樋口若葉選手はトリプルアクセルを
公式戦で初めて着氷!

フィギュア・町田樹さんの名解説に騒然!選手への愛とデータ量がハンパないと話題な理由_img0

昨年の全日本選手権で2位になり、2シーズンぶりの世界選手権への出場を決めたものの、中止。悔しい思いをした樋口新葉選手。昨季から引き続きのFS『ポエタ』冒頭に組み込んだトリプルアクセルを、オーバーターンにはなったものの、公式戦で初めて片足で着氷。町田さんも「完璧です!」と。グランプリシリーズのNHK杯に出場予定。写真:長田洋平/アフロスポーツ

さらに、選手それぞれのコレオやステップシークエンスの見どころも解説。
たとえば、樋口新葉選手のFS『ポエタ』では、後半のステップシークエンスでのスキルと情熱的な踊りに言及。若手の場合、早いテンポの音楽に合わせようとすると、エッジワークが雑になりがちだが、樋口選手は「足元は正確にステップを踏みながら、上半身は情動的に踊ることができる。これはなかなかできることではありません。若手スケーターが手本とすべきステップシークエンス」と。


一方、FS『トムとジェリー』を滑った横井ゆは菜選手のプログラムでは、中盤のステップシークエンスを見どころに挙げた。効果音に合わせたユニークな振り付けが彼女らしいとしつつ、「もうちょっと加減速をつけてステップを踏むと、もっとよくなる」とアドバイスも。

日野龍樹選手のFS『トゥルーマン・ショー』では、左回りのステップが多い中で、右回りにチャレンジしているサーキュラーステップの難しさに言及。これ、なんの説明もないと、観戦初心者はほぼ気づかない箇所。こういうところをスルーせず、きちんと解説してくれれば、ステップシークエンスの楽しみ方もわかってくるというものです。

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昨年の全日本選手権で5位入賞した横井選手。新プロのFS『トムとジェリー』は、ちょこまかした動きを入れながら、リンクを全力疾走で往復する、猛烈に体力がいりそうなプログラム。それでも“女優”と評される演技力でコミカルに踊り切った。グランプリシリーズNHK杯に出場予定。 写真:長田洋平/アフロスポーツ

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ずっと使いたかったという『映画「トゥルーマン・ショー」より』をFSの曲に選んだ日野選手。町田さんいわく、ピアノの旋律が淡々と流れるモノトーンな音楽ゆえ、どれだけ情感や物語性を込められるかで見え方が変わってくるプログラムだそう。ちなみに、日野選手はロシア人の父を持つ、吉本工業所属のフィギュアスケーターで、兄は東大卒の落語家・古今亭菊一さん。 写真:長田洋平/アフロスポーツ

また、曲調が変わる場面では、必ず事前にアナウンス。
そこがどういうパートで、どう滑ると演技構成点が伸びてくるか、などにも触れていました。たとえば、「今年の全日本選手権ではメダル争いに絡んでくるかもしれません」と評した山本草太選手。3本組み込む4回転ジャンプがクローズアップされがちですが、彼のスケートの醍醐味であるスケーティングのうまさにも言及。
徐々に音楽が雄大になっていくプログラム後半で、どれだけそれをのせていけるかも見どころだと解説しました。観戦歴の長いファンなら周知のことかもしれないですが、これを聞いて、“スケーティングのうまさ”がなんとなくでも感じ取れれば、アイスダンスの観方などにも、つながっていくはず。

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ノービス時代に滑った曲『ドラゴン』を今季のFS(フリースケーティング)に選んだ山本選手。拠点を大阪に移し、子供のころに師事していた大西勝敬コーチに再び師事、北京五輪を目指している。大西コーチといえば、町田さんがソチ五輪出場を叶えた時に師事していたコーチですね! グランプリシリーズNHK杯に出場予定。 写真:長田洋平/アフロスポーツ

そして、これだけの情報量を入れながら、まったく演技の邪魔をしないのが、町田解説の不思議! 語り口が落ち着いているからなのか、声のトーンか、はたまた、講義の賜物か。この放送で初めてフィギュアスケートを観た視聴者がいたとしたら、幸せ者です! きっと、この一日だけでかなり観る眼が養われたはずだから。「研究者になります」と、第九衣裳で競技を引退してから、もうすぐ6年。「研究者なんて、いばらの道」的な声もあったけれど、どうして、有言実行。それどころか、予想をはるかに超えるスピードで、「フィギュアスケートをブームではなく、文化に」すべく、まい進する町田助教。今後も、見る、聞く、読む機会が目白押しなので、フィギュアスケートへの知識を深めたい方は、ぜひ一度。町田ヴォイスは、秋の夜長にぴったりです。

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『スポーツアカデミー2020・第3回』
町田樹さんが講師として登場。自らの経験を元に、スポーツ研究の可能性について、約45分間にわたって語ります。
11月9日(月)~16日(月) 動画配信。最終日の16日(月)19:00 ~ 20:00は、ZOOMウェビナーを通してリアルタイムで質疑応答(質問は事前に受け取ったもののみ)。
会費:1000円。

そのほか、J SPORTS4で、10月20日(火)から、町田さん自ら企画、構成を手がける初の冠番組『町田樹のスポーツアカデミア』がスタート。ワールドフィギュアスケート20周年記念講演会『マルチメディア時代のフィギュアスケート』11月23日(月・祝)開催予定。コラム『今を生きる 今を書く』毎日新聞、及びニュースサイトで月1連載。『プリンスアイスワールド傑作選』(TVer ネットもテレ東)が近日配信、などなど。

文/斎藤優子
構成/藤本容子
 

前回記事「【追悼】日本が誇るアイスダンサークリス・リードさんが叶えたかった夢とは」はこちら>>

 
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