ライターさかいもゆるがアラフォー以上で結婚したカップルへのインタビューを通じて、結婚とは、夫婦とは何かを考える連載。前回に続き、25歳での婚約破棄を経て、43歳で結婚した10年来の男友だちと結婚した里佳子さんへのインタビューです。

里佳子さん、47歳。渉さん、48歳。10年間飲み友達だったふたりが、突然恋に落ちた理由とは……?


「人として好きだから、男女の関係になってこの友情を壊したくない」


婚約者が多重人格者だと知って、式直前に婚約破棄した里佳子さん。

 

里佳子さん:そんなときでも、「里佳子ちゃんが選んだことならそれでいいのよ」と言ってくれたうちの両親って、本当に仏みたいに優しくて。「きっとこのあと、また別のどんな男性を連れてきたとしても、結婚に賛成してくれるんだろうな〜」と思ってました。結果、その後20年くらいそんなことにはならなかったのですが(笑)。


里佳子さんには、その後、27歳から12年ほど交際した彼がいたのですが、婚約破棄したあとでもあり、28のときに会社を設立して仕事も忙しく、気づいたら30代半ば。「そろそろ子どもも欲しいな」と思い始めたけれど、彼には結婚願望なし。

そんな頃に、ある社会人セミナーで出会ったのが渉さんでした。

里佳子さん:渉さんはバツ2なんですが、知り合ったときはまだ2回目の結婚中。ものすごく気が合う飲み友達、という感じで、色っぽいムードは一切なし。いつも私の恋愛の愚痴を聞いてもらってました。

そこから10年近く飲み友達としての関係が続き、その間、里佳子さんはいろんな男性たちと付き合っては別れ、そのたびに渉さんに最近の恋愛事情を話していたのです。

 

さかい:それって、向こうは恋愛感情があったんじゃないんですか?

里佳子さん:後で聞いたら、向こうも女としては見ていなかったようです。彼にとって初めて出来た女友達で、「人として好きだから、絶対に男女の関係になってこの友情を壊したくない」と思っていたんですって。


飲み友達になってすぐに渉さんは離婚してバツ2になっていたのですが、そのことを里佳子さんが知ったのも、あとになってからだったとか。

そんなふたりが、一体何をきっかけに付き合うことになったのでしょう。


仕事ができてセンスのいい年上彼氏から言われた衝撃の言葉


里佳子さん:私が40代になったとき、「エッチが上手そうな色気ムンムンで仕事ができそうな男性」に惹かれるようになったんですよね。


――その感覚、何となくわかります。わかりやすく「雄」を求めるようになるスイッチが、40代に入ってから押された気が……。私で言うと、今まではフェミニンな優男系の男性が好きだったのに、急に男っぽい、ダンディな中年男性に色気を感じるようになりました。あれって何なんでしょうね。里佳子さんによると、それは「最後の悪あがき」だそうですが(笑)。

そこで里佳子さんが付き合ったのが、ワールドワイドに仕事をしているヤリ手の経営者の男性。

里佳子さん:いつも、男性とのデートでは私が店を選んでいたのに、その彼は自分で店を毎回予約してくれるんですが、その店がどれもやたらセンスが良くて。で、一度もメニューを見せられたことがなくて、毎回彼が頼んでくれるんですが、これまた全部美味しい。


仕事ができてお金を持っていて、店選びの趣味も抜群。一見いい男性のように見えますが、実は単なるモラハラ男だったのです。

里佳子さん:最初はね、「何もかも彼がリードしてくれて、こんなの初めての体験♡」って思ってたワケですよ。だけど、段々「様子がおかしいぞ」って気付き始める。だってたまには私だってメニューを見て自分が好きなものを食べたい。だけど彼には、「自分が頼むものは絶対に美味しいし外さない」という自信があるから、やっぱりメニューを見せてくれない(笑)。


ウェディング業界で働く里佳子さん。ある日「仕事の繁忙期で〜」と話すと、彼が、「いいよな里佳子は。ただヘラヘラ笑って愛想振りまいてれば金が入ってくるんだから、楽だよね〜」と言い放ったのです。

仕事にストイックにがんばっていた里佳子さんにとって、この思いやりのない屈辱の言葉は、一瞬で気持ちを冷めさせるものでした。

里佳子さん:「こいつ、ただのモラハラ男じゃん!」って気づいて、キラキラしていた壁が崩れ落ちた瞬間でした。腹が立って、理詰めで冷静に言い返しましたけど(笑)。


いつものように、その彼との顛末を渉さんに話している最中に、里佳子さんは急に、はっと気づいたのです。「あれ? 目の前にこんな素敵な人がいる……!」ということに。

里佳子さん:男性って、愚痴を話したときに余計なアドバイスとかしてきがちじゃないですか。それが、気づいたら、渉さんはこの10年間、私に意見を言ってくれることはあっても、指摘とかジャッジとかをしたことが一度もなかったんです。


そんな渉さんとの関係は、そのモラハラ男とは真逆。飲む店も100%里佳子さんが決められて、それが居心地が良かった。

恋愛を先に意識したのは、里佳子さんの方。「渉さんって素敵だし、一緒に居てすごく居心地がいい」。10年間も一緒に居て、急に恋に落ちる瞬間が来るとは。これぞ、「恋の不条理」ではありませんか。男女の仲って本当に、何が起きるかわからないものですよね……!

このあとおふたりがどうやって結ばれて、ハワイでの感動のウエディングを迎えたかというお話は、次回に続きます。
 

イラスト/いとうひでみ
構成/川端里恵(編集部)

 

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