小学校の先生をしている私の友人から聞いた話。彼は「ジェンダー教育は子供の頃からするのが大事」と考えていて実践しているのですが、授業で「こうですよ」と教えるだけではあんまり意味がないんだそうな。例えば「男の子だって泣いてもいいし、女の子だからって一歩引く必要はないんだよ」と授業で教えても、休み時間に「男の子なんだから我慢して!」とか「女の子はかわいいのが一番」とか言っちゃったらば、全て台無し。「先生が言ってること、先生が守ってないじゃん」となり、「じゃあ私達も守らなくていいよね」って話になってしまいます。

 

小学生さえ見破る「おまいう」的状況が、まさに今、コロナ禍の日本で、国のトップによって引き起こされています。国民に「5人以上の会食自粛」を、4人以下でも「マスク会食の徹底」を呼びかけ、自分は8人でノーマスク会食。そして「会食だけど、食べてない」という「ごはん論法」かと思うような言い訳……。日本がマジでヘルなのは、首相のそういう無様なダメっぷりを、閣僚たちが総出で「何か問題でも?」といけしゃあしゃあと養護していることです。「一律5人以上が絶対ダメとは言ってない、アクリル板があれば(ステーキ店にアクリル板はなかったらしいですが)」の西村さん、「6人家族はどうするんだ」の麻生さん、「マスクとらなきゃ食事できない」の二階さん……無理めの言い訳でドツボにハマり、開き直ってケツまくる。ここ数年の政治家のこういう態度って、キャラ総出演のブラックコメディみたい。笑えるんでしょうね、自分の国の話でなければ。

 

個別の忘年会の批判はきりがないし、それは他の方におまかせするとして。私が気になったのは、政治家の先生たちが、世の中には自粛を求めている「忘年会」を、自分たちは参加OKで許される、罪悪感をそれほど覚えていないっぽいことです。そうはいっても、こういう交流こそが政治家の仕事だからさ、ってことでしょうか。そういえばこの間の総裁選で自民党議員から総スカンを食らっていた石破さん、その理由を多くの議員とか元議員とかが「議員と飲み会をしない」って言っていましたね。つまり議員が党内で徒党を組む(つまり出世する)には、そういう形の情報収集とか仲間意識の共有が大事ってことかな?それって広く一般の忘年会の目的とほぼ同じ気がしますが。みなさん永田町特製「コロナ感染しないバッジ」持ってるとか?だって今や自民党でキャンセル続出らしい忘年会も、菅さんの一件がなければみんな普通にやる気だったんだろうし。自粛は政治家は無視してるってこと?まさか政治家はPCR検査受けてマメに陰性確認してるとか?
 

「自分が世の中に求める基準は、自分には適応しない」特権意識


大人げないタイプなのでしつこく書きましたが、これはダブルスタンダードが強者の都合によって運用される典型です。自分たちは特権的に許されるーー理由にもならない理由で開き直ってる人たちあたりは、「自分が世の中に求める基準は、自分には適応しないこと」があまりに日常的で当たり前なので、それを周囲に指摘されても気にする気配すらない。老害とか有害な男性性とか特権意識とか、前時代的なものの全部盛り。ちなみに「男女差別は良くないけど、外科医は激務だから女子の点数が下げられても仕方ない」とか「会社としては男性の育休OKだけど、取得したら出世コースから外れる」とか「大学入試の地域格差はよくないけど、人生には“身の丈”ってものがある」とかも、こうしたダブルスタンダードの類型であることは言うまでもありません。

最後にこういう強者の「そうはいっても」だらけの社会で、一般ピープルの間に増えていくものについてーーそれは「どうせ」の思考回路です。私たちには自粛させといて、「どうせ」政治家は楽しく会食してんでしょ。下々の者は「どうせ」助けてくれないんでしょ。「どうせ」女は出世なんてできないんでしょ。若者が声を上げたって「どうせ」聞いてくれやしないんでしょ。世の中は「どうせ」変わらないんでしょ。「どうせ」の正体は「厭世観」で、人々はそれぞれのやり方で「社会の一部であること」をやめてしまいます。絶望して自らの命を断つ人もいるでしょうし、「自分の楽しさだけを優先してなにが悪いの?」と好き勝手やりはじめるってこと。

感染を広げるような行動に出ている人が、なぜそういう選択をしたのか。何を示せば、そういう人たちの心に触れるのか。政治家はそれをもっと真剣に考えて、不器用に、懸命に、何度でも繰り返し語りかけ、それに見合った行動をすべきです。ニコ生で「ガースーです」と登場して、ちょこちょこっと話しただけで「ガースー、親しみ感じる~!忘年会自粛しよ!」って、なると思います?ナメてます?

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