ライターさかいもゆるがアラフォー以上で結婚したカップルへのインタビューを通じて、結婚とは、夫婦とは何かを考える連載。今回は、25歳での婚約破棄を経て、43歳で結婚した10年来の男友だちと結婚した里佳子さんへのインタビューです。
多重人格者との婚約破棄の悲しい思い出が……
晩婚のウエディングってどうするか、ちょっと悩む方もいらっしゃるのではないでしょうか。友人たちは妙に目が肥えてしまったし、若い頃と違って、ドレス選びも色々と気を使わなくちゃいけないし……。となると、「今更この年で結婚式はやらなくていいか」となったり、ごく身内だけの小さな式で済ませる方が多い気がします。
だけど今回取材した里佳子さんは、「晩婚だからこそ、結婚式は絶対やった方がいい!」と力説。それは彼女がウエディング業界でバリバリ働く女性だから、単に業界の回し者(失礼!)なんじゃないかと思っていたら、そうではなかった。
――最終的に、私、さかいも「(アラフィフだし再婚だけど)、いつか結婚するなら、絶対に盛大な式を挙げたいな」と思うほどに洗脳(?)されてしまった、里佳子さんの素敵な晩婚ウエディングのお話をご紹介したいと思います。
里佳子さんが結婚したのは、45歳になる直前。25才のとき、多重人格を持つ統合失調症の男性と婚約破棄した過去がありました。
さかい:多重人格って……『24人のビリー・ミリガン』みたいなやつですか?
里佳子さん:まさにそれ。彼の中には5人の人格がいたんです。交際中から、何となくおかしいなと思うところはあったんですけど、ある日、彼の別人格が、他の女性と交際していることが発覚したことで、その事実がわかりました。
さかい:どういうことですか!?
里佳子さん:私との結婚式の日取りも決まっていたんですが、私宛に1日100回くらいイタ電がかかってくるようになって、そのうち実家にまでかかってきたんです。母が出たら、「このまま結婚したらどういうことになるか見ててくださいね」って脅すようなことを言われて。さすがにおかしいと思って彼を問い詰めたら、他の人格が出てきたんですよ。多重人格者って、追い詰められると別人格が出て来るらしいです。
さかい:それは、浮気を言い逃れるための演技とは違うんですか…?
里佳子さん:はい。もう、声や話し方もすべて変わるんです。それで、彼のお母さんを呼び出しました。「お母さん、気づいてましたよね、このことに?」って。そうしたら、両親は彼の病気を知った上で私と結婚させようとしてたことがわかったんです。どうやら、幼い頃の虐待が影響で精神的な傷を負ったのが原因のようでした。さすがに私には手に負えないと思ったので、「自分たちでどうにかしてください」と、結婚は取りやめることに決めました。
相手の女性も精神的に少しおかしい人だったようで、最後は包丁を持って里佳子さんの家にまで来て、警察沙汰に。
信じていた相手に裏切られた傷は深く、里佳子さんは実家に戻り、ひとりでは眠れないので、両親の間に川の字になって親子3人で寝ていたそうです。
里佳子さん:私が毎晩、寝ながら泣いているのを知って、一緒に寝てくれるようになったんです。その頃、母は脳腫瘍の治療中で実家も大変な時期だったのにそうやって私に優しくしてくれて…。しかも、両親も兄弟も、最初から最後まで、ひとことも彼のことを悪く言わなかった。―それは、浮気をしていたのは彼の別人格だったというのもあるけれど、その彼を完全に許すということで、その彼を愛してしまった私のことも許してくれることに繋がっていたんです。
さかい:それって……。すごい大きな愛ですよね……。
里佳子さん:はい、本当に。この両親のもとに生まれて良かったと、心の底から思いました。だから私は立ち直ることができたし、「二度と恋愛のことで親を悲しませたくない」と強く思ったんです。
愛する娘をそんな風に傷つけられたら、相手に罵詈雑言を吐きたくもなりそうなのに、娘が愛していた相手をその罪も丸ごと完全に受け入れて許すって、普通の人間にはなかなかできることではないと思います。里佳子さんのご家族は、とても懐の深い、愛情深い方たちなんだろうなと感じました。
そんな辛い経験から約20年後、一時は植物人間状態になったこともあるお母様が、73歳で娘の結婚式に無事参列することができた。その感動的なお話は、次回に続きます。
構成/川端里恵(編集部)
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