――日本は、実はキャッシュレス後進国だと言われていますね。

 

森永:はい、そうなんです。日本はアジアの中で先進国だと思っている方が多いですが、実はキャッシュレスの面では他国に大きな後れをとっています。
2015年のデータでは、日本のキャッシュレス比率は2割弱と言われています。一方で韓国は9割、中国は4割ほどです。

こんな話を聞いたことがあります。
中国で信号待ちをしていたときに、ホームレスが「お金をくれ」といって窓をたたいてきたのですが、断る常套文句である「小銭がないから」と言う人が多いと。
すると、そのホームレスは自分の口座に紐づいた「QRコード」を見せて、「これなら簡単に支払えるでしょ?」と言ってきたそうです。
それだけ、キャッシュレスが国民に浸透しているのだという話ですね。

 

――QRコード決済が日本で使われるようになったのは、ごく最近のことですものね。

森永:ええ。なぜこれほどまでに日本ではキャッシュレスが進んでいなかったかというと……僕は理由の一つとして「紙幣や硬貨が清潔すぎるから」だと思っています。

――確かに海外に行くと、お札がしわくちゃだったり、汚れていたり……。

森永:ですよね。私はインドネシアや台湾に仕事で住んでいたこともあるのですが、アジアの紙幣は、日本の紙幣に比べてずいぶん汚れているなと感じました。
ちなみに、ベトナムでは、お金の桁数が多く、何十万ドンといった数字を日常的に使うんです(2029年6月11日現在で、日本円で100円あたり約2万1707ドン)。そうなると、一番安い単位の紙幣はそもそも本物のお札かもわからないし、「もういらない」といってお店の人が金額を切り下げたり、切り上げたりして端数処理をしてしまうこともあるほどです。

きれいかどうかや手間などを含めて、現金よりキャッシュレスの方が便利で、信頼できるという点から、アジアではキャッシュレス化が大きく進んでいるのだと感じます。

――今回のコロナにより、お釣りも手渡しではなくトレーに置くなど、「触らない」という意識が出てきましたね。

森永:その感覚もあって、今後日本でもキャッシュレスはどんどん進んでいくと思います。
コロナ禍により収入減の不安がある方もいるかと思いますが、このキャッシュレス化の波には上手に乗っていきたいですね。

家計簿アプリをスマホに入れて、支払いをなるべくキャッシュレスにして連携させれば、自分の家計全体を俯瞰的に見ることができます。無駄な買い物がわかって減らすことができれば、それだけお金も貯まります。ぜひ、お金を上手に貯める好機にしていただけたらと思います。
 

取材・文/西山美紀
構成/片岡千晶(編集部)

 

前回記事「【給付金を狙った詐欺に要注意】自分は大丈夫、でないうっかり騙される手口とは?」はこちら>>

 
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