新型コロナウイルスの感染者数が再び増加傾向を見せ、緊張感を増している方も多いかもしれません。特に、持病をお持ちの方やご高齢な方にとって、その緊張感は何倍も高いものと想像されます。自分に持病がなくとも、実家の親族には「自宅からなるべく出ないように」と声をかけていらっしゃる方もいるかもしれません。

SNSなどでは、「高齢者を閉じ込めて若者で経済を回すべきだ」というような声も聞かれます。あるいは、「高齢者や持病を持っている人はそもそも他の理由で命を落とすリスクがあるのだから、経済を台無しにしてまで守る必要があるのか」というような目を覆いたくなるような意見も見られます。

このような世論のある中で、実際に閉じこもって自宅から出ないという高齢者に私自身も数多く向き合ってきました。そんな経験を経て、「高齢者は閉じこもるべき」と押しつけるような意見に対して、私は少し違った見方をしています。ここではそんな見方をご紹介したいと思います。

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高齢者の新型コロナウイルス感染症リスク


まずここで、改めて年齢による感染症のリスクについて、おさらいをしておきたいと思います。

重症化ということに関していえば、中国の分析で、入院率が年齢とともに増加することが報告されています(参考1)。20歳代では1%、50歳代では4%なのに対し、80歳代では18%に増加することが報告されています。

また、致死率にも如実に年齢による影響が反映されており、全体の致死率を2.3%と報告した研究の中で、70歳代では8%、80歳代では15%に上ったことが報告されています(参考2)。別のイギリスでの分析によれば、50歳代と80歳代で比較すると感染した際の死亡のリスクが約20倍であったことも報告されています(参考3)。

このように、年齢とともに、重症化や死亡のリスクが上昇することが分かっており、やはり重点的に守らなければいけないのは高齢者世代だということが見えてきます。

もちろん例外を挙げればキリがないと思いますが、実際に病院で仕事をしていると、持病を持った高齢患者さんは自分ごととして不安や恐怖を感じられ、感染対策を入念に行っていらっしゃるのがよく伝わってきます。「私は感染したら死んでしまうと思う。」そんなストレートな感想も多く聞かれます。

実際にそういった患者さんの声を伺ってみると、多くの方がリスクを強く感じ、外出を控えたり、家族や友人との面会を断ったりされていることが分かります。そのような状況から、医療的な側面で二つの問題が浮き彫りになってきています。

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