病的口臭 ~時間帯や食事摂取によらず口臭が続く~
時間帯や食事摂取によらず口臭が続く場合には、少し心配すべきかもしれません。
この心配すべき口臭は、病的口臭と呼ばれます。病的口臭は、特定の病気によって生じる口臭で、生理的口臭との大きな相違点は、タバコなどの嗜好がなくても存在し、ブラッシングなどをしても消えない点です。そこに病気があり続ける限り、臭いも続くというわけです。
この病的口臭は、原因となっている体の部位によってさらに細かく分類することができます。中でもとりわけ多いのは、口由来の病的口臭です。
例えば、歯周病など口の中で細菌感染が起こっており、歯肉でたくさんの細菌が繁殖してしまっているケースでは、強い臭いが出ることがあります。また、虫歯があったり、歯並びが悪く歯間に食べ物が詰まってしまったりというような方も強い口臭が出ることがあります。つまり、口の中のケアを怠ってしまっている場合、虫歯が目立つというような場合にはそれが口臭の原因かもしれません。
また、「ドライマウス」と呼ばれる病態でも口臭が厳しくなることがあります。この「ドライマウス」は、読んで字の如く、口が乾くという状態を指しますが、シェーグレン症候群と呼ばれる病気や、花粉症薬、うつ病の薬などでも生じることがあります。例えば花粉症の薬を飲み始めてから口臭が気になるようになったという場合、薬をやめて元に戻るかを試すのも手です。このドライマウスは、虫歯の原因にもなりえます。口が乾きやすい、すぐに水が欲しくなる、などといった症状がある場合には注意が必要と言えます。
さらに重篤なケースとして、口の奥の扁桃という場所の細菌感染症や口や喉のがんでも口臭をきたすことがあります(参考3)。このような原因がある場合には、痛みや発熱、首にしこりを触れる、体重が減るなどの症状が見られることも多くなります。このように、口の臭いだけでなく痛みやしこり、体重減少といった症状もある場合には病気が隠れている可能性があり、病院受診が勧められます。特に口の中や喉の奥のがんは、タバコが強い危険因子となりますので、喫煙者では注意が必要です。
口以外の病気が原因になることは比較的稀ですが、そのようなこともあり得ます。口以外で多いのは、口と距離の近い鼻の病気です。特に、副鼻腔炎と呼ばれる、鼻の奥の構造に生じる炎症、感染症で、口臭が出やすくなることが知られています。強い鼻づまりや顔面の痛み、熱が続くという場合には、このような病気を疑う必要があります。
それ以外に、肺の感染症や食道・胃の病気でも口臭が生じることがありますが、とても稀です。咳や痰が続くという場合には肺の病気の存在が示唆され、胸焼けや胃の痛みが続く場合には食道・胃の病気の存在が考えられますので、あわせて注意すべき症状と言えるかもしれません。
最後に、全身の病気でも口臭が出ることがある(参考4)ので、紹介します。例えば、よく知られているのが、肝硬変という病気です。これは、ウイルスの感染症や長期にわたる飲酒で生じることのある病気です。肝硬変で生じる口臭は「肝性口臭」と呼ばれており、独特な臭いがするので、内科医ならすぐに気がつくかもしれません。また、腎臓病や糖尿病の悪化でも口臭につながることがあります。糖尿病の悪化の場合にはどこか甘い匂いがするので、口臭とは捉えられないかもしれません。肝臓や腎臓の病気では、強い足のむくみが出る、息苦しさが出る場合があり、病気を疑うきっかけになりえます。
このように、口臭に加えて、その他の全身の症状がある場合には注意が必要です。
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