
前の恋愛への罪悪感から、次へと踏み出せない場合、どう心の整理をつければ良いもの? 3ヵ月先まで予約のとれない心理カウンセラーとして大人気の根本裕幸さんが、踏み出せない理由とともに、解決法をアドバイスしてくれました。
ゆったりさんからの質問
Q. 長く不倫をしていた彼と別れました。彼を苦しめた罪悪感でどうしようもなくなります。
私は最近、長くお付き合いしていた不倫の彼とお別れしたのですが、お互い大好きなままの別れでした。私にとって彼はすごく大切な人で幸せになって欲しかったのに、私と関わったせいで彼を不幸にしてしまったような罪悪感が消えません。彼も、私のこの先を邪魔したくない気持ちがあったり、私もこのままでいいのかモヤモヤしていたり、お互い不安を抱えていました。でもお互いが心の拠りどころで、大好きでした。私も彼の前ではそのままでいられました。
お互いの不安からすれ違ってしまい、喧嘩しては仲直りの繰り返しが多かったので、彼からの別れ話に乗っかる形で別れることになってしまいました。別れの理由も私のためを思ってくれたことでしかなく、私は自分で何を決めることもしませんでした。結局、私は一緒にいるときだけの楽しさしか与えられず、終わった今は、大切な人に苦しみしか残せなかったと思うと罪悪感や悲しさでどうしようもなくなります。これから大切な人を作っても、不幸にしてしまうのが怖いです。こんな気持ちはどうしたら良いでしょうか……?(30歳)
根本裕幸さんの回答
A. 彼のことを忘れたくないために、自ら罪悪感を作り出しているのかもしれません。
ゆったりさんはもともと、あらゆることを背負い込みやすい性格なのかもしれません。ただ失恋に限らず、大切な人を失うと、その人のことを忘れないために罪悪感を作り出す、というのは誰の身にも起こることです。たとえば子供を事故や病気で失った母親は、「私があの子を守れなかった」という罪悪感を強烈に持つことで、ずっと子供の存在を背負っていこうとします。これは、自分を責めることで喪失感を忘れられるからでもあります。喪失感を覚えたとき人は嘆き悲しむことになりますが、罪悪感を覚えたときは自分を責めるという行動を取ります。つまり人は無意識に違う種類の行動を取ることによって、喪失感から目を逸らそうとするものなのです。
しかし不倫の場合は、その責任はあくまでフィフティ・フィフティです。ゆったりさんだけでなく、彼にも問題があります。
恋愛においては、相手を悪者にしないために自分を悪者にする、という行為はよく見られます。たしかにそれは、ある意味相手を守っていますが、同時に相手に執着することにもつながってしまいます。ゆったりさんも、本音では彼を忘れたくないのだと思います。それだけ喪失感が大きかったということでしょうし、一方で、彼を守ることで彼が自分の元に戻ってくれないかと期待しているところもあると思います。私が悪かった、だから戻ってきてほしい……、と。「私は悪い女だから新しい恋に進むのが怖い」というのも、彼を待ち続ける口実になっている可能性があります。
ですがそれは一人で背負い込み過ぎですし、自分を傷つける行為でしかありません。何より彼目線になってみたとき、そんなゆったりさんを彼はどう思うでしょうか? ゆったりさんのことを思っての別れだったのに……。彼の本当の幸せを考えるなら、ゆったりさん自身が幸せになるべきなのです。
彼がゆったりさんのことを思って別れてくれたというなら、それは彼自身も罪悪感を抱いており苦しかった、という証拠です。せっかくゆったりさんの幸せのために別れたのに、ゆったりさんが苦しんでいたのでは、彼は余計に罪悪感を覚えることでしょう。ゆったりさんは、自分を責めるのをやめることで襲ってくる喪失感を恐れているのです。でも自分のためにも、そして彼のためにも、勇気を持って一歩を踏み出し、幸せになってほしいと思います。
- 根本裕幸1972年生まれ。1997年より神戸メンタルサービス代表・平準司氏に師事。2000年にプロカウンセラーとしてデビュー。以来、述べ15000本以上のカウンセリングをこなす。2001年、カウンセリングサービス設立に寄与。企画、運営に従事し、2003年からは年間100本以上の講座やセミナーもこなす。2015年より独立。フリーのカウンセラー、講師、作家として活動している。『いつも自分のせいにする 罪悪感がすーっと消えてなくなる本』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『人のために頑張りすぎて疲れた時に読む本』(大和書房)、『子どもの将来は「親」の自己肯定感で決まる』(実務教育出版)など著書多数。ブログはコチラ→https://nemotohiroyuki.jp/ この人の回答一覧を見る
- 山本 奈緒子1972年生まれ。6年間の会社員生活を経て、フリーライターに。『FRaU』や『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。 この人の回答一覧を見る
前回記事「大人数の場が苦痛になってきた人へ、加齢による口下手を克服する方法」はこちら>>
終活ジャーナリスト 金子稚子さんの回答一覧はこちら>>