モデルとして大きな成功を収め、息子は天才経営者と世界の称賛を浴びるなど、華やかな面にスポットが当たりがちなメイ・マスクさんですが、実はこれまでの道のりは決して平坦なものではありませんでした。21歳で結婚した夫から、壮絶なDVを受けていたことを本書の中で告白しています。

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幼い3人の子どもたちに囲まれたメイ・マスクさん。

「夫は、わけがわからないことで残酷になった。陣痛が5分おきになるまで、夫は病院に連れていってもくれなかった。『おまえは怠け者で弱虫なだけだ』。そのあと病院に行き、自然分娩で激しい陣痛に苦しんでいたとき、看護師が夫に言った。『腰をさすってあげてください。少し楽になるから』。夫はこう返した。『どういう意味だい? 腰をさすってもらいたいのはこっちさ。この椅子を見てみろよ。おれは帰る。生まれる5分前に電話してくれ』。そんな男だった。
子どもができたあと、わたしはモデルの仕事をしていなかった。モデルに戻れるとは思っていなかった。たとえモデルの仕事を頼まれたとしても無理だった。なぜなら、あざがあったから」

 

地獄の日々から逃れるために31歳の時に夫と離婚し、シングルマザーとして3人の子どもを育てることを決意。大学ではモデル活動と並行して栄養学を勉強し、卒業後は栄養士・食生活カウンセラーとして働いていたことから、夫から逃れ移り住んだ町では自ら事務所を開業。さらにモデル活動も再開しますが、その生活は苦しいものでした。

「お金にはいつも苦労していて、住宅ローンを払うだけでも大変だった。子どもたちには普通の服より安い学校の制服を着せた。自分にはいい服なんて買わなかった。買うのは古着だけ。
わたしたちは一度ならず、狭いアパートメントで暮らすことになった。子どもたちもわたしも、ピーナッツバターのサンドイッチばかり食べた。豆のスープが続いた。だから、何? わたしたちはお互いに愛し合っていた。一緒にたくさん楽しんだ。大切なのはそれだけ」

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ワーキングマザーとして必死で働く母の背中を見て育った3人の子どもたち。大人になったいま、末っ子の娘・トスカは映画監督でプロデューサー、長男のイーロンは宇宙開発事業を手がける世界的経営者、次男のキンバルはレストラン業界で活躍する起業家に。

苦しい生活を送りながらも、夫から逃げるという道を選んだことに後悔はないと断言。本来なら回想すらしたくないという過去を本書に綴った背景には、DVサバイバーとしてのある思いが込められています。

「自分の体験について語ったのは、もしあなたが暗い状況に陥っているとしても、抜け出す道があると知ってほしいから。あなたを傷つける人がいて、死にたくないなら、逃げなければならないと知ってほしいから。10年間、わたしは結婚生活で虐待されて苦しんだ。別れてみると、まるで暗い雲が晴れて、希望の光が射してきたかのようだった。どれほど絶望的に思えても、絶対に逃れる道はある」