いったいリハビリって何をするの?


私の場合はまず作業療法からスタート。 作業療法室に足を踏み入れると、片手でネクタイを結ぶ練習をする人、ものづくりに熱中する人、PCに向かう人、はたまたストレッチを受ける人など、実にさまざま。「いったい作業ってなに?」と不信感いっぱいになりました。

心肺停止、脳障害から蘇った医療ライター「倒れた後の入院&治療のリアル」_img0
 

「作業とは、食事、入浴、料理、仕事といった、人の日常生活に関わる全ての活動を指します。個々の目標に趣味や嗜好を考慮してカスタマイズされたプログラムになります」と作業療法士から聞いて、安心しました。
絵、手芸、料理、ドライブシュミレーションなどを作業療法士とマンツーマンで行います。
私は脳ダメージの回復のプログラム。
虫食いクロス表で、空欄の数字を計算で埋める。在庫管理票を見て何がいくつ足りないのか調べ、補充する合計金額を出すといった、注意力や情報処理能力の向上を目指す訓練の連続でした。

 

一番頭を抱えたのがアナグラム。たとえば「バンチンクゲケ」。「ばんちん?くげげ? げげっ」。「クンユンビョウキ」って「なんじゃ、そりゃ?」と、迷宮に陥る度、イライラ&脳ミソはヒートアップ。「ケンチクゲンバ」「ユウビンキョク」と正解にたどり着くのに疲労困憊でした。

ちなみに、病気や事故が原因で半身不随や高次脳機能障害になった場合、「中途障がい」と呼ばれます。
普通の生活ができていたことが、人生の途中でできなくなる。これを自覚した辛さとやるせなさは言葉にはできません。「なんで自分が……」と泣きくずれる入院患者さんを何人も見ました。

私もできない現実を突きつけられる劣等感で、口も聞けない程、ブルーになりました。そんなどん底な状況でも、「ただ嘆いていてもしょうがないですよ」と作業療法士はリハビリと平行して、障害を補うための作戦会議をしてくれました。
「やるべきコトは必ずメモ」「メモは終了したら済チェック」「指さし&声に出して間違いがないか確認」と、転ばぬ先の杖になるノウハウを次々と伝授。
「そっか、できないことは補っていけばいいのか」と開きなおったら、前向きにリハビリに取り組めるようになりました。

一方、理学療法は運動機能の維持、改善が目的なので、リハビリ室はまるでスポーツジムのよう!

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毎回、凝り固まった体を理学療法士がマッサージ。ストレッチやボールやゴムチューブを使っての軽い筋トレ。廊下や病院の周辺を歩く運動で合計40分間のメニュー。
こちらは、体を動かせば成果につながるので楽しめました。