5月29日の会見で小池百合子東京都知事は、休業要請の段階的緩和などの発表と合わせて「ウィズ コロナ宣言」との言葉を打ち出しました。人と病原体との関係は今にはじまったことではないものの、その付き合い方について今一度考えてみる必要はありそうです。今回のような事態を繰り返さないために必要なこと、私たちが持つべき心構えとは。

この時期の制限解除は正しかったのか?峰宗太郎医師がみるポストコロナの世界_img0
緊急事態宣言解除後の東京タワー。観光スポットにも少しずつ人出が戻りつつある。 写真:AP/アフロ


新しい感染症はいつかまた必ずやってくる


身近な事柄で説明すると、そもそも毎年流行っている風邪というのは、多くの種類のウイルスによって引き起こされています。コロナウイルス、ライノウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、ヒトメタニューモウイルス……。とにかく多くの原因があります。ひとくちに風邪といっても様々な症状が出るのはそのためなんですね。

 

今回の新型コロナウイルスはほぼ確実に動物由来で(可能性が高いと考えられているのはコウモリ、またはセンザンコウという動物のようです)、昨年の11〜12月頃に中国で初めてヒトに感染し、そこから拡がったものであると思われます。
これは、コロナウイルスというものが動物の中でつねに保持され蔓延しているものであり、「種の壁」をこえて動物からヒトへとうつってきた人畜共通感染症(ヒトにも動物にも感染する感染症、ズーノーシスといいます)である、ということでもあります。

実はインフルエンザウイルスも人畜共通感染症です。主に渡り鳥などに保持されており、それがガチョウやアヒル、ニワトリといった家禽類やブタなどに感染し、そこからヒトに感染することが起こるんですね。
このような人畜共通感染症においては、常に動物界からヒトの世界へ新たな感染症が入ってくる可能性があります。
そして、そのような動物界からヒト界への新たなウイルス感染症の発生(侵入とも言えますね)は、これまでも多く起こってきましたし、今後も起こると考えるのが自然でしょう。そうしますと、今回の新型コロナウイルスSARS-CoV-2の後に、また別のウイルスが新興感染症として現れ、流行することは当然考えられます。自然界と接することで、これは常に繰り返されていることではあるのですね。

ウイルスとどう付き合うかというのはとても難しい問題になります。もちろん流行すれば抑え、治療し、排除していくことが人間社会にとっては重要です。しかし、動物界から入ってくるものを有効に防ぐには様々なことを総合的に考えねばなりません。
動物の世界とふれあう部分を大きくせず、自然破壊などを続けないようにすることなども重要でしょうし、動物の世界で流行っているウイルスの状況を見続ける専門家も必要でしょう。そしてヒトの世界に入ってきたら素早く察知し、封じ込められるように準備しておくことも重要と思います。

新興ウイルス感染症はまた必ず起こります。常にそういうことは起こりうると認識し、備えを万全にしていくことが今後も継続的に求められることであると考えます。
 

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