結婚は直観。ある日突然「あ、結婚しよ」と思った


大きなお団子ヘアで、いつも単独行動をしている花。彼女を見つめる徹が、彼女について語るモノローグがあまりにも愛に溢れていて、花は福徳さんにとって理想の女性像なのかなと思えてきます。

福徳:もしかしたらそうなのかもしれないですけど、あくまでもこの主人公が好きな女の子はどんな子だろうというところから考えました。主人公は、友達がたくさんいる人を羨ましいと思っているけれど、素直じゃないから「なんじゃあいつら」と思うような、冴えない大学生。そこから自然と花ちゃんの人物像ができたんですけど、僕の好みも出たかもしれないです。

ジャルジャル福徳秀介さん小説デビュー「僕の考えた言葉に、僕自身が救われることもある」_img3

 

徹にとって、花は初めて出会った、価値観がばっちり合う女性。「僕は価値観が違う人のほうが楽しめるタイプです」と言う福徳さんのご結婚相手も、価値観は合わないのだとか。
 
福徳:簡単に言うと、おもしろい人です。めちゃくちゃおもしろいです。そこだけは間違いないです。基本的に、片方がどっか抜けてて、それを見てもう片方が笑うというのが、男女のほのぼのした関係性じゃないですか。それが、ガンガン笑かしにかかってくるんです。そんな女性に出会ったのは初めてで、それが珍しかったっていうのはあります。笑わされてしまいます。友達感覚です。恋愛している気は一切ないです。その人を思い描いて胸が熱くなったりとかもないですね。ほんまに大親友みたいな存在です。

「大親友のような相手」と結婚を決意した理由を尋ねると、「直感です」という言葉が返ってきました。

福徳:ほんまにある日突然、咄嗟に「あ、結婚しよ」と思って。決まってから籍を入れるまでは、「うわー判断早かったかなー。やっぱやめときゃよかったかなあ」と思ったりもしましたけど、結果的にはよかったです。自分でもなんであのとき急に結婚しようと思ったのか、いまだにようわかってないですね。基本直感で生きてきたので、自分の直感を信じて結婚しました。


主人公たちの行く末を読者任せにしたくなかった 


第一章から第四章までは主人公の主観で文章が綴られて、最終章の第五章だけ、文章が客観になります。第五章に何が描かれているかは伏せておくとして、その視点の切り替えに込めた狙いとは?

福徳:最終章は絶対にいらないんです。書いていたときも「いらんやろな。絶対にいらんやろな」と思ったんですけど、僕個人にとって必要な最後やったんで書きました。登場人物にかなり気持ちが入ってきていたんで、主人公たちがその後どうなっていくのかを、読者任せにしたくなかったんです。完全に決めつけたかった。でも、そうならない可能性もあるので、違う捉え方もできるように、徹の目線では書きませんでした。どう解釈するかはもちろん読む側の自由ですけど、僕は第五章で、徹と花について書きました。

それを踏まえるとこの小説は、福徳さんが結婚した女性へのラブレターともとれなくはないような……?

福徳:それはねえ、本当にゼロですね。1ミリもかすってないです(笑)。向こうには読ませてないですし、読ませるつもりもないです。これに限らず、仕事のことに関してこれまでいっこも言われたことないです。『キングオブコント』もたぶん見てないと思うので、これも読まないと思います。読まれなくていいです。知り合いにも相方にも読まれたくないです。自分をさらけだしてしまったので、本気で恥ずかしいんで……。

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<書籍紹介>
『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』

福徳秀介・著 小学館 1500円(税別)

大学2年生の「僕」こと小西徹は、入学前に憧れていた大学生活とはほど遠い、冴えない日々を送っていた。そんなある日一人の女子学生に出会い、その姿が心に焼き付いた「僕」は次第に彼女に強く惹かれていく。やっとの思いで近づき、初デートにも成功。「僕」はこれからの楽しい日々を思い描くのだが……。私小説を思わせる登場人物とストーリーながら、独特の言語感覚とリズムに、著者の作るコントの世界へ迷い込んだような感覚も。グッと心に刺さる言葉が随所にちりばめられた、ちょっぴりホロ苦い恋愛小説。

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撮影/塚田亮平
取材・文/須永貴子
構成/山崎 恵