主観的口臭 ~病院で受診する方の約1/4は、臭いがしない~

3つの口臭と4つの危険なサイン【医師・山田悠史の解説】_img0
 

もうひとつ、最後にご紹介するのが、主観的口臭あるいは偽口臭と呼ばれる口臭です。これは、実際には臭いはせず、他人からは確認できないものの、主観的に口臭があると気になってしまっている状態のことを指します。実は、口臭を理由に病院受診する方の約1/4がこれに該当すると報告されています(参考5)。

 

これは、精神心理的な認知の問題であり、歯ブラシを過剰に行なったり、うがいやブレスケアを頻繁に使用するといった行動につながっていることが多いという特徴があります(参考6)。

また、稀に神経の病気やビタミンの欠乏でも、本当は臭いがないのに臭いがあると錯覚してしまう症状が出ることがあります。さらにいえば、現在流行中の新型コロナウイルス感染症でも、このような錯覚が出ることがありえます。ただし、コロナウイルス感染症でこのような症状が出る場合、多くは同時か先行して発熱や咳といった他の症状が見られますので、そのような症状なしに不用意に感染を心配する必要はありません。

いずれにせよ、口臭が気になる場合に、同居のご家族やよく一緒にいる恋人、友人に確認し、臭いが気にならないと言われたら、それは主観的口臭の可能性があります。そのような場合には、病的口臭ではないといえます。


病的口臭の見分け方


ここまで見てきた病的口臭は、どのように見分けたらいいのでしょうか。そのために、次のようなチェックポイントがあります。

①    時間帯や食事摂取、嗜好品によらない口臭があるか?
②    口の中のケアを怠っていないか?
③    喉の痛み、鼻づまり、発熱や体重減少といった口臭以外の症状があるか?
④    その口臭は、家族や友人にも指摘されるか?

これらのサインに心当たりのある場合には注意が必要で、病院への受診が勧められます。あなたの口臭は大丈夫でしたか?


口臭を防ぐ方法は、ある


では、どうやって口臭を防ぐか。最後に、口臭を防ぐための方法を共有させていただきます。

まず、病的口臭の場合には、原因の病気が解決しない限り口臭が解決することはありません。このため、先に紹介した4つのポイントにあてはまる場合には、病気がないかを確認し、その治療を行うことが先決となります。

また、主観的口臭の場合には、多くの場合、「認知の問題」ということになるので、認識を変えるということが解決につながります。ご自身でそれが難しい場合には、精神科の医師の助けが必要になる場合もあります。

その上で、該当する原因がない場合、すなわち生理的口臭の場合には、十分なエビデンスが確立しているわけではないものの、改善策としていくつかの方法を試すことができます(参考7)。

まず、唾液の分泌や口の中の潤いが口臭を防ぐ助けになるので、砂糖不使用のガムを噛んだり、こまめに水分を取ったりすることが有効となります。

また、口の中の細菌の繁殖を防ぐため、口のケア、食後のブラッシングや歯間ブラシ、舌の掃除が重要となります。口の中は常に清潔にしておきたいものです。

朝の強い臭いを防ぐためには、寝る前のマウス・ウォッシュも有効です。寝ている間は唾液分泌が少ないので、マウス・ウォッシュの香りが残りやすくなります。また、多くのマウス・ウォッシュには細菌の繁殖を抑える有効成分が含まれていますので、菌の繁殖を防ぐ効果も期待できるのです。

嗜好品という意味では、寝酒や夜のコーヒー、喫煙を避けるのも口臭の改善に有効です。

今から追加でできそうなものはあったでしょうか。もしあれば、少しずつでも試してみてください。口臭が気になり始めたあなたも、明日から爽やかな毎日を送れるようになるかもしれません。
 

【医師が回答】抗原検査キットが承認。PCR検査、抗体検査との違いとは?>>

【医師の結論】マスクの「有効性」と「正しい使い方」>>

【現場医師の要望】医療崩壊させないための「引き算の支援」とは>>


参考文献
1.     Fedorowicz Z, Aljufairi H, Nasser M, Outhouse TL, Pedrazzi V. Mouthrinses for the treatment of halitosis. Cochrane Database Syst. Rev. 2008;
2.     Tonzetich J. Production and Origin of Oral Malodor: A Review of Mechanisms and Methods of Analysis. J Periodontol 1977;
3.     Ferguson M, Aydin M, Mickel J. Halitosis and the tonsils: A review of management. Otolaryngol. - Head Neck Surg. (United States). 2014;
4.     Preti G, Clark L, Cowart BJ, et al. Non-Oral Etiologies of Oral Malodor and Altered Chemosensation. J Periodontol 1992;
5.     Rosenberg M, Kozlovsky A, Gelernter I, et al. Self-estimation of Oral Malodor. J Dent Res 1995;
6.     Falcão DP, Vieira CN, Batista De Amorim RF. Breaking paradigms: A new definition for halitosis in the context of pseudo-halitosis and halitophobia. J. Breath Res. 2012;
7.     Kumbargere Nagraj S, Eachempati P, Uma E, Singh VP, Ismail NM, Varghese E. Interventions for managing halitosis. Cochrane database Syst. Rev. 2019;