みなさん、マンガはお好きですか? マンガ好きな人も、最近はあまり読まないという人も、子どもの頃に一度は触れたことがあるのが「学習まんが」。学校の図書室に唯一置いてあるマンガ本として、読書が苦手な子どもからも人気だったあの存在。マンガ禁止の家庭でも「学習まんが」なら認めてくれた……なんて読者もいるのでは?

前回記事「『日出処の天子』から『大奥』まで。歴史はいつもマンガで学んできた!」につづき、今回の記事では、学習まんがの魅力と、日本史の愛憎うずまく興味深いエピソードを、作家・漫画原作者の堀田純司さんが解説します。

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7月3日、超実力派のマンガ家さんたちが執筆した「学習まんが 日本の歴史」が発売されました。

「歴史のおもしろさ」というと、人それぞれ、いろんな切り口があると思います。私ごとで恐縮ですが、私(堀田)も今、歴史マンガの企画を進めていて感じるおもしろさは、「歴史上の偉大な人もやっぱり悩んでいた」というところ。

たとえば、鎌倉幕府を開いた源頼朝は、不倫をしてしまいます。妻の北条政子は激怒。浮気相手の家を打ち壊してしまう。頼朝も逆ギレするのですが、彼の後ろ盾は妻の実家だからややこしい。これが幕府を揺るがす大事件に発展してしまいます。
偉い人、凄い人でも、やっぱり私的な悩みがあった。それに正直、毒が入っている人もいれば、優柔不断すぎてダメな人もいる。そうしたところに考えさせられることもあれば、共感してしまうこともあります。

そこでこの記事では「学習まんが 日本の歴史」の刊行を勝手に記念して、超個人的な「日本史ドロドロエピソードベスト3を挙げてみたいと思います。
 

 

その1 現代でも通用する完全なモラハラ夫 細川忠興


細川忠興の妻は、あの細川ガラシャ。美人で聡明な女性として当時も評判だった人です。しかもこの結婚は織田信長のお声がかり。まさに人も羨む、ビックカップルでした。
ですが、ふたりの関係は「本能寺の変」をきっかけに歪んでしまう。ガラシャの父、明智光秀が謀反を起こし滅亡。ここでふつうならば離縁するのですが、忠興は別れずにガラシャを山奥に幽閉した。彼の彼女に対する執着の深さがうががえます。
幽閉時代を経て、ふたりはまた、ともに暮らすようになるのですが、職人が妻の姿を見ただけで首をはねてしまったといいますから、忠興の嫉妬は、はっきりいって異常です。彼は、外面は優秀な武将だったのがまたモラハラっぽいです。
夫の残虐な仕打ちを見てもガラシャは顔色も変えず、かえって忠興があきれたという逸話もありますが、内心では苦悩していたことでしょう。彼女はやがてキリスト教にひかれ、ついには洗礼までうけて「ガラシャ」となります。
歪んだ夫婦の最後のときは「関ヶ原」。忠興は家来に、石田三成が挙兵したらガラシャを殺すように命じて、家を出ていきました。


その2 正直「毒親」入ってます? 淀殿


信長の姪という超セレブの身で秀吉の側室となった淀殿。彼女は豊臣家の跡継ぎ、秀頼を生むことで秀吉亡き後、大坂城の主となった。最強のシングルマザーの誕生です(ちなみに医学の専門家によると、たくさんいた側室の中で彼女だけが秀吉の子を宿す確率はかなり低いそうです)。しかしごぞんじの通り、「関ヶ原」を経て徳川家康が天下を握る。
やがて大阪冬の陣、夏の陣が起こり、彼女は秀頼とともに滅んでしまうのですが、ここで残念に思うのは、とうとう秀頼を戦場に出さなかったこと。
真田幸村ら大坂方の諸将は、秀頼の出陣をのぞんだといいます。しかし淀殿は秀頼を表に出さないまま滅んでしまいました。息子を大事にするあまりかもしれませんが、であればプライドを捨てて、最初から家康に土下座外交をとる道もあったのではないでしょうか。


その3 神なのか人なのか。持統天皇


中大兄皇子(後の天智天皇)が父、その弟の大海人皇子(後の天武天皇)が夫。そして自身も女帝として即位した持統天皇。父、夫の政策を継承し、自身が完成させていったという凄い女性で、天照大神のモデルになったという説もあるほどです。
「日本の国のかたちをつくった」といっていい偉大な女帝ですが、この人にして、実の子の草壁皇子を帝位につけるために、姉の子の大津皇子を死に追いやってしまっている。神と仰がれる偉大な人でも、人間らしい気持ちもあったというところでしょうか。

もちろんここに挙げたことは、日本史のエピソードのごく一部でしかありません。歴史とは続いているもの。
「学習まんが 日本の歴史」では古代から令和の現代まで、凄いマンガ家さんたちが最新の解釈で、歴史ドラマをときに繊細に、ときにド迫力で描き出していらっしゃいます。ページを開いたらいきなり、生き生きとした人物が飛び込んできます。歴史を知る入り口にも。大人の学び直しにも。よろしければ、試し読みをしてみてください。


試し読みをぜひチェック!
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嫉妬深さが身を滅ぼす? 日本史ドロドロエピソード_img0

 

『講談社 学習まんが 日本の歴史』


古代から令和までカバー!アクティブ・ラーニングに対応した「考える力を養う」新学習指導要領に対応した最新歴史まんが。

1「監修者がすごい!」
監修はベストセラー「応仁の乱」(中公新書)の呉座勇一氏をはじめとした新進気鋭の研究者5名を起用。学習まんがで育った世代が、それぞれ専門の時代を監修。最新の研究を反映した内容です。

2「漫画家がすごい!」
作画は、全員メジャー漫画誌にて連載経験のあるベテラン漫画家が担当。表紙から中身まですべて描き下ろしています(講談社漫画賞作家も4名も執筆!)。小学生から大人まで、読んで面白い「漫画としての面白さ」も追求しています。

3「情報量がすごい!」
漫画総ページ数3720ページ! 学習まんがで一番のページ数です(除く別巻)。漫画には欄外すべてに「マメ知識」欄を作成。その数3600本! 圧倒的な情報量を実現しています。単なる暗記はもちろんのこと「何故、その出来事は起こったのか」「その出来事がどのような影響を及ぼしたか」も詳細に描写。アクティブラーニングを意識した「考える力を養う学習まんが」として、中学から大学まで記述式問題にも十分対応できる内容で受験対策としても使えます!

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堀田 純司(ほった・じゅんじ)

上智大学文学部ドイツ文学科卒業。主な著書に『僕とツンデレとハイデガー』(講談社)、『天才を売る 心と市場をつかまえるマンガ編集者』(KADOKAWA)などがある。編集者として『生協の白石さん』(講談社)、『ガンダムUC証言集』(KADOKAWA)などの書籍を企画、編集している。『まんがでわかる妻のトリセツ』(講談社)ではシナリオを担当。日本漫画家協会員。

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