江戸時代後期の浮世絵師・葛飾北斎(かつしかほくさい・1760-1849)は、現在の墨田区北斎通り近くに生まれ、約90年の生涯のうちに引っ越した回数は93回(!)ともいわれるものの、そのほとんどを区内で過ごしました。その生誕地にあるのが「すみだ北斎美術館」。北斎をはじめ、門人たちの作品を広く紹介する美術館です。北斎の生涯を実物大高精細レプリカで見る「AURORA(常設展示室)」の他、さまざまなテーマで企画展が開かれます。

この夏の企画展「大江戸歳事記」展は、肉筆画や版本を通じて江戸の暮らしを身近に知ることのできる展覧会です(この展覧会は新型コロナウイルス感染症の感染予防・拡散防止のため、会期が変更になりました)。

 

茅の輪、七夕、盆踊り⋯⋯江戸のイベントを知る

葛飾北斎『富嶽百景』三編 茅の輪の不二
すみだ北斎美術館蔵

一年の半分が無事に終わったことに感謝し、災厄の原因となる罪や過ちを祓い清める大祓(おおはらえ)。6月の大祓を「夏越の祓(なごしのはらえ)」と呼び、後半の健康を祈願します。

夏越の祓では「茅の輪の不二」にあるような大きな茅の輪が据えられ、「水無月の夏越の祓する人は 千歳の命延というなり」と唱えながら輪をくぐります。今年はとくにその意味を考える夏になりました。

葛飾北斎『富嶽百景』初編 七夕の不二
すみだ北斎美術館蔵

七夕には、前日から竹に短冊などをくくりつけて屋上に立てました。「七夕の不二」では家々の竹の向こうに富士山が聳えています。

葛飾北斎『画本狂歌 山満多山』 中
すみだ北斎美術館蔵

もともとは女子が手芸や裁縫などの上達を祈った乞巧奠(きっこうでん)の行事が、機女(たなばたつめ)の伝説と結びつき、七夕の行事になったと言われています。牽牛と織女の星が、年に一度天の川を渡って出会う夜。この日は素麺を食べる風習もありました。

葛飾北斎『一筆画譜』 盆踊
すみだ北斎美術館蔵

北斎が指南書として描いた『一筆画譜』の中にある「盆踊り」。ひと筆で描かれた踊り手はまるで今、江戸の街角から現れたような動きが見事ですね。祈りを込めた踊りは祖先の霊を供養するためのものです。


ほかにも七草、雛祭り、重陽、顔見世狂言といった風景から、物売りの声や江戸のざわめきが聞こえてきそうな「大江戸歳事記展」。北斎が生きた江戸時代の四季のイベントに焦点を当て、北斎や門人たちが描いた当時の風俗を紹介しています。


大江戸歳事記展

会期:2020年6月30日(火)~8月30日(日)
※前期6月30日(火)~8月2日(日)、後期8月4日(火)~30日(日)
会場:すみだ北斎美術館(墨田区亀沢2-7-2)
開館時間:9:30~17:30(入館は17:00まで)
休館日:毎週月曜日 ※ただし8月10日(月祝)は開館、翌11日(火)休館

 

チケット読者プレゼントのお知らせ
15組30名様に「大江戸歳事記展」鑑賞券をプレゼント

東京・すみだ北斎美術館で開催中の「大江戸歳事記展」(2020年6月30日~8月30日)の観賞券をプレゼントいたします。

応募締め切り:7月30日(木)〜11:59まで
●応募にはmi-mollet(ミモレ)の会員登録(無料)が必要です。
●プレゼントのご応募は、1回までとさせていただきます。
●当選者の発表は賞品の発送をもってかえさせていただきます。

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また、すみだ北斎美術館初の公式BOOKとして、『THE北斎 冨嶽三十六景ARTBOX』が発売になりました!

『THE北斎 冨嶽三十六景ARTBOX』

著者 すみだ北斎美術館(奥田敦子) 2200円(税別) 講談社

至宝「冨嶽三十六景」シリーズ46点を完全収録、初の公式BOOK!

海外で最も有名な日本絵画とも言われ「Great Wave」として人気の「神奈川沖浪裏」、「赤富士」として親しまれる「凱風快晴」⋯⋯。すみだ北斎美術館所蔵の「冨嶽三十六景」46図をすべてオールカラーで紹介する初の公式本。豊富な参考図版とていねいな解説、クローズアップで見る彫り、摺りの技。天才・北斎の、技(テクニック)と着想(イマジネーション)ここに極まれり!

奥田 敦子
東京学芸大学大学院博士課程修了。太田記念美術館主任学芸員を経て、すみだ北斎美術館の開設に準備段階から関わる。現在、すみだ北斎美術館主任学芸員として、開館記念展ほか多数の展覧会の企画開催。国際浮世絵学会理事。著書『広重の団扇絵 知られざる浮世絵』(芸艸堂)のほか、葛飾北斎・妖怪・花火などに関する論文・解説多数。

『THE北斎 冨嶽三十六景ARTBOX』のほか、料理、美容・健康、ファッション情報など講談社くらしの本からの記事はこちらからも読むことができます。
講談社くらしの本はこちら>>

構成/からだとこころ編集チーム