることは考えたことがなかった。

麻子さんのご実家くらいの資産家だと、きっと家庭の事情が色々あるのでしょうね。

「色々あるけど、やっぱり結婚してよかった」


子供のことは年齢や仕事のことを考えてあきらめたという彼女。「晩婚だからこそ、パートでもいいから自分でも収入がある状態にしておかないと、何かあったときに怖い。だけど私は完璧主義だから、仕事も子育ても家事もって、きっとパニックになるなと思って」。

麻子さん:子供はいないしレスだけれど、今は楽しいし、結婚してよかった。大私は家族で育ったからか、年末に家族みんなで揃って過ごすときに「今年もみんな健康でよかった」って思えたりするときに幸せを感じます。事故のこともあったし、もう、家族が元気にしていてくれさえすれば、それ以上のことはいいかな。

相手に多くを望まず、あるものに目を向ける。それが出来ると、結婚生活は過ごしやすくなるのかもしれません。

イラスト/いとうひでみ
構成/川端里恵(編集部)

 

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