ストーリーテリングのパワー
私自身のケースでいえば、私はアメリカで行われている「トーストマスターズ」という団体が主催するスピーチの大会で、アメリカ人ネイティブスピーカーと競いながら、NY地区優勝を5年間連続しています。
これだけいうと「すごい、きっと帰国子女なんだろうな」と思われるかもしれませんね。ところが私は帰国子女どころか、インターに通ったわけでもなく、大学まで日本語で育った日本人なのです。
おまけにアメリカの大学に留学した当初は、アメリカ人と英語で話すのが苦手で、彼らが何をしゃべっているのかもわからなくて自信喪失、毎日メソメソと寮の部屋にひとり引きこもっていました。
そんな「英語がヘタだから、喋りたくない」と泣きべそをかいていた私に、あるときアメリカ人学生がいった一言、
「SO WHAT?」(だから、なに?)
という言葉に、ハッとしたのです。
「英語がヘタだからなに?」というセリフに、そうか、ヘタでもいいから話せばいいんだ、と目からウロコが落ちて、そこから積極的に話しかけられる自分になりました。そして「トースマスターズ」というスピーチを学ぶクラブに所属して、スピーチを上達させてきたのです。
その段階では、スピーチの上達はプライベートのことであって、自分の本業であるビジネスコンサルタントとは別ものだと思っていました。
ところがスピーチで培ったストーリーテリングをビジネスシーンで生かしてみたら、聞き手の反応がまったく違う。
たとえば自分自身がコンサルタントとして企業研修を行う際、コンセプトの説明をたんなる事例紹介にとどめず、自分自身の失敗談をふんだんに取り入れたストーリーを語りながら、いかにそのコンセプトを使って状況を改善したか、を伝えるようにしました。そうすると、参加者にとって、より頭だけの理解から、腹落ちするところまで、深い理解につなげることができるようになりました。
また戦略コンサルティングのビジネス時にも、例えばクライアントの商品紹介や会社紹介、そしてウェブや資料に至るまで、「人の顔が見える」ストーリーを取り入れて、その会社「らしさ」を伝えることで、ブランド戦略の強化にもつながります。
なるほど、ビジネスにこそ、ストーリーテリングは有効なのだ、と気づいたのです。
だからこそ読者のみなさんにも、ぜひこの「ストーリーテリングのパワー」を生かしてみて欲しいのです。
ストーリーテリングに落とし込むことで、あなたが話すことは、相手の頭と心に刺さるものになるでしょう。
『世界のエリートは『自分のことば』で人を動かす』
著者:リップシャッツ信元夏代 1500円(税別) フォレスト出版
「なぜできるリーダーは心を揺さぶるストーリーを語るのか」「あなたのことばが伝わらない、決定的な違いはなにか」…その鍵は、あなたの語るスピーチが「ストーリー」に落とし込めているかどうか。世界のリーダーたちがビジネス戦略に取り入れている「ストーリーテリング」のメソッドを公開。プレゼンだけでなく、対人関係においても、”自信”と”存在感”が高まる世界基準のブレイクスルーメソッドが満載です。
構成/朏亜希子(編集部)
リップシャッツ信元夏代
事業戦略コンサルタント、プロフェッショナルスピーカー。
ニューヨーク在住。1995年早稲田大学商学部卒業。ニューヨーク大学スターン・スクールオブビジネスにて経営学修士(MBA)取得。早稲田大学卒業後すぐに渡米し、伊藤忠インターナショナル・インク(NY)に勤務。その後マッキンゼー・アンド・カンパニー(東京)のサマーインターンを経て、2004年に事業戦略コンサルティング会社のアスパイア・インテリジェンスを設立。同社を通して、調査分析、戦略設計、及びグローバルリーダー育成のための各種企業研修を提供。2014年には、ブレイクスルー・スピーキング™ を立ち上げ、グローバルに活躍する日本人、そしてグローバル日系企業向けに、「文化の壁を越えて伝わり、相手を動かす」プレゼン・スピーチを指導。トーストマスターズインターナショナルの国際スピーチコンテストでは、日本人初の地区大会5連覇、世界トップ100入りを果たす。著書に「20字に削ぎ落とせ ワンビッグメッセージで相手を動かす」、ブライアン・トレーシー氏との共著『The Success Blueprint』がある。一児の母、競技ラテンダンスのプロアマ選手として世界大会にも出場。乳がんサバイバーでもある。