21世紀の性教育は「人権教育」としてとらえる


吉祥女子中学・高等学校は50年以上も前から独自の性教育に取り組んでおり、それが1つの特徴にもなっています。

「積極的に性教育をやっているというと、昔はなかなか世の中に受け入れられませんでした。それがいまでは学校説明会で性教育の話をしても前向きに評価してくださるご家庭が増えましたし、昨年はNHKのハートネットTVで大きく取り上げてもらいました。性教育に関する世の中的な関心が高まっていることを感じます」と吉祥女子の綾部香先生は言います。

吉祥女子では、「性とは生である」という理念に基づいて、社会、理科、家庭科、保健体育の教科横断で性教育に取り組んでいます。

「性教育って“How to Sex”みたいに思われがちじゃないですか。でもその性について考えるということは、どうやって自分が生きていくかとか、他人をどう大切にしていくかということを考えることがベースになきゃダメなんです。要するに人権教育です」

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「性」という概念を「SEX」ととらえるのか「人権」の一部としてとらえるのかで、視野がまるで違います。最近は海外でも「性教育(sex education)」という呼び名から、「セクシュアリティ教育(sexuality education)や「包括的性教育(comprehensive sexuality education)という呼び名に変わってきています。

 

「性の健康世界学会」が発表している「性の権利宣言」によれば、「セクシュアリティ(性)は、生涯を通じて人間であることの中心的側面をなし、セックス(生物学的性)、ジェンダー・アイデンティティ(性自認)とジェンダー・ロール(性役割)、性的指向、エロティシズム、喜び、親密さ、生殖がそこに含まれる。セクシュアリティは、思考、幻想、欲望、信念、態度、価値観、行動、実践、役割、および人間関係を通じて経験され、表現されるものである」とのこと。

WHOとユネスコが提唱している5〜8歳児向けの性教育では、小学校低学年なりの経験をもとに、「セクシュアリティ」に関する幅広い概念を理解するきっかけを与えます。家族、友人関係、人権、ジェンダーなど幅広いテーマを扱うなかで、誰がどのような形で自分の体に触れるのかを決める権利を誰もがもっているということや、インターネットに潜むリスク、生殖器の名称や機能、精子と卵子が結合して子宮に着床して命が生まれること、人間は人生を通して誰かと近くにいることや自分の体から喜びを得るのが自然であることなどを学びます。

日本の性教育はこうしたガイドラインに比べると大変貧弱です。グローバル教育もIT教育も結構ですが、21世紀を生きる子供たちを育てるというのであれば、性教育も国際水準を意識する必要があるのではないでしょうか。