ヘアライターさとゆみ(佐藤友美)の新連載。ニュースな女性たちのヘア&メイクをチェックするコラムです。今回は、Netflixで話題の『愛の不時着』をウォッチします。

『愛の不時着』に考える、選べる人生vs選べない人生_img0
 
【ドラマ解説】
韓国の大財閥の末娘、ユン・セリ(ソン・イェジン)は、自ら経営するファッションブランドで成功をおさめ、長兄、次兄を飛び越え、財閥の後継者に選ばれる。ところが、突風によるパラグライダーの事故で、ユン・セリは北朝鮮に不時着。北朝鮮の将校、リ・ジョンヒョク(ヒョンビン)に匿われることに。38度線を超えて育まれる、極秘のラブストーリー。
 

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選びすぎた女と、選べない男。対極の2人が出会って……(ネタバレあり)


ヘアライターのさとゆみです

先々週に予告してから、2週間。『愛の不時着』、1.5時間×16話、やっと完走しました。
私の周りでもどえらい話題になっていたのですが、前情報を避けながら見たこともあって、私はピュアに楽しめました。

いや〜、アレですね。これ、いろいろ究極がすぎるドラマでしたね。

われわれ、「コロナで好きな人と会うのも大変……」とか、贅沢な寝言、言ってる場合じゃないですね。もう、あっちは命がけですからね。会うだけで何度も射殺されかけますからね。究極の遠距離恋愛。
あと、「最近、彼の気持ちがわからない……」とか、生ぬるいこと、言ってる場合じゃないですね。あっちの皆さんはガチで「相手が生きているかどうかすら、わからない」ですからね。究極の消息不明。

ユン・セリとリ・ジョンヒョクの困難を考えたら、たいていのことは我慢できるんじゃないか。そんな謙虚な気持ちになるくらい、制限だらけの世界のお話。
ときおり目の前に選択肢が提示されたとして、「相手が死ぬか、自分が死ぬか」みたいな究極の二択。いや、過酷すぎるだろ。

そうそう、このドラマ、「選択」がひとつのテーマだと思ったんですよね。

欲しいものはなんでも選べる韓国の富豪、ユン・セリ。でも彼女には摂食障害があり、不眠があり、いつも孤独で、人を愛することができない。
そんな彼女が、「選択肢がない」北朝鮮に不時着してはじめて、食事の美味しさに気付いたり、人を愛することを知ったりするのが、とても印象的で。
選べるものがほんの少ししかない場所では、人は与えられたもので精一杯なんとかする。そういう人生は、もちろんタフだし苦しい。時代に逆行している。
だけど不謹慎承知でいうと、選べない人生は、迷いがない。ユン・セリが北朝鮮でどんどん自分の心を解放していくのは、「選択肢がない」ゆえの解放だった気がするんですよね。
 

『愛の不時着』に考える、選べる人生vs選べない人生_img1
選べないことでいうと、北朝鮮では髪型のバリエーションも限られていた。往年の工藤静香さんを思い起こさせる「さよならヘア」、最高でしたね。日本ではこれ、サーフヘアと呼ばれていました。ハンカチ一本結びのシーンは個人的に最萌え。


その一方、多くのことが自分の意志で選択できない国、北朝鮮の将校、リ・ジョンヒョクは、ユン・セリと出会って、はじめて自分の意志で人生を「選択」しようとする。それまで、死んだように生きていた彼の命が、そこではじめて明るく燃え始める。

選択肢が多すぎる、飽食の国(韓国)のユン・セリと、
選択肢がなさすぎる、枯渇の国(北朝鮮)のリ・ジョンヒョクが
その両極から歩み寄って絡まっていく感じが、時代を象徴していて、とてもドラマティックでした。

そう考えると、ユン・セリが代表を務める会社の社名が「セリズ・チョイス(セリの選択)」だったのも、しみじみ染みます。

 
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