『VERY』にみる、雑誌のセルフツッコミ精神について
「基盤のある女性は、強く、優しく、美しい」をキャッチコピーに、輝く女性を応援するファッション&ライフスタイル誌『VERY』。
何を隠そう、私は10年もの間、毎号読み続けているコアなファンです(笑)
その魅力を一言で言わせていただくと、、、
『VERY』は単なるキラキラ雑誌ではなく、稀に見る“セルフツッコミ精神旺盛”なキラキラ雑誌ですよ!!
2009年、滝沢眞規子さんが読者モデルデビューしたと同時に、私の購読は始まりました。一般人とは思えない、その卓越したファッションセンス。
日々の家事・育児を丁寧に、そしてとても楽しんでいる彼女の姿を見て、
私も主婦業を堂々と楽しんでやるぞ!と前向きになれたのでした。
同じく読者モデルからスタートし、活躍の場を広げていったクリス-ウェブ佳子さん。
子育てがひと段落したら私も働くぞぉ〜!と勇気をもらっていました。
そんなお二人をリスペクトする一方で、誌面に登場する”妻、母、女”の全方位に輝いている女性たちと、美貌もイケダンも仕事も持っていない自分とのギャップに落ち込み、そのキラキラ具合に疲れてしまうことも、『VERY』あるあるの一つでした。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、『VERY』は2010年、度肝を抜く連載をスタートさせました。 そう。小島慶子さんの『もしかしてVERY失格!?』です。
「VERYを読んでいると、より華やかに、優雅に、より人から称賛されるかたちでそれに成功した人たちが目に見える形でたくさん載っている。勇気を与えると同時に、そうできない人を追い詰める構造になって」いる(「女たちの武装解除」より)と、堂々と『VERY』批判を繰り広げる小島さんが、巻頭で連載を!
「素敵な服を着て、洗練された家に住んで、高い化粧品を使っていても、それを有り難いと思わない人は醜い」とか、「男子の教育を過去50年間違え続けてきた日本で、VERYが提唱するようなイケダンなんてどこに自生しているんですか」とか、夢と憧れの『VERY』ワールドを、これでもかとぶった斬り始めたのです。
さらに、武田砂鉄さんの連載「猫に基盤」(2016年〜)、「VERYな言葉狩り」(2018年〜)も始まりました。「吾輩は猫ではない。基盤はまだ無い。」と、キャッチコピーを揶揄する文章から始まった連載「猫に基盤」は、
VERY読者が行きそうなスポットに武田さんが足を運び、そこで感じた違和感などを綴るツッコミコラムです。
6/7月合併号の「VERYな言葉狩り」では、「華やか服で『疲れてる?』ってもう言わせない!」という前号に掲載された言葉を捕獲し、「うん、疲れてる!」を前提にしようじゃないか、とバッサリ。思わず一緒にツッコミを入れたくなります。
太っ腹な『VERY』は、自ら斬られるための対談やインタビューもどんどん掲載してきました。
「(安定した収入を提供してくれる)夫がいれば、そりゃ『強く、優しく、美しく』いられるでしょう」と、突っ込んだのは上野千鶴子さん。
西原理恵子さんと桐野夏生さんの対談によると、『VERY』はきれいになりたいという人の不安を煽って、さらに物を売ろうとする『恐喝産業』(西原さん)だそうで(笑)。もう、ここまでくると、笑うしかないレベルの滅多斬りです。
旅、食べ物、ファッション、セレブリティ、、、。
雑誌というのは本来、読者が求める世界観や物語に没頭できるように、異質なものを入れ込まないはず。でも、『VERY』はその期待を見事に裏切ってくれます。
全方位キラキラの世界観と、それを否定するかのようなセルフツッコミ記事。
それはまるで「この世界はフィクションです。実在の人物や団体などと、関係ありません」と脚注をつけて始まるドラマを見ているようなのです。だからこそ、安心してキラキラ世界に憧れを持ち、楽しんで読める。そして同時に「自分にとっての基盤や幸せは、自分で考えようっと」と思えるのでした。
カバーモデルに矢野未希子さんを迎えて新しくなった今年1月号の表紙からは、件のキャッチコピーがひっそりとなくなっていました。
「家族という基盤がなくったって、女性は強く優しく、美しくなれるんじゃない?」
そんな『VERY』のセルフツッコミが、聞こえた気がしました(笑)
これからも、どんなキラキラとツッコミを見せてくれるのか、やっぱり目が離せない大好きな雑誌なのです。
Nupiさん
はじめまして。お祭り大好きな、江戸っ子主婦です。小学生と高校生の娘がおります。 目下興味があるのは、お腹周りのシェイプアップ、断捨離、中学・大学受験です。宜しくお願い致します!