政治家の失言(てか本音)とか悪事とかは華麗にスルーしてるマスコミが、有名人の不倫報道が出る度に「大罪人」みたいにめっちゃ追及する、みたいなことが起こり、「この人たち暇やなあ」と思ったりします。そもそも特定の人と親密な関係を持つ人が「不倫」をした場合、責める権利があるのは「基本的にその親密な関係の相手だけ」という考えに、私は賛成です。
でもイメージを売っている商売の場合、不貞行為が露見して商品価値が毀損されれば、実害が出るのは致し方ないこと。特にアイドルの場合、ファンとの関係は「恋人」とか「長年連れ添った妻」みたいなイメージなわけだし、スポーツ選手が「スポーツマンらしい清潔さと爽やかさ」を売りに出演する家庭的なCMに、ターゲット層がシラけるのは当然のこと。テレビや映画の出演部分がカットされる、出演映画が公開延期やお蔵入りになる、芸能活動を自粛する……そうした対応がどこまでいくかいかないかは、一般人が考える以上にいろんな政治があり、人によっちゃあテレビがこぞってスルーするみたいなこともあるわけで、「普通のサラリーマンだったらこんな社会的制裁は受けないのに」と一概に語れるような単純な話ではないんだろうけど、いずれにしろ騒動になるの分かってるんだから最初からやるなよ、っつう話で。
そんなことを前提に、こうした不倫騒動で私が気になるのは、主に男性が、主に不倫をした男性が受けた「社会的制裁」に反応し、「たかが不倫で」とかおっしゃることです。もう一度言いますが、不倫男の胸倉掴んで詰められるのは基本的に妻や恋人だけだとは思いますが、この機に乗じて、主に男性が「夫の不倫一般」を「たかが不倫」と片付けることには、微妙な違和感を覚えます。というのも、妻の不倫を「たかが不倫」と片付ける男性には、あんまりお目にかかったことがないので。
そういう人が、さも冷静風、さも真っ当風に「そもそも夫婦のことで他人がとやかく言うことじゃない」と言いだすと、世界はさらに歪みます。なんというか、「最終的には離婚には至らないに決まってる(→つまり妻は「許す」)」的なナメた前提のもとに、言われているような気がするんですけども。
でももし私がめっちゃ怒っている妻だったら、「たかが不倫」と一般論で言う「本来とやかく言う立場にない」他人の無神経さに、そうとう頭にくると思う。そもそも「不倫夫を非難できるのは妻だけ」との理論的整合性で言うなら、「たかが不倫」と言うことができるのも、妻だけなのでは?想像するに多くの場合、「離婚するかしないか」は「子供の有無」「妻の収入の有無」「離婚手続きの面倒臭さ」など実務的な問題とのトレードオフ。そこがうまく解決できない場合に、さも「みんなそうなんだから」かのように語られる「たかが不倫」は、離婚を思いとどまらせる理由として効果絶大です。ただその妻の「離婚しない」決定は、必ずしも男性が思うような「許した」とは違うんじゃないか。
私は妄想してみました。例えばこんな法制化。不倫した人は、社会奉仕活動を年間150時間カウンセリング50時間、もしくは裏切ったパートナーへの慰謝料の支払い。ただしパートナー側が許せば、その限りではない、みたいな。こんな感じであれば「離婚はしないけど、償いは明確に、きっちりしてもらう」というスタンスを示すことができますし、「たかが不倫だから、女は結局許すしかない」的な、男性一般の悪しき感覚も駆逐することができます。
やりすぎ?いやそんなことないでしょ~。だってこういう制度があれば、男性も軽い気持ちで不倫しなくなると思いますよ。なにしろ「不倫問題」は、日本のおじさんたちがすごく大事にしている「家族の崩壊」に直結する問題ですよ!つまり、あの「選択的夫婦別姓」の法制化に反対するのと同じ理由で、法制化することによって「家族の崩壊」が防げるというものです。「選択的夫婦別姓」について、「日本の女性は愛する夫の姓を名乗るのが女の幸せと思ってる」というツイートが話題ですが、
今朝のNHKのニュース、世論調査で夫婦別姓に賛成が7割だとか。信じられないがこれも日本ぶち壊しの一つか。田中さんの奥さんが鈴木さんで鈴木さんの奥さんが田中さんだとか言ったら混乱を招くだけだ。女性は愛する男性の姓を名乗ることに喜びを感じる人が多いのではないかと私は思う。
— 田母神俊雄 (@toshio_tamogami) November 17, 2020
「夫の姓を名乗ること」よりも「夫が浮気しないこと」のほうが、日本女性は幸せなんですよ、実は!
あらやだ、つい「女性の幸せ」って限定しちゃいましたが、「男性の幸せ」でもありますよね。「みんなそうだから」という一般論で丸め込まれ、現在9割以上の夫婦が夫の姓名を選ぶ現状はさておき、「別姓反対派」のみなさん、得意気に言うじゃないですか。夫婦同姓は「妻でも夫でも、好きな姓を選べる制度になってる、女性の姓を選べないわけじゃない」って。つまり今のままでも、男性も「愛する女性の姓になる幸せ」が味わえるわけです。実は「不倫法案」も同じです!と、私も自慢気にお伝えします。「不倫法制」でも、不倫したのが妻ならば、夫だって「許す許さない」を選べるんです!
というわけで、自分が常に愛され、優先され、譲歩してもらえるのが当然という立場に、完全に無意識な、前世代の権力握ってる偉い男性たち。不倫を容認させること、自分の名前を捨てさせることに、ロマンチシズム漂わせて「愛」を持ち出すのやめてください。
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