東京都で100人を超える感染者が連日確認されています。感染者が増加傾向を示す中で、緊急事態宣言中の増加との違いはどういったところにあるでしょうか。山田悠史先生による過去の記事と合わせて参考にしてください。

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「第一波」と、なにが違うのか


以前の状況と比較をする上で、見逃せない要素の一つが検査体制の拡充でしょう。身近な例を挙げれば、私の所属施設には当時はPCR検査機器がありませんでした。このため、PCRの提出には地域の保健所の承認が必要で、医師ではなく保健所が認めた患者のみにPCR検査を行い提出しなければならないという状況でした。中には、医師が必要と判断しても保健所から賛同を得られず、検査が提出できない事例があったことも事実です。

一方、現在は私の所属施設にも自前のPCR検査機器があります。このため、現在は「迷ったら出さない」から「迷ったら出す」になっています。

このように、検査が拡充してきた今、4月の頃の100人と今の100人が持つ意味は少し異なると考えられます。そもそも前提として、この「感染者数」は全数調査ではありません。このため、実際の感染者数というのは想像力を働かせるしかありませんが、4月の100人の時には実際には500人の代表だったのかもしれませんが、現在はより閾値が低く検査が行われるようになり200人の代表なのかもしれない、ということになります。
 

 

再び、医療崩壊の心配はあるのか?


もう一つ注目すべき点として、入院患者数の違いがあります。当時は、感染者用の入院ベッドが埋まり、ベッドの不足が叫ばれました。一方で現在は、ベッドは埋まっているどころかガラガラに近い状態です。すなわち、「医療崩壊」と呼ばれるような状態には程遠い状況にあります。

この違いも、一つは先の検査の話で説明できるでしょう。4月とは異なり、無症状や軽症な患者にも積極的に検査を行っていますから、相対的に軽症者が多い状況にあります。

加えて、4月ならばそういった患者も全て入院していましたが、現在は軽症者のための隔離施設が多数準備されており、感染したからといって必ずしも入院しなくて良い環境が整備されています。その分、医療機関のベッドには空きが目立つのです。4月と同じように全ての感染者を入院させていたら、すでにベッドは埋まりつつあったかもしれませんが、そうではありません。

また、入院期間、隔離期間の短縮も一役買っていると思います。過去にはPCR検査で2回の陰性が確認されるまで、既に元気な感染者であっても3週間も4週間も入院が継続されるという状況がありました。しかし、現在はそのような感染者は10日で退院可能となっています。

各医療機関で感染者が入院できる病床が拡充されたことも併せて、そもそも医療機関側のキャパシティは足し算の意味でも引き算の意味でも4月とは比べ物にならないほど大きくなっていることはここで特筆しておいても良いでしょう。

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