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【雅子さまの新しい皇后】病気を経験されたからこそ弱者への思いやりが

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行事に合わせて体調をコントロールできるまでに

「即位礼正殿の儀」を終え、退出される雅子さま。「即位礼正殿の儀」は、多くの賓客が見守る中、午後1時から宮殿の正殿・松の間で行われました。写真/宮内庁提供

「雅子さまは、即位の礼に伴う皇室にとってはとても重要な儀式をすべて完璧にこなされました。これには私は本当に驚き、ご病気も快復されたのか?とも思いました」

メディアに映る雅子さまは日に日にお美しくなられているよう。笑顔が輝き、表情もイキイキとされ、ファッションにも変化が。白やゴールドなど、皇后にふさわしい品格のあるお召し物、ご自身に似合うシックなカラーをご公務に合わせて選ばれています。

伊勢神宮参拝のため伊勢にご到着。光沢感のある白のセットアップは、皇后陛下にふさわしい品格が。2019年11月21日、三重県伊勢市・宇治山田駅にて。写真/JMPA

しかし、令和2年12月9日、雅子さまのお誕生日に際して出された医師団か
らの見解は、まだ予断を許さないというものでした。
「皇后陛下には、依然としてご快復の途上にあり、ご体調には波がおありです。……過剰な期待を持たれることは、今後のご快復にとって、かえって逆効果となり得ることをご理解いただければと思います……」というものだったのです。

「医師団の見解は、以前とあまり変わっていないんですね。関係者から『次に予定される行事にターゲットを絞って、ご自身で体調を整えながら臨んでいた』という話も聞きました。相当なご努力のうえで一生懸命対応されていたことが、すべての儀式や行事に参加できたという結果につながったのだろうと思います」

言い替えれば、ご自身で自分の体調をコントロールできる状態になっているともいえそうです。


天皇と皇后が横並びで語るのが令和の新しいスタイルに


「雅子さまは、世の中にはコロナ禍によって就職もままならない、生活が困窮するような大変な人々がたくさんいる。自分の大変さなどはその方たちに比べたらそれほどではない、という思いがおありかもしれません」

自分がご病気で苦しまれているからこそ、弱い人に対するいたわりや思いやりもより一層強く感じられているのでは、という大久保さん。

「ご自分が病気を持っていらっしゃることも、弱者に目を向ける大きなモチベーションになっていると思います。
天皇家のご活動のエッセンシャルな土台は『3つの慈(いつくしみ)』慈悲・慈愛・慈恵だろうと思います。雅子さまは病気を経験されているからこそ、今後『3つの慈』に基づいたご活躍を一層期待できるのではないかという気がします」

今年1月1日に公開された新年のビデオメッセージでは、天皇陛下と雅子さまがそろってお言葉を述べられました。雅子さまは、緊張感が伝わってきたものの終始笑顔で国民に語りかけていました。

「両陛下お揃いでの初めてのメッセージは、令和流のスタイルを示していると思いました」

写真/宮内庁提供 動画はこちらより

隣に座られた天皇陛下が、小声で雅子さまのお言葉をフォローしていらっしゃる様子は、陛下のお気遣いが感じられた心温まるシーンでした。


大久保和夫(おおくぼ・かずお)
毎日新聞客員編集委員。宮内庁を中心に、皇宮警察をはじめとする皇室関連の取材を続けている。皇室を通して日本と日本人について考えることを大きなテーマにしながら、70歳を過ぎても現役記者として活動している。

●聞き手
高木香織(たかぎ・かおり)

出版社勤務を経て編集・文筆業。皇室や王室の本を多く手掛ける。書籍の編集・編集協力に、『愛のダイアナ』( 講談社)、『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『美智子さまから眞子さま佳子さまへ プリンセスの育て方』( ともにこう書房)、『美智子さまに学ぶエレガンス』(学研プラス)、『美智子さま あの日あのとき』(講談社)、 カレンダー『永遠に伝えたい美智子さまのお心』『ローマ法王の言葉』(すべて講談社)など。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(共著/リヨン社)、 『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)。

 

本文、キャプションは過去の資料をあたり、
敬称・名称・地名・施設名・大会名・催し物名など、
その当時のものを使用しています。
取材・文/高木香織
構成/片岡千晶(編集部)

前回記事「【皇室の変革】天皇陛下と雅子さまの「新しいご公務」の模索」はこちら>>

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