パチンコ必勝ガイド」に見る「書き手の熱量」とは


誠に申し訳ございせん!最初に謝罪いたします。
ミモレ読者には、ほとんど縁がない、関係ない、読むこともない、そんな雑誌が私の心を掴んで離さないのです。

その名も「パチンコ必勝ガイド」。

パチンコ必勝ガイド5月号』ガイドワークス

女性誌やファッション誌、文春、新潮、男性誌まで、資料をかねて様々な雑誌を毎月、読みます。その中でもファッションどころか、コロナ禍で何かと話題になったパチンコの雑誌について語るなど、不謹慎だと思う方もいらっしゃるでしょう。いや、いて当然。重ね重ね謝罪。

 

しかし私にとっては、今はすっかり離れてしまったけれど、とても考えさせられた雑誌のひとつなのです。

きっかけは20年以上前。仕事でパチンコの知識が必要とされる場面となった時のこと。当時、20代の私は、そんなもん、知らんがな・・・の世界。
そこでスタッフが「まっ、これで勉強して」
そう言って渡してくれたのが、この雑誌でした。

まず表紙。文字も異様に多いし写真も超荒い。言葉だって意味不明。
それまで読んでいたOggiだHanakoだ、ヴァンテーヌだ、綺麗な写真がずらりと並ぶ、そんな女性誌とは雲泥の差。ページを開くと新台情報に始まり、このリーチが熱い、遠出をしてパチンコを打つ「旅打ち」体験記など、私の生活には、どうでも良い情報満載です。

最初の感想「こんなの読めねーよ」。

しかし、ここは勉強だとパチンコ店に通って実践しながら、新たな号が出る度に、せっせと買うようになりました。オッサンたちが立ち読みしている、その間に紛れ込んで。ああ、嫌だ。

ところが、です。

「確変」、「全回転」、「右打ち」など、いろんなパチンコ用語を知るにつれ、ほんの勉強のはずで手にした、この必勝ガイドに、私はいつしか夢中になっていたのです。

なぜだろう? 
攻略法を知ることが出来たから?
説明が細かかったから?

当時は考えもしなかったけれど、今になって思うのです。
私を夢中にさせたのは、この紙の向こうに、記事を書く「人」を感じたからだと。

当時、編集長だった末井昭氏は、母が年下男とダイナマイト自殺。
東大中退からバチプロとなり、伝説の連載を残しながら、舌がんのため54歳で亡くなった田山プロ。
早稲田大学出身、決まっていた数社の就職を蹴って、アルバイトから後に編集長になった大崎一万発。

濃い、あまりにも濃すぎる面々のオンパレード。
そんな輩が毎号、仕事とプライベート、ごちゃまぜの記事をぶっ込んできます。

「××店で▼▼の台と△時間、結果、すっからかんで編集部へ」
「原稿書きながら、結局、家の実機でオールナイト」というように。

ただ彼らの記事は、どれも一貫していたことがありました。

「パチンコは決して職業ではない、けれど好きだから本気でやっている」

その好きに邁進する汗、愚直なまでの彼らの体温が私を魅了したのです。

雑誌には、それぞれ香りがあります。セレブがまとう上質な香り、生活を大切にするボタニカルな香り、ゴシップが放つ雑多な香り、ナンパ目的のチャラ男の香り、手軽で簡単、家庭料理のいい香り。

いろんな香りがある中で、私が、この雑誌に感じたのは、香りではなく、もっと濃密な汗臭さ。ただひたすら一つのことに、笑ったり泣いたり怒ったり。薄っぺらな紙の向こうから見えてくる、そんな「人の熱量」です。

それは決してパチンコ必勝ガイドのような娯楽雑誌だけではありません。
かつて「暮らしの手帖」が、各社の家電比較という、汗かき企画をやったように、一見、スマートに見える女性誌にも、実は汗を感じるものは多々あります。

例えば「VOCE」のアイシャドウの見せ方。
パレットの横に同じ色の配列で、わざわざシャドウを取り出し、質感まで見せるという他誌にはない、その執拗さ。
例えば「Maybe! 」のお金のインタビュー。
下世話な質問の連打で、芸人、歌人、アーティスト、多種多様な価値観をあぶり出す、その粘着度。

とてつもなく手がかかり、それでいて報われるかどうかもわからない。
そんなことに大真面目に取り組んでいる書き手の情熱が、私は愛しく思えてなりません。
どんなにいろんな良い香りの雑誌が並んでいても、手に取るのは、やっぱり汗の匂いがする、そんな本。

十数年ぶりに、パチンコ必勝ガイドを買ってみました。
相変わらずの細かな文字。懐かしさを感じつつ

老眼で「こんなの読めねーよ」。

昔も今も、突っ込みどころ満載です。

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まさむーさん

食う、飲む、寝る、一気に仕事。そしてまた食う、飲む、寝る。時々、悩んで すぐ忘れる。これが私の特技です


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