『リトル・ミス・サンシャイン』(2006年・アメリカ)

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『リトル・ミス・サンシャイン』より。 写真:Everett Collection/アフロ

何をやってもうまくいかない。そんな逆風の時期を、どう生きるか。人生の豊かさとはそんなところにある気がする。

『リトル・ミス・サンシャイン』はうまくいかない人たちのための映画だ。主人公は、美人コンテストで優勝することが夢のちょっと小太りな9歳の少女・オリーヴ(アビゲイル・ブレスリン)。オリーヴの一家は何かと問題だらけだ。自己啓発ビジネスで成功を夢見るも雲行きが怪しい父・リチャード(グレッグ・キニア)。アメリカ空軍士官学校に入ることを夢見て「沈黙の誓い」を立てるニーチェかぶれの兄・ドウェーン(ポール・ダノ)。ヘロイン中毒で老人ホームを追い出された口の悪い祖父・エドウィン(アラン・アーキン)。恋人を寝取られたショックで自殺未遂を図ったゲイの伯父・フランク(スティーヴ・カレル)。母・シェリル(トニ・コレット)はそんな家族に手を焼き、ちょっとイライラ気味。

 

円満とも仲良しとも程遠い一家が、全米一の美少女を選ぶ「リトル・ミス・サンシャイン」の決勝に出場することが決まったオリーヴのために、小型バスに乗って自宅のあるアリゾナ州から、会場のあるカリフォルニア州のレドンド・ビーチまで向かうことに。本作は、その道中を描いたロードームービーだ。

デコボコ家族の道のりはやっぱりデコボコだらけで、バスが途中で故障して、一家総出で力を合わせて後ろから押したり、それぞれの抱える問題が次々と明るみに出たりで、とても楽しい旅とは言えない。だけど、トラブルに出くわすたびに、少しずつ深まっていく家族の連帯に、しみじみと思うのだ、人と生きるっていいなと。

結局、家族って血のつながりだけを意味するものではないんだと思う。事実、旅に出るまでの彼らは家族と呼べるものではなかった。じゃあ家族ってなんなのかと言うと、傷ついたとき、苦しいとき、ひとりでは立ち向かえない困難に見舞われたとき、そばで抱きしめてくれる人のこと、黙って手を握ってくれる人のこと、一緒に立ち上がってくれる人のこと。そういう存在が、家族なんだ。

クライマックスの「リトル・ミス・サンシャイン」の本番は、胸のすくような爽快さ。誰が後ろ指をさしたって、味方になってくれる人がいる。一緒に笑って、バカになってくれる人がいる。その事実だけで、少しだけ気持ちが前向きになれる。うまくいかない人生をそれでも笑って生きるために必要なことを、『リトル・ミス・サンシャイン』が教えてくれた。

『リトル・ミス・サンシャイン』はamazon Prime Videoで配信中。
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