批評記事は読まない

 

3月上演予定の『ほんとうのハウンド警部』も、絶大な信頼を寄せる小川さんの演出で、劇評家役を演じます。吉原さんも、批評記事に目を通すこともあるのでは。

「批評記事は読みません。親は気にして、新聞の切り抜きを送ってくれるんですけど(笑)。

 

『ほんとうのハウンド警部』の本を読んで、観客にとって舞台というのは、役者や演出を批評しているようで、実は、舞台が鏡となって、そこに投影された自分を評価しているんじゃないかって思ったんです。『あの役者、全然よくなくてさ』というのは、自分の嫌な部分を見てしまったからなんじゃないかと。客席には役者を映す鏡があって、演じながら知らなかった自分を見つけたり、肯定されたりしています。作品を共有する役者と観客、互いを映し出す合わせ鏡になれるところが舞台の面白いところだと思いますね。『ハウンド警部』では、一体、何が映し出されるのか。きっとお客さんには、感じるものが多いと思います」

主演は、生田斗真さん。吉原さんと同じく劇評家を演じます。

「生田さんとは初めてです。正直、以前はジャニーズの方に対して、斜めに見ていたところがなかったといったら嘘になります。でも、映画『燃えよ剣』で岡田准一さんと共演して、本当に驚きました。役が憑依した瞬間に発するエネルギーにゾクッとして、このガタイのいい僕が、岡田さんのエネルギーに完敗! 生田さんとはまだ(取材時では)お会いできてないんですが、共演が楽しみです」

 

最後に、舞台から降りた時に感じる日常の幸せを聞くと、ストイックな役者とは別の顔が見えました。

「家に帰ってドアを開けると、隙間から犬が鼻を出してきて、その奥で子供がギャン泣きしてるんですよ。その光景を見ると、もう死んでもいいと思うくらい幸せですね。24時間芝居のことだけ考えていたかった僕が、今では、朝起きて子供を見ながら洗濯機を回して、その間に掃除機かけて、『5分時間ができたから、この間にコーヒー飲めるな』なんて考えてますよ」

吉原光夫 Mitsuo Yoshihara
1978年9月22日生まれ。東京都出身。1999年、劇団四季附属研究所に入所。看板役者として数々の舞台に出演する。退団後の2009年、Artist Company 響人を立ち上げ、出演だけでなく演出も手掛ける。2011年、帝国劇場開場100周年記念公演『レ・ミゼラブル』において、日本公演最年少となる32歳で、ジャン・バルジャンを演じた。2017年、ディスニー映画『美女と野獣』でガストン役の吹き替えを担当。今年10月、映画『燃えよ剣』が公開予定。

<作品紹介>
舞台『ほんとうのハウンド警部 』


会場:Bunkamunaシアターコクーン(東京)
期間:2021年3月5日(金)〜3月31日(水) 作:トム・ストッパード
翻訳:徐賀世子
演出:小川絵梨子
出演:生田斗真 吉原光夫 趣里 池谷のぶえ 鈴木浩介 峯村リエ 山崎一
企画/製作:シス・カンパニー
2月20日(土)より、一般前売り発売開始

撮影/塚田亮平
ヘアメイク/和田しづか
取材・文/小泉咲子
構成/山崎 恵