ただ「可愛い」でも「フェミニン」でもなく「モード可愛い」。大人の女性がおしゃれをするときに鍵になる言葉です。「モード」と聞くと、ちょっと遠いもののように思えますが、実はこの「モード」さが大人の着こなしの大事なスパイスになってくれるんです。一体「モード可愛い」とは何なのかを紐解いていきます。

今回「モード可愛い」を一緒に考えてくれるのは、スタイリストの長澤実香さん。モードをリアルなスタイリングに落とし込む達人として、ファッション誌をはじめウェブ、広告など幅広い媒体で活躍し、女優、モデルからも厚い信頼を寄せられています。


今の自分のスタイルに迷いがあるなら、服ではなく自分自身をまずは見直してみる

 

 

トップス/ジバンシィ スカート/ドリスヴァンノッテン ブーツ/サイモンミラー ネックレス(パール)/ミキモト ネックレス(シルバー)/ララガン バングル/ヴィンテージ

 

「モード」と「可愛い」。年齢を重ねるとどちらかだけだと少し難しくなってくるのかもしれません。たとえば、ただ「可愛い」は年齢を重ねるとちょっとイタい人に見える場合もあるし、「モード」はもしかしたら威圧感を与えるかもしれない。これは「モード」や「可愛い」に限ったことではないのですが、バランスやさじ加減がとても重要になってくる年齢にさしかかっているのだと思います。もちろん自分のスタイルとして好きで突き進むのは素晴らしいこと。ただ、もし今の自分のスタイルに違和感を覚えているなら、ぜひ「モード可愛い」を例におしゃれのバランスとさじ加減を考えてみてはいかがでしょうか?

 

最初に私自身の話をすると、いわゆる可愛さやフェミニンな要素は私にはほとんどありません。でもだからといって甘い色と言われるパウダーピンクのアイテムや淡い水色のものがひとつもないかというと、そうではなくて。服というのはデザインや形、色のバランスなんです。たとえば私のワードローブにあるピンクは、柔らかなシフォンブラウスではなくてキルティングのボディスーツ。長袖でビタッとしていて、首の詰まったボディスーツです。服ひとつとってもすべてはバランスなんだと思います。もしかしたらこのボディスーツは「モード可愛い」服なのかもしれません。でも「モード可愛い」服を着たからといって、「モード可愛い」ができるわけではないんです。

自分なりの「モード可愛い」をコーディネートするには?

「モード可愛い」に限ったことではないのですが、ファッションのスタイルって自分自身を含めたトータルバランスなんです。顔立ちもそうだし、髪型、身長も含めて、今の自分自身が持っているものと、そこにプラスするファッションのバランス。だから、まずは服を着る前に自分の要素をちゃんと見たほうがいい。「自分を知る」が一番大事。そこを怠っているからおしゃれ迷子になってしまうんです。でも今からでも自分を知ることができれば、おしゃれはもっと楽しくなります。

「モード可愛い」の考え方に話を戻すと、自分自身のモードさ、モードというと判断がしづらいようなら、たとえば自分の見た目のクールさ、シャープさと考えてもいいかもしれません。自分自身がモードさ、クールさが高いなら、服で可愛さを多めに足してもいいかもしれない。逆にご自身が顔立ちもフェミニンで体のラインも曲線的だとしたら、服はかなりきりっとモードにすると「モード可愛い」が完成する。だから人によって同じく「モード可愛い」を目指したとしても、選ぶアイテムが違うんです。ただモードで可愛い服を着れば、「モード可愛い」になるわけではないといったのはこれが理由です。

 

 

今日の私のコーディネートを例に解説すると、私は黒髪でショートヘア、体型も細身だから、クールさが高め。私自身はもともと可愛さやフェミニンさはそこまで必要としていないから、可愛さは20%もあればいいと思っています。その20%がドット柄のスカート。この柄がもっと小さかったらフェミニンさが高くなるので、私が取り入れるとしたらこの大きさとボリューム感がちょうどいい。もし足元を華奢なヒールのパンプスやバレエシューズにしたら、フェミニンさが30%くらいに上がるから私はタイトなブーツに。ざっくりでいいので、自分自身が持っている要素を含めて計算してみてください。客観的に自分の持っているものを見極め、バランスを計算して着る服を選ぶ。そうすると自分が想像したスタイルを持てるようになり、そして着こなしていくようになる。

これは他のテイストや日常での服の着こなしにも同じ考え方ができます。たとえばミモレ世代になって部下ができたり後輩が増えたときに、周りから威圧感が強いと思われているとしたら。背も高くて、髪もショートヘアで、顔立ちもきりっとされている方だとして、着る服も黒のパンツスーツだとやっぱり強い印象を与えてしまいます。スーツの色をやわらかな色に変えてみたり、パンツスーツではなくて、ブラウスにスカートにすると柔和な雰囲気になり、威圧感も押さえられるはず。逆も然りで見た目が柔和で説得力に欠ける雰囲気ならば、ファッションやメイクできりっと感を強めにするといいんです。

ファッションは自由なもの、自分の味方になってくれるもの

大前提としてどんなスタイルをするにしても、ファッションは自由なものだし、自分の味方にもなってくれるもの。だから、好きなものを着るのがいちばん。もし迷っていたり、なりたい自分にうまくなれていないなら、少し客観的なバランスやさじ加減を考えてみてください。自分が好きで着ていると周りもそれで一緒にハッピーになれるし、そこから何かが生まれることもある。小さなことでいえば、「素敵だね!どこで買ったの?」「すごく似合ってるね!」なんて会話がファッションをきっかけに繰り広げられたら、それってとてもポジティブですよね。

ファッションにおいても人付き合いにおいても、自分はさておき周りのことを考えてしまう人がとても多い。でも、これから先の時代はまずは自分を知って、自分の好きを大切にすることが重要になってくると思います。それってわがままになるってことではないんです。自分って何なのか、何が欲しくて、何が好きか。自分のことを明確にしていかないと自分の本当に欲しいものなんて得られません。もし自分の好きがどうしてもわからない人はまずは消去法でいい。これとこれだったらどっちが好きなんだろう、というふうに少しずつ取捨選択していって最後に残ったものが自分の好きなもの、でもいんです。少しずつ取捨選択を繰り返していくうちに、好きを選ぶ直感がさえてくるはず。

最後は「モード可愛い」から話が少し逸れてしまいましたが、どんなスタイルを纏うとしても、「自分を知る」「自分の好きを知る」は大切なこと。ぜひ今日から始めて見て下さい。

【画像】長澤実香さんのモード可愛いスタイル
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撮影/目黒智子
構成・文/幸山梨奈

 

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