厚生労働省の発表(4月30日12時現在)によると、国内での新型コロナウイルスの感染者は14,088例となりました。国内の死亡者は415名、国内での退院者は3,466名となっています。
緊急事態宣言の期限延長が検討され、私たちもこの状況と付き合っていかざるをえなくなっています。
ミモレでは、医療の現場で働く医師の方に、継続的に寄稿いただいています。
今回は、新型コロナウイルス感染症の気になる症状について、あらためてまとめてもらいました。
過去の記事と合わせて、参考にしていただければと思います。
【医師が推奨】コロナ対策のため帰宅後に玄関で行いたい習慣とその「順序」>>
【新型コロナと「がん闘病」】岡江久美子さんの訃報から、医師が感じた違和感>>
日本全国各地で多くの方がCOVID-19をより身近な感染症として感じられているかと思います。すでに感染された方、ご家族が闘病中の方などもいらっしゃるかもしれません。すでに身内の方から、「コロナウイルスにかかるとこんな症状が出る」と伝え聞いているかもしれません。あるいは、SNSなどで「こんな症状が出た」と経験談を読まれたことがあるかもしれません。
ここでまず注意が必要なのは、このCOVID-19は実に多様な症状を出し、人によって症状が大きく異なる可能性があるということです。人の顔、性格がそれぞれ違うように、同じCOVID-19でも、人によって大きく異なってしまうのです。このため、「あの人がこう言っていたから」というのは間違う可能性があります。
「コロナかな」「コロナかも」
「アンカリング」という言葉をご存知でしょうか。「アンカー」とは、船を係留させるための錨を指す言葉です。アンカリングというのは、錨が船を一カ所にとどめるように、先に与えられた情報(アンカー)が、人の思考を一方向に固定し、判断が影響されて歪められてしまう認知バイアスのことを意味します。
身近な例を挙げれば、スーパーマーケットの戦略が挙げられます。あるスーパーマーケットで、よく買われることが分かっている果物や肉などのいくつかの商品だけをとても安価に販売しておくとします。すると、客は、その安価な商品を見て、「このスーパーは安い」と判断して、実は定価で売っている他の全ての商品も安いと誤認し、購買行動につながることがよく知られています。
このように、アンカリングというのは、一つの情報から全てを理解したかの如く判断材料に使用してしまう認知の歪みを指しています。
これは実際、医師の間でもよく言われることです。これだけ感染流行が広がると、医師側でもあらゆる肺炎を「COVID-19だ」と誤診してしまう懸念があります。PCR検査が仮に3回陰性で出たとしても、「PCR検査は感度が不十分だから当てにならない」としてCOVID-19の診断に固執してしまい、後から全く別の診断であったことが判明する、ということが起こりうるのです。こうしたことは実際すでに現場で起こってしまっているかもしれません。私も気をつけるようにしています。
このような現象は、患者さん側でも起きています。ある時を境に、急に「匂いが変だ」という訴えで病院に電話をされたり、受診されたりする方が増えました。テレビ番組やSNSなどで、COVID-19にかかった後、匂いがおかしくなったとするエピソードが取り上げられたからです。多くの方の頭の中ですぐに「匂いが変」=「COVID-19」というスイッチが入ってしまいました。これも立派なアンカリングの例と言えます。
このようなアンカリングで判断を誤らぬよう、全体像を冷静に俯瞰する姿勢が大切です。
というわけで、本記事では、統計的にどのような症状が多く報告されているか、匂いの変化はどれくらいの人にどのようなタイミングで生じているかを、論文をもとにご紹介していきたいと思います。
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