ハスキーボイスに憧れていた子供の頃、入院した友達への励ましのメッセージを吹き込んだテープで自分の声を聞き、「こんなアニメのような声だったの!?」とショックを受けたという小西さん。

小西:亀田さん以外のスタッフさんにも「ボイストレーニングに行った方がいいんでしょうか」と相談したら、「その声と歌い方を無理に変えたら真奈美ちゃんじゃなくなるから、必要ないんじゃないですか」って。舞台をやったときにもアンケートに「すごく遠くまで声が聞こえて、感情が届きました」と書いてくださったお客さんがいたんです。周りの方にいろいろな“イエス”を言っていただいて、コンプレックスを自分の持ち味として好きになる方向に進むことができました。

小西真奈美さんの特徴的な歌声にプロデューサーが言った言葉とは_img2

 

この日の撮影でも「ドレスにスニーカー、素敵です。髪型もぴったり!」と編集長が声をかけると「スタイリストさんのセンス、素晴らしいですよね! 私のまっすぐなだけの髪の毛も、こんなふうにしてもらってありがたい」と小さく拍手をしながら自然に感謝の言葉を口にしていた小西さん。周りの人たちを心から信頼してアドバイスをもらいながら、自分を肯定していく。そんな彼女のスタイルが唯一無二のきらめきを生んでいるのかもしれません。

 


何でも自分でやれるとは思わず、人に頼る


小西:私はひとりで何でもできるとか、自分の判断が全て素晴らしいと思う方ではなくて、なるべくいろいろな方のよいアイデアを聞いてみたいと思うタイプです。でも20代後半くらいまでは、周りの方たちとおしゃべりをして仲良くなることを重要視していませんでした。というか、世間話や雑談の仕方がわからなかったんですよね(笑)。「いいお天気ですね」って話しかけられたら「そうですね、秋めいてきましたね」って会話はできるけど、自分から他愛もない話をすることができなかったんです。セリフを間違えるなんてとんでもない、役者として現場にいるんだからきっちり自分の責任を全うして帰らなければ、とガチガチになっていました。仲良くなりたい気持ちはあったけど、余裕がないうえに元来の人見知りもあって、どうしていいのかわからなくなっていたのだと思います。
でもある時、いつも立ち振る舞いが完璧な女優さんが、「ここがわからないんです」みたいな感じで監督に相談しているところを目にして。しかもその後のお芝居もとても素敵だったんです。その当時の私は、役者はすべてを自分で考えなきゃいけないと思っていたので、わからないことはわからないって聞いていいんだ! ってちょっと扉が開いたような気持ちになりました。

悩んだときは、抱え込まずに素直に頼ってみる。そうすることでコミュニケーションが生まれ、もの作りにもいい影響があると知った小西さんは「20代後半で自分に課題を課した」のだといいます。

小西:私は人見知りじゃない! って自分に言い聞かせて、現場に行ったら必ずひとことはしゃべるようにしたんです。相手に無視されてもいいから、「いい天気ですね!」って話しかけてみるところからはじめました。そしたらどんどん楽しくなってきたんですよね。昔は年齢を重ねれば重ねるほど、自分のダメなところを見せちゃいけないものだと思っていました。でも本当に強い人って、ダメなところや弱いところをさらけ出せる人だということが、だんだんわかってきたんです。年齢を問わず、わからないところはちゃんと聞いて、教えていただいたら「ありがとうございます。助かりました」って感謝をすることができる人が、本当の意味で強い人なんじゃないかな、と。そう思いはじめたら、作品や人とのいい出会いにも恵まれるようになった気がします。もちろんもっと早く課題に気づけていたらいろいろなことを円滑に楽しめたかもしれないけれど、今の私がいるのは20代の学びの時期があったからこそ。過ぎてしまった時間も全部肯定してあげよう、みたいな気持ちでいます(笑)。

小西真奈美さん
ニューアルバム『Cure』11/25 発売!

小西真奈美さんの特徴的な歌声にプロデューサーが言った言葉とは_img3

 

小西真奈美
『Cure』
11月25日発売
ユニバーサルミュージック
初回限定版3500円 通常盤2800円

全曲の作詞作曲を手掛けた 2018年のメジャー第一弾アルバム『Here We Go』で、完璧なラップを披露し話題になった女優の小西真奈美。2年ぶりにリリースされるこちらのアルバムは「等身大の大人のポップ・アルバム」をテーマに、亀田誠治、後藤正文、堀込高樹、Kan Sano という4名のプロデューサーを迎えた意欲作。「音楽は、勇気であり、背中を押してくれるものであり、ある種の治療薬である」という考えに基づき「Cure」と名付けられた本作。コロナ渦の今こそ聞きたい癒しのヴォイスに注目したい。初回限定盤には亀田誠治プロデュースの「君とはもう逢えなくても」のミュージックビデオとそのメイキングを収録。

ミュージックビデオ『君とはもう逢えなくても』

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初の単独無観客ライブ「小西真奈美“Cure”Online Live at Blue Note Tokyo」2020年11月25日(水) 21:00より配信
※アーカイブ配信視聴期間:11/29(日) 11:59pmまで

<問い合わせ先>
ル・シャルム・ドゥ・フィーフィー・エ・ファーファー tel. 03-5774-0853

撮影/目黒智子
スタイリング/MORIYA
ヘアメイク/Rika Matsui(A.K.A.)
取材・文/細谷美香

「小西真奈美さん42歳。ヴェールに包まれた私生活と驚異的な無垢さの秘密」はこちら>>

 
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