新規感染者連日2000人超え、国もリモートを推奨する中で、次々と陽性患者が出ている会社で連日の「三密会議」出席を強いられ「基礎疾患持ちなので、リモートにしてほしい」と言ったら、「そんなことをみんなが言い出したら仕事にならない。出勤できないならクビだ!」ーーそんな組織が今どきあったとは……と非難を浴びてなお「当然のこと」と上司居直るーーと、そんな組織が今どきあったんですね。相撲協会。いやもうびっくり。このニュースに対して「そういう事情なら、やめるのも個人の自由じゃないの?」って意見もありますが、念の為言えば、それも違います。おかしいのは、こういう展開で「命がけで相撲を取るか、さもなくば相撲を辞めるか」の二択しか提示されないことです。

 

協会側は「充分な感染予防対策」しているとおっしゃっていますが、つまりこういうことでしょうか?力士たちが取り組みをする際は、全員がぴっちりと全身ビニールパウチしてる、そのビニールパウチったら2~3tの衝撃に耐えられる強いやつなんで、ちょっとやそっとのぶつかりや張り手くらいじゃビクともしない!……とか?ほとんど丸裸に近い二人の力士が、荒い息ハアハアしながら頬寄せて、互いの汗とか唾液とかを相手が触れることもあるけど「力士パウチ」してるからOKってこと?
そもそも1000人前後の組織で感染者が20人近く、濃厚接触者が80人以上出たら、「かなりの確率で感染」と言われるレベルだと思うんですが。偉い人はPCR検査をやらずに「見切り発車でやってたら場所中にクラスターが発生しかねなかった」とおっしゃってます。気づいてないようですが、もう発生しちゃってますよ。

この事態で浮き彫りになったのは、相撲協会が言う「万全の感染予防策」が、「有観客開催」を実現するためのものだという点です。そもそも力士たちは、相撲部屋での集団生活も、過体重ゆえの糖尿病や心臓病などは重症化リスクでもあります。初場所開催は、その上さらに「14日間で14人と、ほぼ裸でフルコンタクト」ですから、感染リスクめちゃめちゃ高い。あの「昭和の権化」みたいな張本勲さんさえ「危険だし、休場者多すぎてやる意味ない」って言ってたけど、協会はどーしたって初場所をやるつもりだった。だもんで、そういう「一丸となる」べき時に、それを揺るがすような発言をするような力士は「感染が怖いからなんて理屈にならん!辞めてもらって結構」ってことなんでしょうな、あちらの世界では。

この一連の流れを見て私が危惧したのは、東京オリンピックでおんなじようなこと繰り返されちゃうのでは?ということです。緊急事態宣言下においても、菅首相はオリンピックをやる気満々。あまりに「まさか」なのでうっかり違うと思いこんでいましたが、みなさん、現時点では無観客じゃないんですよ、有観客でやる気満々です。

さらに東京の感染が急拡大と知ったIOCのメンバーの一人が「東京オリンピック開催は不確定」と言い始めたのですが、その人の言う開催実現するための条件が「選手へのワクチン接種が最優先されること」。そんなん言われたら、日本政府はどうしたってやりたいんだもの、完璧に従ってしまいそうですね。「2月下旬からワクチン接種開始」は、医療関係者や保険関連施設やお年寄りでなく、オリンピック選手最優先ってことでしょうか。っていうか、他の国の選手の皆さん、こんな日本に来たがるのかしら。「危険だし、休場が多すぎならてやる意味ない」って、張本さんは言うかしら。

ここでちょっと時間をさかのぼってみましょう。このオリンピックって、そもそも「東日本大震災の復興五輪」として誘致してましたね。今や「復興」なんてどこへやら、「日本のコロナ克服の証明」にすり替えられてしまいました。無論、そこで美化された「希望と勇気」というお題目を前に置いてきぼりにされているのは、「復興五輪」の時は東北地方でしたが、「コロナ克服の証明」では日本全体です。にもかかわらずテレビなんかが「感染拡大が怖い」と中止の議論をし始めないのは、「万全の対策」で「一丸となって」開催を目指している一員だからでしょうか。それやるとオリンピック公式スポンサーである企業が、CM枠を買ってくれなくなったりするとか?

「感染拡大を防ぐために、やるべきことはすべてやる」という首相の言葉は、一旦は全面中止にした海外渡航者の入国を、「韓国&中国のビジネス渡航者は、やっぱOK!」と一転させたことで完全に腰砕け。ああ、そういえばその2カ国は、あと1ヶ月もすれば旧正月の春節を向かえますね。そりゃもうたくさんの「ビジネス渡航者」がいらっしゃるんでしょう。政府も官僚もそのあたりのことは気づいてないのかな?いやいや、いくらなんでもそんなボンクラじゃないですよね。まさかまさか停止中のGoToの代わりだったりして?日本はこのままで大丈夫?

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