キャビンアテンダント、というとどんなイメージでしょうか。
背の高い女性がスカーフをつけてヒールでコツコツ…美しい所作にうっとり。私はそんなイメージでした。
「スチュワーデス物語」に「CAとお呼びっ!」それこそ特別編放送で話題のドラマ「やまとなでしこ」なんかもそうですね。華やかな女性の世界のイメージです。

 

しかし、本作の主人公は「男性のキャビンアテンダント(CA)」。
少年が男性CAとしての夢に食らいつくーー、華やかというより、熱くて爽やかな物語です。
タイトルの『空男ソラダン』が指すのは、男性CAのこと。
男性のCAというのは世界ではスタンダードになりつつあるようで、日本でもどんどん増えているそうです。

主人公の空賀カケルは高校3年生の男の子。家庭は訳ありで、つるむ連中もヤンキーばかり。しかし、修学旅行で出会った女性CAに空の魅力を教えられ、これまでの生活とは一転、世界で活躍する男性CAとしての夢へ突き進んでいきます。

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『空男ソラダン』(1巻) 55ページ

そんな主人公のカケルくんなのですが、まあとにかく素直で可愛い!めちゃくちゃ応援しちゃいます。日本ではまだまだメジャーではない男性CAへの道も、持ち前の素直さと物怖じしない無鉄砲さで挑んでいき、以前の自分をどんどん変えていきます。達観しているようで、でもあどけなさがあった彼がみるみる成長していく姿には少年らしい勢いと熱さが溢れます。
気付けば顔つきも凛々しくなって、悩むことも話すことも頼もしくなっており、「すっかり大きくなって…」なんて、読んでいるとどうも母目線に…。初出社のシーンではカケルくんの母よろしく、頭の中で「ハンカチは、ティッシュは持ったの!?」と言ってしまうほど。


また、本作の面白いところは、メインの舞台が「八丈島と羽田をつなぐ地方路線」というところです。
地方路線は基線や国際線とは異なり、島の住民が主な利用者となります。

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『空男ソラダン』(3巻) 35ページ

島の住民との信頼関係を築いたり、乗客にあわせてイレギュラーの対応を考えたり、地方路線らしい身近さを感じさせながら、CAの業務には細やかな心配りや広い視野が必要であるということがわかりやすく表現されています。飛行機も街の一部、生活と地続きの場所。CAをはじめ、パイロットも整備士も、それぞれのプロが日常を作っています。

各者の仕事が噛み合っていいく様をみていると、「仕事しているときこういう気持ちいい瞬間ってあるよな」と、ふと思い出しました。私たちひとりひとりもまた、何かの仕事をしているときはささやかながら何かのプロであります。

このコロナ禍でも、街の日常が様々なプロフェッショナルによって作られていることに改めて気付かされました。

「当たり前」は「当たり前じゃなかった」と気付けた今、「当たり前」を作っていたプロの仕事の姿に感銘を受けるとともに、自分もなにかのプロであるのか?と問う機会にもなりました。

航空業界はコロナの影響を大きく受けた業界ですが、これからも空の日常を守る人々がご活躍されることを願います。

プロフェッショナルを目指し奔走する、男性CAを目指す少年の物語。ぜひチェックしてみてください!


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『空男ソラダン』(1)

著:糸川 一成 講談社

「別に今日死んでもいい」。人生をあきらめかけていた高校生空賀カケルだが、修学旅行中に生き生きと働くCAの妃と出会ったことで「空の世界で働きたい」と思うようになる。偶然手に入れた名刺から大手航空会社・日本エアラインサービスの社員、高殿に相談したところ、高卒採用のある日本アイランド航空のCAを目指すことになるが……。

文/熊木彩乃