初心者の私が随筆集を書けたのは、大好きな読書のおかげ

「作家・浜島直子でお願いします!」というリクエストに応えた、ユーモアとサービス精神の塊“はまじ”らしい一枚。

はまじの書く世界はどのお話も、読み終わった後に、静けさや優しさ、温もりなど心地の良い余韻が残ります。「これまで一度も文章の書き方を学んだこともなければ、作文もブログも苦手」とは到底思えません。話を伺うと、選ぶ言葉の巧さは、どうやら趣味の読書が影響しているようです。

 

はまじ「本が大好きで、とくに小川洋子さんのファン。彼女の『まるで思慮深くこちらを見つめているように』とか『そっと佇んで寂しげにしていた』といった、まるで物に魂があるかのような表現がとても好きなんです。小川洋子さんをリスペクトする気持ちで、1箇所だけ『思慮深い』という言葉を使いました。

時間という湖に母というボートを浮かべ、二人でそっと乗り込む。向かい合い、ぽつりぽつりと出てくる言葉はどれも子供への愛情に満ち溢れていて、厳しさのかけらもない。あの時のあの言葉さえも、このボートの上では舞い落ちる桜の花びらのようにつつましく、思慮深い。
――「蝶の粉」かくかくしかじか母物語より抜粋

はまじ「ラジオやテレビでゲストの方の書籍など資料として読む本は、多くの情報を得ることができます。コミュニケーションツールとして、私の引き出しを満たしてくれるので、私にとっては欠かせないものですが、今回の随筆集はプライベートで選ぶ本の影響が大きく出たように感じます。どちらも大切にしていきたいし、必要だと思っています」
 

あの頃の一瞬をタイトルに


まるで小説のような『蝶の粉』というタイトルは、どこから生まれたのでしょう。

そんなことよりも、目の前のキラキラした宝物を追いかけるのに夢中だったのかもしれない。追いかけているうちに、真実は蝶の羽に乗って粉となり消えた。
――「蝶の粉」蝶の粉より抜粋

はまじ「私の人生に影響を与えたMちゃんについて書いたのが最初のお話、『蝶の粉』です。なんてことのないエピソードですが、キラキラとしていた少女時代、幻のように消えてしまったあのひと時を「蝶の粉」と表現しました。自分でもすごく気に入ったフレーズだったし、この一冊を表現しているのではないかと思ってタイトルにしました」

こうして丁寧に言葉を選び、2年という歳月をかけてはまじが書き綴った『蝶の粉』。“エッセイ集”ではなく、あえて日本語の“随筆集”として世に送り出されることになりました。


書き終えた今、思うこと


はまじ「締め切りがないって最高、ワインも美味しい〜(笑)! 書くことに関してはまだまだひよっこ。だから今は、普段使っていない筋肉を使って、全身が筋肉痛のような感じです。それを、ゆっくりと気持ちよく伸ばしてストレッチしているところなので、すぐに次を書きたい!とは言えないけれど、新しい世界の扉を開けている感じがしたので、チャンスがあればまた挑戦したいなと思います。

文章のプロでもない私が書いた一冊ですから、それを読んでもらえるだけでも嬉しいですが、この一冊を通して、ご自身の子どものころの風景や、お母さんとのやりとり、食卓の映像を思い出してもらえたり、はまじ、仕事でへこたれても頑張ってるみたいだし、私も頑張ろうかなと、少しでも思ってもらえたら幸せです」

次回ははまじの大切な家族、保護犬のピピちゃんとの出会いや一緒に過ごす毎日のことを伺いました。

問い合わせ先/
ジャーナル スタンダード ラックス 表参道店 tel. 03-6418-0900
プティローブノアー tel. 03-6662-5436

<新刊紹介>
『蝶の粉』

浜島直子
ミルブックス 
定価 1300円(税別) 装画 ますこえり

「どうしてだろう、私は正しかったはずなのに」 これらは何ら特別ではない、誰にもで起こりうるささやかなこと。浜島直子、待望の初随筆集。瑞々しい筆致で綴った、 書き下ろし18篇を掲載。



撮影/目黒智子
スタイリング/亀甲有希
ヘア&メイク/福沢京子
取材・文/笹本絵里
構成/幸山梨奈

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