日本ミュージカル界を代表する俳優、海宝直人さん。クリアなのに、ふくらみのある声と豊かな表現力で高い評価を受けています。7歳で初舞台を踏み、今年で舞台人生25周年。迷いながらも今にたどり着いた道のり、ニューアルバム『Break a leg!』や三浦春馬さんとの共演が予定されていた新作『イリュージョニスト』にかける思いなど、誠実な人柄を伺うことができるインタビューをお届けします。

 


役作りの面白さを知り、子役から一人の俳優へ。


ミュージカルファンであれば知らない人はいない海宝さん。ファンでなくても、11月にNHK朝の連続テレビ小説「エール」にオペラ歌手役で出演されていた、というと、ピンとくる人も多いのでは。2日だけの出演にもかかわらず、美しい歌声は多くの視聴者の心を掴みました。

「出演のお話は嬉しかったと同時に、驚きもしました。実は、ミュージカル俳優の(吉原)光夫さんや橋本じゅんさんとご飯を食べていた時に、光夫さん本人から『エール』への出演が決まったことを聞き、『よかったね、やっとだね』と喜び合ったんです。二人が出ている作品で、しかも橋本さんと同じシーンで僕も出られることは、とても嬉しいご縁でした。朝ドラ出演の反応は、母にはずいぶん届いているみたいです(笑)」

32歳にして、ミュージカル俳優としてのキャリアはすでに25年。この道に進むと心に決めた作品は、19歳で出合った『ミス・サイゴン』でした。

 

「それまで子役として活動してきましたが、高校卒業が見えた時は大学進学も考えましたし、一番迷った時期でしたね。そんな時にちょうど『ミス・サイゴン』のオーディションのお知らせが新聞に載ったんです。そのオーディションを受け、演じたのはアンサンブルの役でした。子役担当の方が手取り足取り教えてくれ、面倒みてくれていた環境から、初めて、自分で役の名前をつけたり、出身地や家族構成を考えたり、一つひとつ役を組み立てていく作業をしたことで、プロとして芝居をしていく意識が明確に芽生えました」

転換期となった作品として挙げるのは、‘16年の『ノートルダムの鐘』。劇団四季の公演で、外部キャストとして初めて主演を務めました。

「演じたカジモドは、大きな身体的ハンディキャップを背負い、差別を受けてきたキャラクター。肉体表現として口を歪ませながらも、一音も落とさず、しっかり伝えなければいけない難しさがありましたね。劇団四季さんへの外部出演ということのプレッシャーもありましたし、稽古中に喉を潰してしまい焦りもあったのですが、試行錯誤した分、自分の声の探求において、非常にいろんな発見があった作品です」

 

表現者として一流であるのはもちろん、海宝さん自身がミュージカルの大ファン。「オタク気質」で、一つの作品も、演出家や俳優による違いを分析するのも好きだそう。海宝さんにとって、職業でもあり趣味でもある、ミュージカルの魅力とは?

「舞台は、同じ演目、同じキャストであっても、一回として同じ回はありません。その日、その瞬間にしか生まれないコミュニケーションがあるんです。客席からは拍手という形で、その時の感動を伝えることができますし、役者としてはお客様との気持ちの交流にはすごくパワーをいただけるんです。そして、ミュージカルは何といっても音楽ですよね。キャラクターが嬉しいのか悲しいのか、音楽にのって、感情がものすごくダイレクトに伝わってきます。このミュージカルならではの醍醐味を、是非、劇場で体感していただきたいです」
 

32歳、大人の色気漂う撮りおろしショット
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