新型コロナとインフルエンザに同時感染したら…

 

もう一つは、インフルエンザとコロナウイルスの両方に感染する、混合感染への懸念です。これまでのコロナウイルス感染の流行は、ほとんどの地域でインフルエンザの流行と時期がずれたため、両者の混合感染の報告はほとんどありませんでした。しかし、もし同時流行が起こったとすると、混合感染も一定の確率で生じるでしょう。

 

その場合、致死率への影響がどのように出るかは未知であり、仮にも症状が良い方向に向かうとは考えにくく、感染者の合併症や致死率がさらに悪化することも考えなくてはいけません。

コロナウイルスとの対比として、インフルエンザには有効な抗ウイルス薬が複数存在するものの、薬剤の分かっている有効性は、あくまで症状の持続時間が約1日短縮するというものです(参考1)。少なくとも現在まで、致死率を改善するなどの劇的な有効性は証明されていません。

これは、コロナウイルス感染症も同様で、これまでに報告されている薬剤の有効性は、あくまで症状改善までの期間の短縮です。

また、インフルエンザはコロナウイルスと異なり、子供にも大きな流行を起こします。このため、仮に流行した場合には学級閉鎖も必須の政策となるでしょう。

このように、今秋、冬はコロナウイルスの第二波の有無に関わらず、より大きな混乱が避けられないかもしれません。

こういった二つの側面から、インフルエンザの予防は例年にも増して重要となるでしょう。
 

ワクチンの効能とは


インフルエンザ予防で最も重要になるのが、インフルエンザワクチンです。

インフルエンザワクチンの有効性は大きく二つに分けられます。一つは、身体をウイルス感染から守る役割、もう一つは感染してしまった際の重症化を防ぐ役割です。

インフルエンザの予防接種によってインフルエンザウィルスの「感染」を防ぐことのできる確率は、「外れることがある」ことも含め、良い時は8~9割、平均でも約6割と試算されています(参考2)。

また、仮に感染をしたとしてもインフルエンザによる致死率を40%ほど低下する効果が報告されています(参考3)。これは、毎年連続で受けている方では、75%程度まで増加することも知られており、毎年打つことによる弱い「ブースト」効果も期待できます。

一方、予防接種の副作用は、注射部位の痛みやアレルギー反応といった一時的で軽いものを除けば、とても小さな確率でしか報告されていません。例えばギランバレー症候群という重篤な副作用がごく稀に出現し関連性のある可能性が指摘されています(参考4)が、インフルエンザ感染に伴うリスクと天秤にかけると、そのリスクは圧倒的に低いものと考えられています。

こういった健康障害リスクと天秤にかけられた上で、複数の先進諸国で、これまで重篤なアレルギーが出た方を除き、「生後6カ月以上の全ての方がインフルエンザワクチンを毎年打つ」ことが推奨されています。なお、WHOは推奨を一部の方に限定していますが、これは「医療資源が限られた地域で高リスクの方に優先的に分配する必要があるから」と説明しており、その理由は利点ではなく資源の分配にあります。


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