インスタグラムでフォロワー数2万人超え、じわじわとその魅力が広がりつつある、枇杷かな子さんのエッセイコミック。ほんわりとした可愛らしい絵柄と、心があたたまるほのぼのとした雰囲気と思わず涙がにじみ出るせつなさも感じさせます。新作がアップされる度に、「ほっこりします」「泣けました」など思わずコメントを寄せてしまう方が多いようです。
そんな枇杷さんの作品の中でも、女性なら「あるある」とうなずきたくなる共感度高めなシチュエーションが詰まった『おたまと一緒に』をご紹介します。

 

ある日、おたまが突然喋りだす


主人公は一人暮らしのアラサー女性。自宅のコタツでつまらなさそうにスマホをポチポチしながら「味噌汁作ろ」とつぶやく。お味噌を買いにコンビニへ向かう時、うっかりおたまを持ったまま外に出てしまいます。家に戻って置いてこなきゃ……すると、そのおたまが突然喋りだします。

足もにょっきり出てきて、歩きたがるおたま。

このありえない状況。でも、そこまで驚かない主人公。「夢のようだからか」。
一方、おたまはこれが当たり前のごとく喋り続け、一緒にコンビニまで歩き出します。

「犬じゃねーし」。前から知り合いかのような口調で喋るおたま。

ここから、主人公とおたまとの不思議な2人暮らしの日々がはじまります。

 


「何者でもない」主人公の感情をすくい上げるおたま


主人公は「何者でもない」女性として描かれています。楽しそうにしている知り合いのSNSを見てため息をついたり、海外で働いている友達の帰国を知り、自分には何もないな、と感じたり。でも、その友達のことを素直に喜べない自分もイヤだな、なんてモヤモヤ。「私なんて何の才能もなくて、何やっても人並み以下だし」

普段大っぴらに口に出せないけれど、ああ、スポットライトが当たっている(ように見える)人を羨んだり、勝手に劣等感を抱いてしまう気持ちって心のどこかにあるよね、と思わされます。

彼女はおたまと喋ると、そんなリアルな感情をぽろっと言葉にしてしまいます。

周りがすごく見えると、自分は何もないなって感じる。そんな時、ありません?

すると、おたまはその感情をドライな口調ながらも、そっとすくってくれるのです。一つ一つのエピソードを読み終わる度に、「ほっこりする」「泣けました」などのコメントがつく理由がわかります。おたまの言葉は主人公に向けられたものですが、読み手も心が軽くなるような、ほっとする感覚になるのです。

 
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