仕事に復帰したものの、「自分はなにをしたいの?」とモヤる

必死に家事・子育てをしてきた美緒さんに余裕ができたのは5年前。長男が小学校2年生になったときでした。15年ぶりの仕事を、モデルとして再開したのです。

「お仕事はしたかったので、とてもありがたかったし嬉しかったんです。でも、心のどこかで『自分は一体なにがやりたかったんだっけ?』という思いもあって、モヤモヤしていました。
そんなとき、フルマラソンを走るお仕事をいただいたんです。
運動経験もなく1.5kmも走れなかった自分が、少しずつ練習を重ねることでギリギリゴールできた。途中、怪我をしてしまったことで日々、夫がアスリートとして背負ってきた重圧がどれほどのものだったのかも少し理解でき、得難い経験になりました」

松井美緒さん「野球選手の妻」「子どものママ」のあとの人生。15年ぶりに仕事復帰したワケ。_img0
 

フルマラソンを完走したことで「何かが吹っ切れた」と語る美緒さんは、「自分は何がしたかったのか」という問いにも惑わされなくなったと言います。

「結局は自分が日々積み重ねてきた“点”がつながることで、なにかひとつの“かたち”ができていくんだと今は思えます。

だから『専業主婦のあとの第二の人生』みたいなものって実は無理に考える必要もなくて、写真でもいいし刺繍でもいい。自分の、それぞれのペースでやってきたことがなにかにつながるはず。そういった意味では、興味が湧いたものはどんどんチャレンジしてみるのがいいのかなって思っています」

専業主婦時代に必死で覚えた料理も、子どものためのイベントも、すべてが今の美緒さんをかたち作っているーー。
まもなく47歳を迎える美緒さんの言葉には、これからの人生を楽しむヒントが詰まっていました。

松井美緒さん「野球選手の妻」「子どものママ」のあとの人生。15年ぶりに仕事復帰したワケ。_img1
 

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著者:松井美緒(世界文化社 1500円+税)

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取材・文・構成/小泉なつみ
撮影/稲垣純也