どうしてアートを買うの?
「絵本集め」の延長線上で、「アートを買う」冒険の第一歩を踏みだしたわたしですが、「どうしてアートを買うのか?」は、あいかわらずぼんやりしたまま。
絵本作家のリトグラフ集めから先に、さらなる一歩は踏み出されることもないまま、ほどなくして、夏休みにベニスを訪れることになりました。
ベニスといえば、ベネチアングラス。有名な工房のものは素敵だし、ヴィンテージのものも捨てがたい。なんてやっているうちに、とあるガラス作家の作品を目にします。
ゆらゆら、さらさら、きらきら。動いているような、流れているような、石のような独特の質感。みればみるほど、心惹かれるものがありました。調べてみるとそれは、ガラス作家、エイミー・ウエストの作品でした。
さっそく連絡をとって訪れた、ムラーノ島のエイミーさんのアトリエは、アーティストたちが共同でアトリエを構える、古いガラス工場跡の一画にありました。
エイミーさんの代表作であるリバーストーンシリーズは、北イタリアのアルド川の流れと、磨かれて丸くなった石からインスパイアされて創られたもの。
角がとれて丸くなったなめらかな石のかたちには、年をかさね成熟した女性の人生を、水が流れているような質感ときらめきには、よどんだ気持ちを浄化してくれるような心地よさを感じます。
そのリバーストーンシリーズから派生したのが、サセッティというシリーズ。サセッティというのはイタリア語で「小石」という意味です。
作品から感じた世界観は、じっさいに作者のエイミーさんと会話を重ねることでより一層、強く鳴り響くように感じられました。それは外から聴こえてくるような、内から共鳴しているような、不思議な感覚。
こうしてわたしは、サセッティシリーズのひとつを、購入することにしました。
じつをいうとこの時。つまりアトリエを後にした時点で、自分が「アートを買った」という自覚はありませんでした。単純に旅行のお土産に、ムラーノグラスのジュエリーを買ったつもりでいたのです。でも、何かがちがうことに気づいたのは、本島にもどる船上でのことでした。
ジュエリーを買ったときとはまたちがう、この独特な高揚感はどこからくるのだろう?そんな違和感をかかえながら船に揺られ、エイミーさんとの会話を反すうするうち、わたしは気づいたのです。
わたしが手にしている包みの中身は、モノじゃないのかも。
そう。それは、アーティストの世界観なのかもしれない!ちょっと大げさかもしれないのですが、アートを買う理由が、おぼろげながらも見えた瞬間だったのでした。
恋するように、アートを買おう
さて。
「アートは、恋人のようなもの」
というのは、冒頭にご紹介した、ステラの言葉です。
これはそのまま、「どうしてアートを買うの?」ということへの答えになっている、とわたしは思っています。
アーティストのものの見方や、感じ方、世界観。作品から何かを感じとる。それがいいなと思ったら、アーティストのファンになりますよね?
たとえば、音楽でいうとわたしはMr.Childrenのファンなのですが、コンサートに行ったり、CDを買ったりすることで、その世界観に触れ、ときめいたり、ぐっときたり、なぐさめられたり、元気になったり、ときには考えさせられたりする。
それはまたステラのいうとおり、恋にも似ているのです。
ある人のことがいいなぁと思ったら、毎日会いたくなる。つきあってみたくなる。一緒に暮らしたくなる。もっと深く知りたくなる。そして、良きにつけ悪しきにつけ、影響を与えあうことになる。
だれかのファンになるのに正解・不正解がないように、恋には「全員に共通する答え」がありません。そしてその答は、「外」で探せるモノではなく、自分の「中」にあるモノだと思うのです。アートを買うって難しそう。でも、恋のようなものだと思えば、ちょっと肩の力がぬけませんか?
最近では、インスタグラムやオンラインギャラリー、アプリやネットオークションなど。気軽にアートを買える場所も増えていて、わたしのような初心者にはうれしいかぎり……とまぁ、好きなことを語りはじめると話は尽きないものですが、この辺りの話はまた!
みなさんも、恋するようにアートを、買ってみませんか♪
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えこさん
スイス・ジュネーブに住んでます♪ 好きなのは旅すること、本を読むこと、文章を書くこと、犬と遊ぶこと、花とたわむれること。
それからステキだなぁとおもう人を観察するのが大好きです。そうか、、だからミモレが好きなのかも!