会場全員号泣! 涙のバージンロード


この式には、8年前、一度は植物人間状態で寝たきりになったことのある、里佳子さんのお母様も出席されました。

実はお母様は脳溢血で寝たきりになったとき、医者には「もうご飯も食べられないし歩くこともできない」と言われ、お父様が往復8時間もかけて2年間、病院に看病に通っていた時期がありました。そんな母親に、72歳にしてようやく娘のバージンロードを歩かせてあげられるということも、里佳子さんにとっての悲願だったのですが、まず、そんな、今では車椅子のお母様が実家から東京行きの飛行機に乗ったという一報が入った時点で、里佳子さんも事情を知る友人たちも号泣。

そして式場で、ヴェールダウンセレモニーという、バージンロードを歩く前に花嫁のヴェールを下ろす儀式を行ったのですが、里佳子さんのヴェールをお母様が下ろした瞬間、友人、親戚一同、里佳子さんだけでなく、事前に話を聞いていた牧師もカメラマンも、会場全員が大号泣。お父様に至っては、泣きすぎてバージンロードを歩けなくなってしまったそう。

晩婚だからこそ、結婚式を2回挙げた理由【晩婚体験談】_img0
 

もう、想像するだけで、私も取材中に泣き、原稿を書いては泣き、の、もらい泣きエピソード。

里佳子さんが「晩婚カップルこそ、挙式をした方がいい」という言葉の裏には、このような背景もあったのですね。自分の今までの人生の全てを見てきた長年の友人たちや両親に、「この人とパートナーとして生きて行く」と宣言して祝福してもらう。それはやっぱり、若いときの挙式とは違う、重みがあります。

 

里佳子さん:2度目のみんなの前での式を挙げたのは、公に人前で夫婦になることを宣言することで、何かあったときにも、もう一度この人に向き合ってみようという気持ちになれると思うから。

それに、ウエディングの仕事をしていると、挙式の準備の段階で、そのカップルの今まで気づかなかった価値観のズレや、人付き合いに対するスタンスなどが浮き彫りになることが多くて。ただ、そこで揉めて、お互いの違いをどう擦り合わせて行くかということが学べるので、そこで揉めておくのも必要なステップだと思うんです。晩婚だと、お互いに譲れないものも多いと思うので、余計にそうなんじゃないかしら。

挙式準備からすでに、ふたりの結婚生活の予行練習は始まっているというワケですね。夫婦としての心構えは、挙式準備の段階で試されているのだ!

ところで、ウエディングのプロである里佳子さんが選んだ大人ウエディングって、どんなものだったか気になりませんか? 

里佳子さん:挙式のドレスは飾り気のないシンプルなシルクタフタ。披露宴ではベアトップの、背中が開いたドレスに母のパールのネックレスを着けました。お花は、ブーケも会場にも、少しカラフルな野の花をたくさん使ってデコレート。

120人の参列者を招いたホテルでの披露宴はかなりお金をかけたもので、40代オーバーがほとんどのゲストたちの「デザートビュッフェとかあっても食べられないからやめてね」というリクエストにより、高級なお料理とシャンパンを振る舞ったそうです。

なるほど〜、勉強になりますっ!

参列者たちも、「久々に結婚式に出られて楽しかった」、「普段は育児でなかなか出かけられないけど、披露宴出席を口実におしゃれして美味しいものを食べる機会が得られて良かった」など、若い頃とはまた違ったリアクションが。

さかい:そっか〜〜〜、晩婚ウエディングってそうやって聞くと、何だかいいことづくしですね! 私も挙げたくなってきちゃいました(予定はないけど)。

里佳子さん:そうなんですよ。晩婚も、晩婚ウエディングも、こんなにいいものなんだよ、ってことを、もっと皆さんには知って欲しい(笑)。

でも、大人になり、私のようにバツイチだったりすると「籍は入れなくてもいいか」と思ってしまう人も多いはず。


彼との結婚は、打ち上げ花火じゃなくて線香花火


それでも籍を入れて結婚するという行為には、どんな意味があるのでしょうか。

さかい:同棲中と結婚後、何が変わりましたか?

里佳子さん:うん、全然違いますよ。「数年後は田舎に住みたいね〜」とか、家族としての未来予想図が描けるようになるのがいちばん大きいかな。あとは、家族になった安心感からなのか、今まであまり見せなかった、彼はさみしがりやで私は甘えん坊という部分が引き出されて来た気がします。

結婚2年目になるおふたりは、現在はコロナ禍で、おうちで仲良くリモートワーク中。今は渉さんが会社を辞めて、里佳子さんの会社を手伝っているそうです。「親友と一緒に暮らしているかのような感覚」という夫婦の距離感は、友人だった期間が長かったおふたりならではなのかしら。

渉さんに惹かれたのは、「打ち上げ花火じゃなくて、線香花火を灯し続けてくれた相手だから」という里佳子さんの言葉が、印象的でした。

結婚って毎日続く日常だから、一発で終わってしまう、派手なだけの打ち上げ花火じゃ困っちゃいますもんね。里佳子さんが線香花火の良さに気づけたのも、様々な恋愛経験を経た、40代だったから。そう考えると、晩婚って、なかなか素敵なものなのかもしれません。

イラスト/いとうひでみ
構成/川端里恵(編集部)

 

前回記事「10年来の飲み友達と男女の仲に。友達以上恋人未満から結婚を決意させるまで」はこちら>>

 
  • 1
  • 2