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大草直子さんに学ぶ、アフターコロナの時代を生き抜くための「飽きる勇気」

アラフォーを過ぎると、いつまでもキラキラしている人と、人生色々あきらめちゃってる人が、どんどん2極化して行く。そのふたつを分けるものは何なのだろう? 私はずっと前から、それについて考えていた。

 

講談社から発売される書籍『飽きる勇気 好きな2割にフォーカスする生き方』を書いた大草直子さんは、言うまでもなく前者。初めてお会いしたとき、講談社の廊下でめちゃくちゃおしゃれな女性が歩いてくると思ったら大草直子さんだったことを、今も覚えている。絶妙な淡いトーンのワードローブで統一したコーディネートは、これみよがしではないのに、はっとするほどシックで素敵。それこそ、キラッキラに見えたのだ。

 

「そりゃあそうでしょ。売れっ子スタイリストでかっこいい外国人の夫に、可愛い子供たちが居て、素敵なおうちに住んで……。そんな満たされた生活が送れるなら誰だってキラキラするわ!」と思う? 

―実は私も、この本を読むまではちょっとそう思っていた。大草さんって、ハリウッドセレブで言えばあのグウィネス・パルトロウばりに、何をしてもおしゃれで、みんなが羨むものをなんでも持っている〝リア充〟アラフィフ・セレブなんだもの。ひとつしか年齢が違わないのに、私とは差があり過ぎる。

だけどこの本を読んでわかった。

彼女は何かを「持っているから」キラキラしているんじゃない。40を過ぎても尚、守りに入らず、もう必要なくなったものは「持たない勇気」があるからこそ、輝いて見えるのだ。

個人的には、本に書かれた大草さんの経歴は私とかなり重なる部分が多くて共感しかなかった。・元々引っ込み思案で、・小学生時代不登校になり(私は中学時代だったけど)、・そこからひたすら読書に現実逃避。中学生時代にはすでに編集者になりたいという夢を抱き、だけど取り柄のない自分が嫌で……。

憧れのヴァンテーヌ編集部を5年であっさり辞めてサルサダンス留学したり、まだ幼い長女を連れて20代でシングルマザーになる決意をしたり。そんなところも、出版社を5年で辞めてフリーライターになり、40目前でバツイチになった私となんだか重なっていて
勝手に親近感を抱いた。でもここからが大草さんの「人とは違うところ」。

「どうしてもファッションエディターになりたい、しかもアシェット婦人画報社で、ヴァンテーヌ編集部で!」。その願いを叶えるために、今まで個人競技派だった大草さんが編集に必要なチームプレイを覚えるため、大学時代からは部活も変えたという話も、「目標から逆算して動く」がモットーの彼女らしい。

そしてヴァンテーヌのためなら就職浪人とも厭わない、とわざと単位を落とすと決めたその瞬間に、奇跡のようなラッキーが起きて、一度は採用試験に落ちたヴァンテーヌ編集部で働くようになる。

恐らく、人生後半が上手く行っているように見える人というのは、こうやって「自分が本当に欲しいもの」にフォーカスできる人。欲しいもののためならあとは躊躇なく捨てることができる。そう肚を決めた人に、チャンスは訪れるものなのだ。いや、もしかしたら逆かも。ほかを捨てて身軽になったから、訪れたチャンスに飛びつくことができる、ということなのかもしれない。

大草さんの人生は、結婚もキャリアも、飽きてしまってその作業を流すようになる前に場所ややり方を変える、という生き方によって構築されて来た。

「飽きてしまったものに100%の力を注げないし、飽きてしまったところには進化などない」と言い切る彼女。

mi-molletを立ち上げて軌道に乗せたあと、3年で編集長を辞めたのも、「飽きた」からではないけれど、「自分の役目はここまで」と潔く見定めることができたから。

「ワクワクする、楽しいと思うことだけにフォーカスする」、「あとの8割は捨てる」、「キャリアステージは年齢によって3つのステージに分ける」、「仕事を引き受ける基準は自分が面白いと思うかどうか」、などなど。大草さんと言えばファッション哲学のコラムも含蓄があるが、その生き方、結婚、キャリア。すべてにおいてご自分の流儀を持つ、「スタイルがある女」だということが、この本を読むとよくわかる。

「おしゃれは選択の積み重ね」だけど、人生もまた然りで、その選択を誰よりも慎重かつ大胆に行ってきたから、今の「大草直子」がある。

そして話は、冒頭の「捨てる勇気」に戻る。

大草さんは「空いたスペース」に運が転がり込むと書いているけれど、これは私も、特に仕事で実感していること。

不思議なんだけど、もうワクワクしなくなった、惰性で続けている仕事や人間関係を思い切って手放すと、本当にいつも、新しいものが入ってくる。だから私は連載が打ち切りになっても不安になったことがない。その度に必ず新しい連載がスタートするし、きっとその新たなもののスペースを空けるために、神様が古い縁を切ってくれたのだと思うようにしている。恋愛も然り。

スヌーピーに出てくるライナスの「安心毛布」みたいに、慣れ親しんだものを手放すのは怖いけれど、私は、生きている間に自分の可能性を最大限に試して、発揮したい。それにはある程度の、やったことがないことや環境による「圧」が、必要なんじゃないかな。

この「捨てる勇気」を持つには、自分の基準=自分軸を持たなければならない。仕事や家庭、人生の岐路で、世間体やパートナーや家族の意見ではなく、自分だけの物差しで、今の自分に要るもの、要らないものをふるい分ける必要がある。そしてそれには自分の決断に自信を持たなくてはならないので、自己信頼が欠かせなくなってくる。

ここまで読んで「安定ってそんなにいけないことなの?」と疑問を感じたあなた。安定はもちろん大事。問題なのは、自分の心の声を無視して、周りに流されるままに生きることなのだ。

周りと比べて「普通」じゃない自分に劣等感を抱く人は多いけれど、そもそも普通なんてない。令和の世の中、幸せの価値観もボーダーレス。自分だけの価値観で、それが満たされる選択ができれば、それでいいではないか。

人生100年時代。自分に退屈しないで今後数十年間を生きるためには、まずは自分をワクワクさせること。そして、ワクワクし続けているひとは、いつまでも楽しそうで魅力的だ。

2020年12月から始まる「風の時代」には、今までの価値観が通用しなくなると言われている。アフターコロナ、そして風の時代を生き抜くのはきっと、大草さんのような軽やかな生き方ができるひと。そのためのヒントが詰まった一冊は、キャリアや結婚に迷ったとき、たくさんのインスピレーションをくれるはずだ。
 

 

『飽きる勇気 好きな2割にフォーカスする生き方』
発売日:2020年11月13日予定
定価:本体1300円(税別)
サイズ:四六判 208ページ

飽きることも、変わることも、
自分を愛することも、全部わがままじゃない。

商品開発やイベント出演のオファーが絶えない人気スタイリストで、ブランドコンサルタントとしても活躍する、⼤草直⼦ミモレコンセプトディレクター。時代の転換点を⾒据え、「変化することを恐れない軽やかな⽣き⽅」のコツを指南します。

「今の仕事・生き方でいいのかモヤモヤしている」「いつも人と比べてしまう」「子育てに自信がない」など人生に悩むすべての人がラクに生きられるヒントが満載の一冊です。

構成/幸山梨奈

 

第1回「【大草直子】「飽きること」「変わること」は、わがままじゃない」>>