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「飽きっぽい」のは、自分勝手じゃない理由

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「飽きっぽい」「変わったね」という言葉を投げかけられたら、あなたはどう捉えますか?多くの人は、否定された、批判されたと感じるのではないでしょうか。きっと、その言葉の中に「飽きたり、変わることは自分勝手なこと」という隠されたメッセージを受け取ってしまうからでしょう。でも、本当に飽きること、変わることは自分勝手なことで、周囲から批判されたり、非難されることなのでしょうか。その疑問に、スタイリストであり、ミモレのコンセプトディレクターである大草直子さんはこう答えます。
 

飽きることは次に進むためのアクセルみたいなもの

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「『飽きる』という言葉だけをとると、とてもネガティブなワードに聞こえますが、私にとっては、飽きることは次に進むためのアクセルみたいなもの。自分が面白いと思うかどうか――この問いに即座に答えられないのなら、それは、飽きている証拠。そこに力は発揮できないと思っています。進化するために飽きていく――この感覚は一生大切にしたい、そう思うのです。

立ち上げから関わり、サイトオープンから3年間、編集長を務めたミモレの編集部メンバーからは、『大草さんは、飽きる自覚があるから、飽きる前に変わっていく』なんて言われます。確かにそうかもしれません。惰性や無理をして、ごまかしながら何かをすることは、私にとっては、時間の無駄使い。そんなことほど、失礼なことはないと思うのです。

飽きっぽいのは、自覚しているのですが、飽きたことを続けてしまうことが一番怖い――そんなふうにも思っています。だって、飽きてしまったものには、100%の力なんて注げないし、飽きた先には進化なんてないと思うから」

そう決して、飽きることはネガティブなこととではないのです。飽きているのに続けることは自分にとっても周囲にとってもいいことなどひとつもありません。そして、飽きないためにこんな工夫をしていると言います。
 

 

他人の言葉に流されても誰も責任を取ってはくれない


「飽きないために今は意識的に『面白いこと、ワクワクすること、好きなこと』を選択している私がいます。それは、もしかしたら仕事という大きなカテゴリーの中のわずか2割かもしれない。けれど、それで良いと確信しています。集中する、力を発揮する、成果が出る。すると、またその2割にフォーカスできる。飽きる、狎れる、流すことを正しく怖がり、そうなる前に、いる場所を移す、やり方を変える、飽きる勇気を持つことが必要です。もしかしたら仕事だけではなく、広義での『生きること』においても。きっとこれからもそれは変わりません。『飽きること』『変わること』は全然わがままじゃない。勇気を持って飽きる、恐れずに変わる――」

過去に「変わった」という言葉を投げかけられた当時のことを次のように振り返ります。

「30代の後半、『ドレス』という雑誌でファッションディレクターとしての肩書を頂いたときには、意識的に毎日着るもの、自分のスタイルというものを変化させていきました。ファッションディレクターというポジションを頂いたからには、雑誌にふさわしい装いであるべきだと思ったからです。毎日のワードローブの定番だったデニムを、当時は、あえて封印。かわりにインターナショナルブランドのワンピースをワードローブに加え、たくさん着るようにしました。すると、SNSやウェブで、『大草さんは変わってしまった……』『フレンドリーな大草さんはいなくなってしまった』、なんて言葉を目にするようになったのです。大草直子=カジュアル――そんなイメージは、それほどまでに、深く根づいていました。ただ、そんな言葉に残念な気持ちはしましたが、傷つく必要なんてないな、とも思ったのです。

せっかく頂いたチャンスを無駄にしないため――私は、『ドレス』という雑誌や、ファッションディレクターという肩書に合わせたファッションにシフトしただけのこと。着る服は、ファッション業界で働く私にとって名刺。それを誰かのひと言で覆しても、誰も責任は取ってくれない――。すべては自分で決めたことです。
 
『変わってはいけない』『変わることが怖い』――もしも、そんなふうに感じているのだとしたら、ちょっと視点を変えてみませんか? 変わるということは、新陳代謝をしているということ。変わっていくことにアグレッシブでいることは、進化し続けているということに他ならない、そう感じます」

飽きること、変わることは、仕事においては自分の持てる力を発揮するために必要なことであり、そして生きていく上でも、楽しく豊かなものにするために大切なことなのです。そして『飽きっぽいね』『変わったね』という他人の評価に流されて自分の思いを覆した結果がどうなったとしても誰も責任は取ってくれません。とはいえ、飽きること、変わることを怖がらずに、自分の意志や気持ちを尊重できるようになるには、どうしたらいいのか。実はこれは練習次第で、誰もができるようになります。そんなメソッドや思考術を綴った大草直子さんの新刊が話題です。小学校時代から今に至るまでのエピソードとともに、飽きること、変わることの大切さや自分軸で考えられるようになる方法が語られた一冊。ぜひ参考にしてみて下さい。
 

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『飽きる勇気 好きな2割にフォーカスする生き方』
発売日:2020年11月13日
定価:本体1300円(税別)
サイズ:四六判 208ページ

飽きることも、変わることも、
自分を愛することも、全部わがままじゃない。

商品開発やイベント出演のオファーが絶えない人気スタイリストで、ブランドコンサルタントとしても活躍する、⼤草直⼦ミモレコンセプトディレクター。時代の転換点を⾒据え、「変化することを恐れない軽やかな⽣き⽅」のコツを指南します。

「今の仕事・生き方でいいのかモヤモヤしている」「いつも人と比べてしまう」「子育てに自信がない」など人生に悩むすべての人がラクに生きられるヒントが満載の一冊です。

構成/幸山梨奈