うがい薬で話題の「インサイダー取引」が実はそんなに儲からない理由_img0
写真:ロイター/アフロ

大阪府の吉村洋文知事が、新型コロナウイルスの感染拡大防止にポビドンヨードを含むうがい薬が有効であると説明したことに関して、一部からその情報が事前に漏れており、インサイダー取引が行われたのではないかとの声が上がっています。吉村氏はインサイダー取引の噂が出ていることについて、インサイダー取引は犯罪であり、軽々に口にするべきではないと述べています。

 

今回の件について情報漏れがあったのかは分かりませんが、もしそうした事実があれば、捜査が行われるでしょうから、吉村氏が指摘しているように、この件について噂レベルで議論してもあまり意味はないでしょう。しかしながら、インサイダー取引に関する噂が出る背景については知っておいて損はありません。これから投資で資産形成をしたいと思っている人の場合はなおさらです。

インサイダー取引というのは、よく噂にはなりますが、実際にインサイダー取引が行われるケースは希です。その理由は、インサイダー取引というのは、一般的なイメージとは裏腹に、それほど儲かる取引ではないからです。しっかりとした理論に基づき、まっとうに投資した方が圧倒的に効率がよく、本当に株式投資で利益を上げている人にとって、インサイダー取引は(犯罪であるという話はとりあえず横に置いておき)まったく魅力的ではありません。

インサイダー取引は、企業の新製品の情報や官庁の規制といった内部情報を事前に入手しておき、該当する銘柄を買い、正式発表で株価が上がったところで売却するといった不正な取引です。投資の経験が少ない人は、こうした不正取引は儲かると思っているかもしれませんが、実はそうでもないのです。株価の動きを日頃から見ていれば分かることですが、内部情報が正式発表になったからといって必ず株価が跳ね上がるとは限りません。また、入手した情報が本当であるという保証もありません。将来の不確実生に賭けるという点では、実は一般的な投資と大差はないのです。

しかも、インサイダー取引の対象となる銘柄は、取引量が少ない小型株であることがほとんどです。巨額の取引がある大手企業の株式では、ちょっとしたニュースで株価が大きく動くことはあり得ません。一方、小型株は小さなニュースでも株価が大きく上昇する可能性がありますが、予想が外れた場合には、下落幅も大きくなります。取引量が少ないことから自由に売れず、損失を抱えるリスクも覚悟しなければなりません。

 
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