まだ暑い日が続きます。報道も新型コロナウイルス関連の話題から、熱中症の話題が増えてきました。本記事では、残暑を熱中症なく乗り切るために、知っておくとよい知識をお伝えしたいと思います。
体温を下げる4つの方法
熱中症を理解するために、まずは人間の体温調整の仕組みについて簡単に理解をしておきましょう。
人間の体温は36度~37度程度にとても綿密にコントロールされています。4度~5度程度までの上昇であれば体はなんとか耐えられますが、それ以上の体温上昇があると、たちまち臓器の障害、そして命を落とすことにまでつながってしまうこともあります。このため、人の体は、体温を下げる仕組みを複数持ち合わせています。
そのうち、最も重要で強力な仕組みが「蒸発」です。水が蒸発する時、熱は放散されます。例えば、暑い環境で運動をしているとき、たくさんの汗をかきます。その汗が皮膚の表面から蒸発していく過程で体温を下げていってくれるのです。逆に、衣服の中に汗がこもってしまっているような場合には、この蒸発のメカニズムが働かなくなり、体温を下げにくくなってしまいます。
そのほかに、熱放射、対流、熱伝導という仕組みがあります。これらの仕組みは、それぞれ電磁波、流体、物体を通して、体温が環境よりも高温だった場合に働く仕組みです。
熱放射は直接の接触や空気の動きを必要としないエネルギーの移動です。一方、対流は体の上を移動する空気や水への熱の放散、熱伝導は体に接した冷たい物体への熱の放散です。例えば、扇風機やうちわで体が冷えるのは対流の良い例、氷枕で体を冷やすのは熱伝導の良い例です。
熱中症の症状。立ちくらみ、筋肉がつる、頭痛やだるさ、吐き気…。痙攣や意識を失うことも
このように、体温が上がりすぎないように、熱を逃す仕組みを我々は持っているのですが、熱中症が生じる時にはこれがうまく働かなくなってしまっています。
ここで、とても蒸し暑い環境に身をおいた自分を想像していただきたいと思います。そもそも気温が体温に近い、あるいは上回ってしまった環境にいて、氷など冷やすものも何も持っていなければ、先ほどご紹介した熱放射、対流、熱伝導の3つの仕組みは全く働く隙を与えてもらえません。また、湿度が高い環境では、頼みの綱、蒸発のメカニズムすら機能しなくなります。湿度が75%を超えると、蒸発メカニズムは全く働かなくなることが知られています(参考1)。
これらが相まって、体の熱を下げるメカニズムが働かなくなるとき、熱中症を発症してしまうのです。
熱中症を発症すると、軽ければ立ちくらみや筋肉痛、筋肉のつりなどの症状が出てきます。もう少しひどくなると、頭痛やだるさ、吐き気なども出ることがあります。重症になれば、痙攣や意識を失うといった症状が出てしまい、体温も40度を超えた状態になります。
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