読者の皆さん、こんにちは。〔ミモレ編集室〕のれいです。
6月27日(土)に第三回編集・ライティング講座が開催されました。

第3回目となった今回の講義の第一部はwith事業部長の鴉田久美子さんによる「時代のムードを読み、人の心を動かすには」。

ミモレ世代30代後半の私。
今回記事を作成することとなり、実は十数年ぶりに「with」を購入しました。

「with」と言えば私の中ではオフィスカジュアルの教科書のような存在。
キレイ派とかわいい派に別れた着回しコーデ、4桁台でもリッチに見える服など、20代の実用的なファッションのバイブルとして愛読していたので、10年以上経った今読んだらどんなふうに感じるのだろうと少しドキドキしながらページをめくっていきました。

しかし読み進めていくうちに

「あれ、withってこんなに攻めてる雑誌だったっけ?」

と、良い意味でかつて読んでいた時とのギャップを感じました。
もちろんメインはファッションではあるものの、ライフスタイル、美容、グルメ、芸能、読みもの等あらゆるジャンルがまんべんなく網羅されていて、さっと目を通しただけでもあとでゆっくり読んでみたいと思うボリューム感。(そして何と言っても今月号は表紙がセーラームーン!)
その情報量の多さに少々圧倒されてしまったほどでした。

「with」2020年8月号の表紙はセーラームーン!

これは作り手の並々ならぬこだわりがあるに違いないと雑誌から感じ取ったのですが、それを裏付けるかのような鴉田さんの思いをこの講義で聞くことができました。

鴉田さんは91年に講談社に入社後、「ViVi」「GLAMOROUS」を経て2016年から「with」に携われています。学生時代は「Vingtaine」の愛読者であり、「with」や「ViVi」という年代もテイストも全く違う読者のインサイトや流行の兆しをどのように探っていったのかという川良編集長の質問にお答えいただきました。

 


時代のムードの読み方ーー「業界のトレンド」と「リアル」を水平の視点で観察する


雑誌は取材・編集・発表の3つで成り立っていて、特に取材は1つのことを深掘りしていくことが重要なのだそうですが、最初にそれをせず敢えて水平の視点で見ることを大切にしているそうです。まずはとにかくありとあらゆる情報を自分にインプットする!

 

業界のトレンドであればハイブランドのコレクションを見る。それと同時に今流行っているリアル(ルミネのフロアや街で歩いてる人が本当にトレンドを着ているのか)を見る。なぜリアルを見ていくかというと、どれだけこれが流行ると行っても街にいる人たちはそれを着ていないことがすごく多いのだとか。

作り手の思いだけで可愛いと思ってしまいがちになるところを、いちいち立ち止まって検証し、足を運んでプレスの方やバイヤーの方と会話し、言葉をメモっておく。水平で見てから深掘りする。そうすることで時代全体のムードや流行を見ていたそうです。

鴉田さんの思う良い記事とは、「その人に何かの変化を起こすこと」


次に「チェックが厳しく妥協と誤魔化しが許されないイメージがある鴉田さんの思う良い記事とは?」というミモレ編集部・川端さんからのご質問。

一言で言うと良い記事とは「人の心を動かす記事」。
記事を作成するのが目的ではなく、作った記事でその人に何か変化をもたらすことが目的で、読書に届けた時に心の変化を起こすことをゴールとしているそうです。

実際誌面を作る際にどのような点に気をつけているのか、3つのポイントも教えていただきました。

1.印象に残る言葉を使っている

 

一目で意味がわかることが1番大切。
例えば「国宝級イケメン」という異質な言葉の組み合わせや、「ニューノーマル」といった新語・流行語など、短くシンプルで強い言葉で目を引く。ハッシュタグを作ってシェアしたくなる仕掛けを作る。

2.発見がある内容である

 

「学びがある、メモリたくなる、中身がある記事」にすること。
商品を紙面になんとなく並べるのではなく、商品の一つ一つにストーリーと説得力を持たせて予定調和にならないようなテーマ性のあるものにする。

3.エクスクルーシブな情報がある

 

エクスルクルーシブな情報とは、人や情報の青田買いをし、「ここでしか見られない、読めない」という特別感に繋げていくもの。

例えば「with」のオンラインで配信しているオリジナル漫画は、インスタグラムから漫画家さんを見つけてオリジナル漫画を依頼し、ページビュー数も増えたことからコミック化・ドラマ化まで実現。人が見ていない情報を探し出し、最後はパートナーとして一緒に盛り上げるところまでの関係性を築いていくことが大事なポイント。

確かに「with」の最新号を読んでみると「時長ケアしたい」などの目を引くワードや、商品のひとつひとつに予定調和ではないストーリー性があったり、読み手の琴線に触れるものが随所に散りばめられている印象を受けました。

この考え抜かれた切り口、タイトル、ストーリーによって構成された記事の数々が、ライフスタイルの岐路に立つ悩み多き世代にとって、自分のためになる選択肢でもあるのだなと腑に落ちた瞬間でもありました。


時代のムードを俯瞰し、言語化することはどんな仕事にも生きてきます


最後の質問で「雑誌の中身の方向性を変える時に社内の抵抗や読者離れの懸念はなかったのでしょうか?」という質問に「昔だったら『with』を勝手に生き方マガジンに変えたら大変な事態だったかもしれませんが、今なら軽やかに違う方向に行けます。なぜならデジタルの時代だからです。読者も自分にとって大切なことは何かを考え始めているし、人それぞれ大切なものも変わってきています」と答えていらっしゃったのがとても印象的でした。

来年40周年を迎える「with」。この数年で女性ファッション誌から生き方マガジンへ大きく変えてきたそうです。それも時代のムードを見ながら考えてきた結果で、そうしないと取り残されてしまうのではないかと考えたからこそ。

時代のムードを読むと一言で言っても、そこに辿り着くことは、地道に手間暇をかけて情報を丁寧に集め続けられる人が成せるものだと思い知らされたような気がしました。

講義全体を通して、「自分ごととして捉えるために、手足を動かして観察する」という鴉田さんのマインドをひしひしと感じました。

「時代のムードを俯瞰し、言語化することはどんな仕事にも生きてきます」というメッセージにもあるように、何事も自分ごととして捉えるためにじっくりと周りを観察し深掘りをすることは、どんな仕事にも活かせるヒントだと思いました。

また、「with」が地に足のついた女性向けの雑誌にもかかわらず、どこかマニアックな雰囲気を漂わせていると感じたのも、鴉田さんのアンテナの張り巡らせ方や実際に手足を動かすと言ったこだわりの積み重ねがあるからなのかもしれません。

編集部の皆さんも編集室のメンバーも鴉田さんの熱いお話に思わず肩に力が入ってしまうほど聞き入っていて、お話が終わる頃にはみんな自然と肩をぐるぐると回していました(笑)。

鴉田さんの熱い思いをメンバー全員が全身で感じとった50分間の講義でした。

れいさん

はじめまして!音楽を聴くこと、ライブに行くこと、食べることが好きです。 自分から発信することにチャレンジしたく入会しました。好きなものにのめり込むと饒舌になるタイプですが、普段は割と口数少なめに生きています(笑)よろしくお願いします♡


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