JR山手線内にて、心肺停止で倒れ救急搬送された医療ライター。名前も顔も知らない人達の適確な救命救急措置のお蔭で、なんとか命は取り留めました。
その後に、運ばれた急性期病院で行われた治療や入院生活の日々をリポートします。

 

第1回「山手線内で心肺停止!即死を免れた医療ライターが2週間前から感じた予兆とは?」>>


急性期病院で行われた治療


倒れた直後、集中治療室では体温を32度程度に冷却して、動物の冬眠状態のようにする治療が行われました。疲労困憊した脳細胞を回復させるのが目的です。
脳卒中なら血管が詰まったり破裂したり、ピンポイントで脳の機能がダメージを受けます。私のような心肺停止や事故や自殺企図などで脳が酸素不足になる「低酸素脳症」では脳全体の機能が落ち、最初に記憶を司る前頭葉が障害を受けやすいそう。
事実、私は倒れる数日前に友人と温泉旅行に行った記憶が未だに消失したままです。

 

1週間後に奇跡的に覚醒した私には案の定、脳ダメージによる問題が次々と発生しました。「看護婦がなってない」と暴言を吐き、「宝塚にエリザべ―トを観に行かなくっちゃ」「看護婦さんは篠田麻里子だよね」と意味不明な妄想トークが炸裂。
思い通りにならないイライラで、ベッドの周りのものを次々と床に投げつける凶暴化。しまいには2回の脱走失敗でベッドに拘束されてしまいました。腰には鍵のついたベルトがつけられ、ナースコールを押さなければ、トイレにいくことはおろか、身動きさえとれない屈辱で憔悴。

夜になれば同室の患者さんたちのざわつきタイムがやってきました。「痛いっ」「辞めてよ」「触らないで」と怒号が響き、「バカヤロウ」「この野郎」「泥棒」と、昼間は上品なおばさま達は次々とアウトレイジ化。私はベッドでブルブルと怯え、心が折れまくり。

クリスマスに、病院の窓から東京タワーを見つめつつ、クリスマスディナーをいただきながら、いい大人ですがさめざめと泣きました。「健康じゃなきゃ、猫と暮らすことさえできない……」。

 
 

失って初めて日常のありがたみを痛感したのです。


備えあれば憂いなし!再発に備え第三のオッパイ搭載


「もし次に倒れた場合、また周りに助けてくれる人が居合わせるとは限りません。死にたくなければ皮下植込み型除細動器(S-ICD)を入れることをオススメします。猫の手は借りれません」と主治医の説得力ある助言で、左脇に直径約7センチ、厚さ約7ミリの医療機器を埋め込みました。
これはペースメーカーとは違い、簡単に言えばAED小型版。心臓に異変が起きたら自動的に作動します。

画像提供:ボストンサイエンティフィック ジャパン株式会社

しかも遠隔モニタリングシステムがセットになっていて、私の心臓に異常が発生すると医療側へアラートが鳴り響く万全の仕組みです。

デメリットは、スマホが常に脇に埋め込まれたような違和感があり、私は第三のオッパイと命名しました。
ラクビーなどの激しいスポーツはNG。ライブでも前につっこめないし、ぎゅうぎゅうの満員電車はちょっと怖いです。電気マッサージや電気風呂もダメ。外部からの電気刺激で誤作動を起こすと「ドスッ!」と強い衝撃を受けてしまうからです。
S-ICDは6~7年は電池が切れ、交換のための手術が必要です。それでも一人暮らしの私には心強いお守りになっています。

 
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