日本生まれ、日本育ちながら、ニューヨークのスピーチ大会を5連覇、世界トップ100入を果たしたリップシャッツ信元夏代さん。スピーチで磨かれた「ストーリーテリング」の技術を活かし、現在は事業戦略コンサルタントとして、また全米のプロフェッショナルスピーカーとして活躍されています。その「ストーリーテリング」の方法を紹介する新著『世界のエリートは自分の言葉で人を動かす』が6月15日に発売。

今回は、〔ミモレ編集室〕で信元さんへのオンライン公開取材が実現!
プロフェッショナルスピーカーを目指すことになったきっかけや、スピーチ重要性、相手の心に届くスピーチのコツをお伺いしました。

人生そのものが物語!ストーリーのあるスピーチのススメ_img0
 


スピーチ嫌いを克服し、プロの道へ


ーーはじめに、スピーチの道へ進むきっかけについて教えて下さい。

振り返ってみると「あれが原点だった」と感じているのが、MBA(経営学修士)取得にあたり、ニューヨーク大学へ書類を申請していた時のことです。
MBA取得のコースに通うには、審査を通過する必要がありますが、合格できずに補欠要員となっていました。そこで、今までの自分のキャリアを資料にまとめ、面接担当者へプレゼンをすることにしました。
アポもない状態で、面接官のいる(と、思われる)オフィスへ行き、偶然を装いながら待ち伏せしたのです。その時「短い時間で、自分がいかに役立つ人間かを伝えなければいけない」と本能的に感じました。
そんな中、幸運にも面接官の1人が部屋から出てきたので、「偶然ですね!!」と近づいていき「(自分の強みは)MBAでも絶対に役に立つので、私を合格させるべきです」と短く伝え、オフィスを後にしました。そしてその2日後、合格を言い渡されたのです。

その際、自分では気がついていませんでしたが、大事なことを2つ行っていました。①メッセージを徹底的に削ぎ落とす②彼らが興味を引くような「聞き手視点」で話をする、という点です。

これが『良いスピーチは必ず結果に繋がる』とスピーチの力を信じた瞬間でした。

 

ーースピーチは元々得意だったのですか?

とんでもない!MBAへ進んだ後も自己紹介をするだけで汗びっしょり、授業でのプレゼンは丸暗記でやり過ごし、苦手なまま卒業しました。
その後会社を立ち上げ、長時間人前で話す機会も多くなり、ようやくスピーチを学ぶ気になったのです。
レッスンに通い、何度かコンテストに出場していた頃、聴衆の1人が私のコーチを申し出てくれました。その出会いが、私の中のスピーチの観念を大きく変えることになります。

それまで、自分の全てを出し切ることが良いと思っていましたが、そのコーチに言わせると「メッセージが多すぎる」。
その時の教えである『本当に大事なメッセージは絞り込む』は衝撃であり、今回出版した本のベースにもなりました。

ーーそれがきっかけでプロスピーカーを目指したのですか?

プロを目指したきっかけは、乳がんを患った経験です。
告知を受けた翌日は、コンテストの初日でした。周りの人たちは辞退するべきだと言いましたが、私は出場を決めました。
スピーチとは、何百人の人たちと同時多発的に心がつながるものです。聞き手の心が動くとそれが返ってくる。そんな相互に心が行き交う感覚は、私にとっても癒やしであり、こんな時だからこそ自分にしか語れないストーリーを届けたいと思いました。

また、告知の際に頭をよぎったのは、愛する家族のことはもちろん、「ネタになるな」と。
その時「自分はスピーカーなのだ」と認識しました。
それから手術と治療を受けながらコンテストに出場し続け、プロとしてデビューしました。


ーーまさにジェットコースターのような人生ですね。

ジェットコースターのようなストーリーは人を惹きつけます。人生そのものがストーリーであり、語らないという選択肢はないと思いました。

人生そのものが物語!ストーリーのあるスピーチのススメ_img1
よく通る声と豊かな表情がとても印象的でした。「スピーチとは聞き手と繋がることのできるツール」というお話にとても感銘を受けました。筆者はスピーチ未体験ながらも、いつの間にか「スピーチをしてみたい!」という気持ちが芽生えており、今では興味津々です。

続いては、全くの未経験でも実践可能な「スピーチのコツ」について伺いました。


相手を動かすスピーチとは

ーー未経験でも実践できる、スピーチのコツを教えてください。

スピーチというのは、相手を動かすことです。
相手を動かす=説得させるには、古代ギリシャの哲学者、アリストテレスが提唱した3つの要素があり、それは「ロゴス(論理)」「パトス(感情)「エトス(信頼)」です。

まず、ロゴスですが、情報の整理が鍵となります。情報は盛り込むのではなく、整理し、必要ないものは削ぎ落とすことで達成できます。

続いてパトス(感情)です。人はロゴス(情報)だけでは動きません。何が必要かというとストーリーです。良いストーリーは心の扉を開ける鍵であり、人々の共感を得ることができるのです。

最後にエトス(信頼)です。
信頼を得るには話し方が重要です。同じ言葉でも言い方一つでガラリと変わります。一つ一つの言葉に感情が乗っていて重みがあるか、という点が重要で、重みのないスピーチは「本当にそう思っている?」と相手に思わせ、信頼感とのギャップが出てしまいます。

ーー書くことと話すこと、共通点はありますか?

双方とても似ていると思います。相手を引き込む手法は共通していて、冒頭が重要です。スピーチは最初の7秒で印象が決まりますが、書くことも最初の数行で判断されるので、その点が似ています。

また、長いストーリーには波が必要であり、ワクワクを持続させることが重要です。感情を高ぶらせるような展開から少し落ち着く、といった手法を繰り返すと人は引き込まれていき、これは書くことにも当てはまります。


インタビューの後は、いざ実践!

とても分かりやすくスピーチのコツを教えていただきましたが、実践するとなると話は別。
次回は、教えていただいたコツを押さえて実際にインタビュアーがスピーチを行い、信元さんのコーチングを受けた様子をお伝えいたします。信元さんの鋭い眼が光ります!
どうぞお楽しみに。

人生そのものが物語!ストーリーのあるスピーチのススメ_img2
 

アイコン画像

ちささん

はじめまして!ちさと申します。 好きなこと:インテリアやDIY、ヴィンテージ雑貨。 ミモレ編集室に入った理由:「ミモレが好き」は勿論!ですが、2年ほど前からブログを始め、上手く文章を書けず煮詰まっていました。そんな時にここで文章の書き方を学べると聞き、興味津々で入会しました♪


〔ミモレ編集室〕2期生入会受付中! 詳細はこちらから>>

                          インタビュー/代麻理子