先週からアメリカの大統領選挙が世界中で注目されています。
トランプ大統領は未だに(私がこの記事を書いているのは11日水曜日)バイデン次期大統領の勝利を認めず、選挙に不正があったという立証できていない主張を行っています。
これはアメリカの近年の大統領選挙での慣習。負けを認めたとしても勝者に電話で祝福するということもせず、どんな手を使ってもそのまま居座り続けるのか、と思わざるをえません。
あのウォーターゲート事件でアメリカ大統領史上、一番屈辱的な辞任をしたニクソンですら敗北を認める演説をし、その中で
「私は私個人でなく大統領として、国家の利益を何よりも優先させなければならない。その仕事が私の個人のせいでできなくなっているからには辞任するべきである」
と言いました。
昨日インクダグラムで、前回の大統領選挙でトランプに敗れたヒラリー・クリントンが、2期目の大統領選挙で敗れたジョージ・ブッシュがホワイトハウスを去る際に、勝利したビル・クリントンに残した有名な手書きの手紙を載せていました。
「私があなたにひとつアドバイスできるとすれば、あなたが正しいと思ったことに対して批判されたとしても、やる気をなくしたり予定から外したりしないことです」
アメリカに最初にメイフラワー号に乗ってやって来たピューリタンの精神である「厳格、潔癖」の精神に由来しているのかも知れませんが、今までのアメリカの良さはその精神にこそあったのかも知れません。
400年の年月が経って、そのアメリカの精神は、トランプ大統領に代表するように、彼の任期の4年間でなくなってしまいました。
たとえその精神がもともと表面的であったとしても、伝統はなくなり、個人の利益を一番優先したい人たちが、どんな嘘をついても恥じることなく、正当化することに必死です。
そして42%のアメリカ人が、その彼を支持したことに恐怖を感じるのは決して私だけではないはずです。
そしてその背景には単なるトランプ大統領のような考え方の人もいれば、教育を受ける機会もなく、希望も持てず、捨身になった人たちがたくさんいるはずです。
そしてなにもないことを誰かのせいにしたい人たちもいることでしょう。
ただ56%の人たち、とくにレッド・ステイツ(中部の保守的な地域)の中の都市部に住む若者、教育レベルの高い人が、人種に関わらずバイデンに投票しました。
これは、アメリカの希望でもあります。
特に次の副大統領は、有色人としても、女性としても初となるカマラ・ハリスです。彼女はジャマイカからの移民である経済学者の父と、インドからの移民で乳がん研究者の母のもとで生まれました。
彼女は勝利演説の中で、こう述べました。
「私は最初のアメリカ副大統領になる女性かも知れないが、最後の女性ではありません。今夜これを見ているすべての少女が、この国は可能性に満ちた国であると知ったからです」
想像以上に女性に対して保守的なアメリカ、ましてその女性たち自身が保守的な考えを持っている国の中での希望です。
アメリカのような大きな国、まして多様な人種、激しい貧富の差、複雑な連邦制がある……こんな状況の中で、新しい大統領になったからといって何かがすぐに変わって良くなることはありません。
しかし、今やるべきこと、次の世代のためにやっておかなければならないことをようやく議論できる、そのことに期待します。
Do right thing(正しいことをしなさい)
今までにない今回の選挙の投票率は、まさに小さい頃、私がアメリカで最初に学んだことの表れです。
そして何か選択することを迫られた際に、どうかこの言葉を皆さんも思い出してください。
Comment