スタイリスト、ミモレコンセプトディレクターの大草直子が着こなしのアイデアや日々の思いを綴ります。

散歩なんてしばらくしたことはなかったし、毎日手料理を作っていることも初めて。お風呂に入っている時間も寝ている間も、ずっとスケジュールを逆算していたし、空を眺める暇があったら、メールの1本を返したかった。

 

子供たちとたくさん話して、夫と今日の献立とワインを考え。冷蔵庫にある材料を、まるでパズルを組み立てるようにマッチングさせていく。仕事は家族の息遣いが感じられる中で集中して終え、毎日18時の15分のヨガの時間は絶対に確保。ずっと気になっていた手続きや解約なども、30分待ったって電話でコンプリートして。

なんか、すっきりした。

そうして思いました。私は、なんていう生活をしていたんだろう。子供たちの学校のいろいろも、ラインで各々とやり取りしていました。そ、そんな生活って。一緒に仕事をしているスタッフや仲間たちの丁寧な仕事ぶりも、「当たり前」のことのように思っていた自分がいたなあ。

価値観や考え方、大切なもの、そして不要なものは澄んだ青空のようにクリアになり。目に見えないウイルスに注意と畏怖はもちながら、以前の私、以前の生活には決して戻りたくない自分がいます。

不安→恐怖→不安→安心→希望→不安。仕事や子供たちのこと。今後の自分の在り方など――こうしてぐるぐるとしてはいますが、「戻りたくない」のはどんなタイミングも変わりません。恐怖は、手洗いや外出自粛などの予防が盾になってくれます。不安は、その「不安の形」を、そしてそれを「安心の形」に変えるための具体的な解決策を書き出すことで、恐怖は小さくなります。

このパニックに感謝している、とは決して言えないけれど、目をそむけていたこと。流してきたこと、人任せにしてきたことを考えるきっかけをもらい、実行する時間をもらえたことには感謝しています。

大草 直子

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