まだまだ分からないことだらけの新型コロナウイルス。当初はインフルエンザと比較して語られることが多かったものの、これほどの事態になったことで、少なくともこの二つは全く違うものだということは誰もが認識していることでしょう。では、具体的には何が違うのか。それが分かれば、少しずつ日常をもとに戻していかなければならないなかで、より有効な対策がとれそうです。

国内の病院にて、昼夜治療に追われる医療関係者。写真:ロイター/アフロ


新型コロナは「医療」に負担を与えやすい


そもそも、インフルエンザの流行も決して舐めてかかってよいものではありません。日本においては、インフルエンザによる超過死亡数は年間約1万人と推計されており、疫学的にはインパクトの大きな感染症であることは間違いありません。

 

しかしながら、今回の新型コロナウイルス SARS-CoV-2 による感染症COVID-19 はインフルエンザよりも深刻な影響を社会に与えていることも明らかですね。

この差がどこからくるのかについては様々な比較ができるかと思いますが、特に重要なことは、重症化する人の割合(重症化率)と死亡する人の割合(致死率)の違いと、感染のしやすさや症状の出方の違いという、ウイルスと病気の性質によるものといえると思います。

インフルエンザは日本では毎年1000万人近くが罹るといわれています。それにもかかわらず、医療崩壊が騒がれるようなことはないですよね。これは、重症化する割合が低いことが大きな要因でもあるでしょう。それと比べると新型コロナウイルスによる感染症COVID-19は、医療に負担を与えやすい性質を持っているといえるように思います。

新型コロナウイルスSARS-CoV-2に罹っても、かなりの割合の人は無症状か軽症であることも重要な差です。これはなぜかというと、無症状の人やウイルスが潜伏期間中の人も感染を広げてしまうことがある、にもかかわらず、症状がないので発見できず隔離や治療を施せない、ということがあるからです。このように静かに隠れながら拡がっていく感染症は制御が非常に難しいことになります。インフルエンザなどでは症状がでれば外出を控えたり仕事を休んだりすることができますが、症状がでなければいつ休めばいいのか、誰に接触しないよう注意すればよいのかもわかりませんよね。

インフルエンザは冬に流行し、気温が上がるにつれ徐々に収束していくという特徴がありますが、新型コロナウイルス感染症の季節性については、まだわからないことがほとんどです。季節性はあるかもしれませんし、あまりないかもしれません。その要因として気温・湿度・紫外線などがいわれたりもしていますが、これは決して大きな要因ではないと考えています。というのは、新型コロナウイルスSARS-CoV-2はヒトからヒトへダイレクトに飛沫などを通じて感染することが多く、より大切なのは人同士の接触を断つことであると考えられるからです。よって、夏になれば流行が「自然と」収まると油断することなく、予防的な生活様式をしっかりと行っていくことが重要であると今は考えています。

 
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