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【京都のお正月】縁起のいい、お雑煮3種

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みなさまこんにちは。京都で京繍という刺繍の仕事をしております長艸歩と申します。本年もよろしくお願い申し上げます。

 

静かでゆったりとした今年のお正月、初めて私の母の実家のお雑煮を作ってみました。ちょっと縁起を担いだお雑煮なのでこの場を借りてご紹介させてください。

 

京都市内にある母の実家には94歳の祖母が一人で暮らしています。
元気なうちに(現状びっくりするくらい元気なのですが)色々教わっておこうと昨年末にお雑煮についてリサーチしてみました。

京都でお雑煮といえば白味噌が定番なのですが、祖母のつくるお雑煮はおすまし。
子どもの頃に幾度か食べた記憶では、元旦は牛肉、二日は牡蠣、三日は鶏肉と具材が決まっていたはず……そのことを祖母に確認すると、
「ああ、あれは『ふくをかきとる(福を掻き取る)』やんか」と返答。
(え、聞いたことない!)
牛肉・牡蠣・鶏肉で「ふく(肉)をかき(牡蠣)とる(鶏)」という語呂合わせだったのです。なるほど〜!と同時に「ちゃんと聞いておいてよかった!」と安堵しました。

というわけで、祖母から教わった通りに三が日お雑煮を作りました。

添える具材は蒲鉾と三つ葉だけでシンプルに。メインの具材の味比べに注力しました。

 

元旦は牛肉。さっと湯引きしたすき焼き肉の旨味が効いて子どもたちにも好評でした。
(お餅がふやけてしまったところは失敗……)

 

二日は牡蠣。昨日とは違った海のうまみが深〜い味わい。「これからは牡蠣はフライよりお吸い物にしよう!」と思うくらい個人的は一番好きでした。

三日は鶏肉。これは馴染みのある味でしたが、胃が疲れてきた頃にはちょうど良かったです。

いつから「福を掻き取る」お雑煮になったのか由来は不明ですが、牛肉のことを考えると明治以降の風習でしょうか。京都でお雑煮といえば白味噌が圧倒的に多いのになぜ「おすまし」なのかよくよく考えると不思議です。関東から嫁いできた方がいたからかな?とか、白味噌嫌いの人がいたのかも?(京都の人でもたまにいらっしゃいます)など思いを巡らせました。

ちなみに嫁ぎ先の長艸家は白味噌雑煮。定番の祝い大根、金時人参、里芋に加えて、長艸家独自で百合根、そして最後にいくらをたっぷりかけていただきます。(白味噌×いくらは最初びっくりしましたが、かなりクセになる美味しさです〜)

 

三が日活躍したお椀は父方の祖母の形見分けでもらったもの。蓋裏の蒔絵が綺麗で子どもの頃は羨ましく眺めていたものを初めて私たち夫婦で使いました。
「しきたり」や「受け継ぐ」というと少し荷が重い気がするので「祖母たちと楽しみを共有している気分」で取り入れていけたらいいなと思ったお正月でした。

 

<歩さんの義父、長艸敏明さんの書籍はこちら>
『繡えども繡えども』

著者 長艸敏明
A24判 192ページ/ 講談社

長艸敏明氏は歩さんの義父。刺繡作家、京繡伝統工芸士である氏の作品集が出版されます。着物や帯のほか、季節ごとのしつらえや婚礼衣装などの祝い着、祭事の修復や復元まで京繡の第一人者である著者の“刺繡の力”を堪能できる100点を掲載。

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