現在、テレビ東京系列で放映中のドラマ「僕はどこから」。Hey! Say! JUMPの中島裕翔さんと若手実力派俳優・間宮祥太朗さんのコンビによる青春異能クライムサスペンスですが、2018年にヤングマガジンで連載されていた同名漫画が原作です。文章を書き写すことで他人の思考をコピーできる小説家志望の竹内薫(中島裕翔さん)と、中学時代の同級生で、弱冠二十歳でありながら講談会系東宮寺組の最年少組長・藤原智美(間宮祥太朗さん)の二人が、ある“仕事”をきっかけに大きな事件に巻き込まれていきます。

“自分探し”なんて、もう手垢が付きまくった言葉ではありますが、それでも人は多かれ少なかれ、いくつになっても「自分とは何者なのか?」「何のために生きるのか?」といった命題を意識しながら生きていると思うのです。

「僕はどこから」の主人公、竹内薫もその一人。小説家志望で、コンビニエンスストアで働きながら作品を書いては出版社に持ち込むものの、編集者の反応はいま一つ。どれも著名な作家のコピーのようで「君には“君”ってモンがないのかい……?」と言われてしまいます。実は薫には文章を書き写すことで、他人の思考をコピーできるという特殊能力があるために、自分独自の作品を書きたくても書けないという苦悩を抱えています。

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薫は若年性アルツハイマー型認知症を患う母との二人暮らしで、一人で母を介護中。そんなある日、母が階段から転落して骨折してしまいます。小説家という夢もままならず、“自分”が何なのかも見えない苦しみの上、母の入院費用も重くのしかかり、精神的に追い詰められた状態に陥ってしまうのです。

 

そんな中、薫のアパートに一人の男が姿を表します。彼の名は藤原智美。20歳にして組を取り仕切るエリートヤクザで、サングラスとスーツ姿にくわえタバコの智美には、若くしてのし上がっただけあって威圧感が漂いまくっています。薫とは無縁の世界の住人のように見えますが、対面した二人はがっちりと固い握手で再会を喜びます。実は二人は高校時代の同級生だったのです。

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智美はただ単に旧友に会いに来たわけではなく、薫の特殊能力を見込んで、ある“仕事”を持ちかけます。もちろんこれはカタギの仕事ではないのですが、大きな報酬が得られるとあって薫の心は揺らぎます。悩んだ末に、薫は智美の話に乗ることにするのですが、お金に目がくらんだからではありません。智美は薫の特殊能力だけでなく、友人として全幅の信頼を置いていました。そして、「人生を変えようぜ」と手を差し伸べてきた智美と行動を共にすることで、いろんなことに行き詰まった現状を打破してみようと決意するのです。

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ちょっとひ弱なメガネ男子と、男臭さ全開の危険な男というコンビ(しかも二人ともイケメン)は、女心をぐっと掴むものがあります。もしも二人が大人になってから出会っていたとしたら友人関係にならなかったでしょうし、コンビニバイトの青年とエリートヤクザになんて、そもそも接点すらないはずです。学生時代も薫は本好きの地味な生徒で智美は不良と、この時から立場は明らかに違っていましたが、ある出来事によって深い信頼関係で結ばれます。「今だったら絶対友達にならないだろうな」という相手となぜか未だに付き合いが続いており、何年も会っていなくても分かりあえる友人はいませんか? 薫と智美もそんな関係性なのかもしれません。

ストーリーがジェットコースターのように展開する中、二人の根底に流れる信頼関係と友情が鍵となって危機を乗り越える場面がいくつも出てくるのですが、そこもまたぐっと来るものがあります。この漫画のキャッチコピーがクライムサスペンスではなく、あたまに“青春”とついている理由も、読み進めるうちにきっと納得できるはず。

また、薫の特殊能力についても漫画ならではの設定と思ってしまいそうですが、あながちそうでもないリアルさがあります。というのも、人には文章の癖があるものですし、行間から漂う何かも確実に存在しています。SNSに投稿した何気ない文章から、自分の本心がダダ漏れだった、なんてこともよくある話。なので、薫がこの特殊能力をどう活かしつつ、一方で“自分”を獲得していけるかというところも見どころの一つです。

状況が二転三転するスリリングさ、男の友情、謎解き、自分探しなどとさまざまな要素がぎゅっと詰まったこの物語。全4巻と、週末のお楽しみ読書にもピッタリのボリュームです。漫画作品としては完結していますが、「もっとこのコンビの活躍が読んでみたかったな」という気持ちに駆られます。3月31日まで「コミックDAYS」で1巻分は無料、2巻まで無料チケットで読めるので、今がチャンスです。

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中島裕翔&間宮祥太朗『僕はどこから』最終回目前!完結済みの原作をチェック_img4
 

『僕はどこから(1)』

著者 市川マサ 講談社

とある特技を持つ、小説家志望の青年。
追い詰められた彼が“自分探し”を始めるとき、
大いなる犯罪の幕が切って落とされる───!!

実力派作家が新境地に挑む、青春異能クライムサスペンス!